第一章 ~再会~(49P)
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「昨夜銀の字が、お前さんを病院まで運んでいるのをたまたま見かけてな。珍しく正気を失っておったから、落ち着かせようと声をかけた時にそのピアスが目に入ったんじゃ。お前さん、厄介なもんを付けられとるな」
「ちょいとよく見せてみろや」と老人が柚希の耳に手を伸ばす。ピアスそのものには触れぬよう、細心の注意を払いながら角度を変えて確認する老人に、柚希は素直に従った。話を聞いている内に、何故だかこの老人は大丈夫だという確信が生まれつつあるようだ。
「天人の技術だけにはっきりした事は言えんが、やっぱり神経と直結してやがるみてぇだな。微弱な電波を発しているようでもあるし、よくできたカラクリだ。お前さんの体に何か影響は出ちゃいねぇか?」
耳から手を離して尋ねる老人に、柚希はコクリと小さく頷いた。
「仰る通り、多分脳の神経に何らかの影響を受けていると思います。過去の記憶が消えている、もしくは改竄されているようなので。ただ……」
「ただ?」
「かぶき町に来てから、その影響にブレが生じているかもしれません。時折何かを思い出しそうになるんです。ついさっきも誰かを思い出しそうになりました。この感覚すらも、偽りだとしたら何とも言えませんが……」
神楽が茶店でプリンを取ろうとした時、柚希の頭の中には一瞬誰かの姿があった。それはとても大切な存在で、その者にこれを渡してやらなければという強い責任感が芽生えたかと思った時には、神楽に向けて叫んでいたのだ。
だがチリ、と耳から頭部にかけて小さな痛みが走った次の瞬間にはもう、それが誰だったのかを覚えてはいなかった。
「記憶は無いのですが痛みだけは覚えていて、初めて疑問に思ったんです。そう言えば、このピアスはいつ付けたのか。時折小さな痛みを感じていたんじゃなかったか、と」
たった今顔を合わせたばかりの老人に、何故ここまで話してしまっているのか。不思議に思っていた柚希だったが、ふとあることに気付いた。
――そうだ、このご老人……雰囲気が所長に似てるんだ。
天人の施設にいた時、いつも一緒に行動していた直属の上司。年はこの老人とほぼ変わらないか少し若く、柚希が父のように慕っていた存在だった。
――外見は全く違うのに、懐かしさを感じてしまうなんて……。
もう二度と会う事の出来ない所長の姿を思い出すと、胸が締め付けられた。
「ちょいとよく見せてみろや」と老人が柚希の耳に手を伸ばす。ピアスそのものには触れぬよう、細心の注意を払いながら角度を変えて確認する老人に、柚希は素直に従った。話を聞いている内に、何故だかこの老人は大丈夫だという確信が生まれつつあるようだ。
「天人の技術だけにはっきりした事は言えんが、やっぱり神経と直結してやがるみてぇだな。微弱な電波を発しているようでもあるし、よくできたカラクリだ。お前さんの体に何か影響は出ちゃいねぇか?」
耳から手を離して尋ねる老人に、柚希はコクリと小さく頷いた。
「仰る通り、多分脳の神経に何らかの影響を受けていると思います。過去の記憶が消えている、もしくは改竄されているようなので。ただ……」
「ただ?」
「かぶき町に来てから、その影響にブレが生じているかもしれません。時折何かを思い出しそうになるんです。ついさっきも誰かを思い出しそうになりました。この感覚すらも、偽りだとしたら何とも言えませんが……」
神楽が茶店でプリンを取ろうとした時、柚希の頭の中には一瞬誰かの姿があった。それはとても大切な存在で、その者にこれを渡してやらなければという強い責任感が芽生えたかと思った時には、神楽に向けて叫んでいたのだ。
だがチリ、と耳から頭部にかけて小さな痛みが走った次の瞬間にはもう、それが誰だったのかを覚えてはいなかった。
「記憶は無いのですが痛みだけは覚えていて、初めて疑問に思ったんです。そう言えば、このピアスはいつ付けたのか。時折小さな痛みを感じていたんじゃなかったか、と」
たった今顔を合わせたばかりの老人に、何故ここまで話してしまっているのか。不思議に思っていた柚希だったが、ふとあることに気付いた。
――そうだ、このご老人……雰囲気が所長に似てるんだ。
天人の施設にいた時、いつも一緒に行動していた直属の上司。年はこの老人とほぼ変わらないか少し若く、柚希が父のように慕っていた存在だった。
――外見は全く違うのに、懐かしさを感じてしまうなんて……。
もう二度と会う事の出来ない所長の姿を思い出すと、胸が締め付けられた。