第三章 〜夜叉〜(70P)
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ギュッと握りしめられた柚希の拳に手を乗せる。伝わってくる緊張を少しでも和らげるようにと、銀時は優しくその手を包み込んだ。
「私を捕らえた天人たちは、私を救護所から連れ出してすぐに、内通者を含めた怪我人を殺し始めたの」
銀時の手の温もりに後押しされるように、柚希は先を続けた。
「考えが甘かった事に気付いて、すぐに救護所に戻ろうとしたんだけど、鎮静剤のような物を打たれて動けなくなって……しかもあの天人たち、血を見た事で興奮状態になったせいか、よりによって私を攘夷志士としてではなく……女として……扱おうと……っ!」
その時の恐怖が蘇ったのか、怯えたように頭を抱える柚希。咄嗟に抱きしめた銀時が感じたのは、この小さい体にはアンバランスな、大きな震えだった。
「良いから、柚希……そこは思い出さなくて良い。そんな記憶は忘れちまえ」
発狂しそうになるのを必死に堪え、震える柚希を強く抱きしめる。
誰よりも、何よりも大切な唯一無二の存在を傷付けた輩を、出来る事なら自らの手でぶった切りたい。今すぐその場に駆け付け、柚希を安心させてやりたい。
そんな思いはあっても、全ては過去の事。今の銀時にできるのは、ただ柚希を抱きしめてやる事だけだった。
しかし柚希は、震えながらも小さく首を横に振る。
「……ごめんね、取り乱しちゃって……でもこれは、あの時の事を話すのには必要なのよ。ここからが本題なんだ」
「本題?」
「天人たちに襲われても、体が思うように動かなくて抗う事すら出来なかった私は、観念したわ。でも衣服を裂かれて肌に触れられた瞬間、どうにも我慢できなくて、怖くて……思わず悲鳴をあげたのよ。そしたら、ね」
柚希の手が、ギュッと銀時の服を掴む。ゆっくりと顔を上げ、銀時を見た柚希の瞳は、とても哀しい色をしていた。
「突如現れた一羽の黒い烏が、一瞬にしてその場にいた天人たちを葬り去ったんだ」
「烏って、まさか……」
銀時の言葉にコクリと頷いた柚希は、自嘲の笑みを見せる。
「そう、現れたのは朧だった。それも、私一人しかいない上に、まともに体が動かないという最悪の状況の所にね」
「って事は、お前が突然いなくなった原因は、救護所の襲撃が原因じゃなく、朧に連れ去られてたって事かよ」
「それに関しては、同意の上よ。あの時の私は朧に助けられた事で、辱めを受ける事無く、安全かつ確実に親父様の所へと辿り着けたわ」
「何だよそれ、もっと分かりやすく説明してくれよ」
突飛な話に混乱する銀時に言われた柚希は、もう一度頷くと、詳細を語り始めた。
「あれが……全ての始まりだったのかもしれない――」
「私を捕らえた天人たちは、私を救護所から連れ出してすぐに、内通者を含めた怪我人を殺し始めたの」
銀時の手の温もりに後押しされるように、柚希は先を続けた。
「考えが甘かった事に気付いて、すぐに救護所に戻ろうとしたんだけど、鎮静剤のような物を打たれて動けなくなって……しかもあの天人たち、血を見た事で興奮状態になったせいか、よりによって私を攘夷志士としてではなく……女として……扱おうと……っ!」
その時の恐怖が蘇ったのか、怯えたように頭を抱える柚希。咄嗟に抱きしめた銀時が感じたのは、この小さい体にはアンバランスな、大きな震えだった。
「良いから、柚希……そこは思い出さなくて良い。そんな記憶は忘れちまえ」
発狂しそうになるのを必死に堪え、震える柚希を強く抱きしめる。
誰よりも、何よりも大切な唯一無二の存在を傷付けた輩を、出来る事なら自らの手でぶった切りたい。今すぐその場に駆け付け、柚希を安心させてやりたい。
そんな思いはあっても、全ては過去の事。今の銀時にできるのは、ただ柚希を抱きしめてやる事だけだった。
しかし柚希は、震えながらも小さく首を横に振る。
「……ごめんね、取り乱しちゃって……でもこれは、あの時の事を話すのには必要なのよ。ここからが本題なんだ」
「本題?」
「天人たちに襲われても、体が思うように動かなくて抗う事すら出来なかった私は、観念したわ。でも衣服を裂かれて肌に触れられた瞬間、どうにも我慢できなくて、怖くて……思わず悲鳴をあげたのよ。そしたら、ね」
柚希の手が、ギュッと銀時の服を掴む。ゆっくりと顔を上げ、銀時を見た柚希の瞳は、とても哀しい色をしていた。
「突如現れた一羽の黒い烏が、一瞬にしてその場にいた天人たちを葬り去ったんだ」
「烏って、まさか……」
銀時の言葉にコクリと頷いた柚希は、自嘲の笑みを見せる。
「そう、現れたのは朧だった。それも、私一人しかいない上に、まともに体が動かないという最悪の状況の所にね」
「って事は、お前が突然いなくなった原因は、救護所の襲撃が原因じゃなく、朧に連れ去られてたって事かよ」
「それに関しては、同意の上よ。あの時の私は朧に助けられた事で、辱めを受ける事無く、安全かつ確実に親父様の所へと辿り着けたわ」
「何だよそれ、もっと分かりやすく説明してくれよ」
突飛な話に混乱する銀時に言われた柚希は、もう一度頷くと、詳細を語り始めた。
「あれが……全ての始まりだったのかもしれない――」