第三章 〜夜叉〜(70P)
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「――ねぇ、シロ」
しばしの時、悲しみに浸っていた二人の静寂を破ったのは、柚希。
「……何だ?」
「私ね、未だに親父様の本当の最期を知らないの。私が確認できたのは、さっき言った朧の言葉だけなのよ。だから知りたいんだ。親父様の……吉田松陽の今際の際は、どんなだった? もし本当にシロが側にいたのなら……残酷だとは思うけど、真実を教えて欲しい」
未だ流れ続ける涙をそのままに、強い意志を持った瞳で銀時を見上げて柚希が言った言葉は、あの時の記憶を銀時にはっきりと呼び起こし、深い傷を抉る。出来る事ならあの時の話など口にもしたくはない銀時だったが、柚希の気持ちは痛い程分かってしまう為、断る事は出来なかった。
「アイツは……松陽は笑って逝ったよ。俺に首を落とされる最期の瞬間まで、微笑んでた。『ありがとう』だなんて、あの場にそぐわねェ言葉を遺してよ」
「……そ……っか……」
銀時の口からはっきりと聞かされた『俺に首を落とされる』という言葉が、柚希の胸を締め付ける。
何故銀時が、こんなに苦しい思いをしなければならなかったのか。悲しい思いをしなければならなかったのか。全ては自分の弱さと甘さが原因だったのだと、柚希は深い後悔の念に苛まれた。
「ごめんね、シロ……貴方にばかり辛い思いをさせて……」
「いきなり何だよ。お前だって苦しんできたじゃねェか。むしろよっぽどお前の方が……」
「ううん、私なんて大したことないよ。私は……もしかしたら親父様でさえも、シロに全てを押し付けてしまってたのかもしれない」
「はァ? 柚希、お前一体何を言って……」
「ただいまぁっ!」
理解できない話をし始めた柚希に、真意を尋ねようと銀時が語り掛けた時。銀時の言葉に重なるようにして玄関から聞こえて来たのは、元気な子供たちの声だった。
「ただいま帰りました。銀さん、柚希さん、二人とも奥の部屋ですか~?」
「返事が無いって事は、まさか疚しい事をしてたりしないだろうナ? 新八、こっそり覗きに行くネ」
「こっそりも何も、これだけ大声で話してりゃ、とっくに二人とも気付いてるって。ほんと神楽ちゃんは毎回爛れた事しか言わないんだから……っとそれより、まずはこのお登勢さんが買ってくれた夕食用のお弁当を台所に持って行こう」
「分かったヨ。ババアのやつ、今日は珍しくご機嫌だったネ。よっぽど良い事あったアルな」
ほんの数秒前までこの部屋を包み込んでいた悲しい空気を、一瞬で霧散するほどの明るい声が玄関から台所へと移動していく。その声にハッとした二人は慌てて涙を拭うと、「この話はまた」という銀時の言葉に頷きあい、次の瞬間にはもう何事も無かったかのように、いつもの二人の姿を見せていた。
「銀ちゃ~ん、柚希~、この部屋アルか?」
勢いよく飛び込んできた明るい笑顔を、柚希も笑顔で招き入れる。
「お帰り。お登勢さんのお手伝いは無事終わったの?」
「ただ付いてって荷物を運ぶだけの簡単な仕事だったネ。バイト料としてご飯を奢ってもらったヨ。肉をたらふく食べてきたアル」
「何故だか分からないですけど、夕食用のお弁当まで買ってもらっちゃったんですよ。四人分ありますから、皆で食べましょうね。それで、銀さんはもう大丈夫ですか?」
賑やかしく部屋に入っては来ながらも、銀時の体を心配してはいたようだ。二人はごく自然に銀時の側に座ると、早速様子を聞いて来た。
しばしの時、悲しみに浸っていた二人の静寂を破ったのは、柚希。
「……何だ?」
「私ね、未だに親父様の本当の最期を知らないの。私が確認できたのは、さっき言った朧の言葉だけなのよ。だから知りたいんだ。親父様の……吉田松陽の今際の際は、どんなだった? もし本当にシロが側にいたのなら……残酷だとは思うけど、真実を教えて欲しい」
未だ流れ続ける涙をそのままに、強い意志を持った瞳で銀時を見上げて柚希が言った言葉は、あの時の記憶を銀時にはっきりと呼び起こし、深い傷を抉る。出来る事ならあの時の話など口にもしたくはない銀時だったが、柚希の気持ちは痛い程分かってしまう為、断る事は出来なかった。
「アイツは……松陽は笑って逝ったよ。俺に首を落とされる最期の瞬間まで、微笑んでた。『ありがとう』だなんて、あの場にそぐわねェ言葉を遺してよ」
「……そ……っか……」
銀時の口からはっきりと聞かされた『俺に首を落とされる』という言葉が、柚希の胸を締め付ける。
何故銀時が、こんなに苦しい思いをしなければならなかったのか。悲しい思いをしなければならなかったのか。全ては自分の弱さと甘さが原因だったのだと、柚希は深い後悔の念に苛まれた。
「ごめんね、シロ……貴方にばかり辛い思いをさせて……」
「いきなり何だよ。お前だって苦しんできたじゃねェか。むしろよっぽどお前の方が……」
「ううん、私なんて大したことないよ。私は……もしかしたら親父様でさえも、シロに全てを押し付けてしまってたのかもしれない」
「はァ? 柚希、お前一体何を言って……」
「ただいまぁっ!」
理解できない話をし始めた柚希に、真意を尋ねようと銀時が語り掛けた時。銀時の言葉に重なるようにして玄関から聞こえて来たのは、元気な子供たちの声だった。
「ただいま帰りました。銀さん、柚希さん、二人とも奥の部屋ですか~?」
「返事が無いって事は、まさか疚しい事をしてたりしないだろうナ? 新八、こっそり覗きに行くネ」
「こっそりも何も、これだけ大声で話してりゃ、とっくに二人とも気付いてるって。ほんと神楽ちゃんは毎回爛れた事しか言わないんだから……っとそれより、まずはこのお登勢さんが買ってくれた夕食用のお弁当を台所に持って行こう」
「分かったヨ。ババアのやつ、今日は珍しくご機嫌だったネ。よっぽど良い事あったアルな」
ほんの数秒前までこの部屋を包み込んでいた悲しい空気を、一瞬で霧散するほどの明るい声が玄関から台所へと移動していく。その声にハッとした二人は慌てて涙を拭うと、「この話はまた」という銀時の言葉に頷きあい、次の瞬間にはもう何事も無かったかのように、いつもの二人の姿を見せていた。
「銀ちゃ~ん、柚希~、この部屋アルか?」
勢いよく飛び込んできた明るい笑顔を、柚希も笑顔で招き入れる。
「お帰り。お登勢さんのお手伝いは無事終わったの?」
「ただ付いてって荷物を運ぶだけの簡単な仕事だったネ。バイト料としてご飯を奢ってもらったヨ。肉をたらふく食べてきたアル」
「何故だか分からないですけど、夕食用のお弁当まで買ってもらっちゃったんですよ。四人分ありますから、皆で食べましょうね。それで、銀さんはもう大丈夫ですか?」
賑やかしく部屋に入っては来ながらも、銀時の体を心配してはいたようだ。二人はごく自然に銀時の側に座ると、早速様子を聞いて来た。