第三章 〜夜叉〜(70P)
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あれからどのくらいの時間が経ったのか。横たわる銀時の腕の中から、気怠げに体を起こした柚希は、「何か飲み物を持ってくるね」と言って立ち上がろうとした。だがすぐに、銀時によって引き戻されてしまう。
「うわ……っと。危ないなぁもう。ほら、シロも喉乾いてるでしょ? ついでに甘い物も見てくるから、ね?」
「やだ。もう暫くこのままが良い」
「子供かいな。新八くんたちがいつ帰ってくるかも分からないし、身なりも整えておかなきゃいけないんだから、わがまま言わないの」
時計を見れば、銀時が目を覚ましてからもう、二時間近くが経っていた。帰ってくるのは夕方頃とは言え、二人きりで過去の話をするには、いくら時間があっても足りないくらいだろう。途中、来客が無いとも限らない。
「……ちっ、仕方ねェな。まァこれからはいつでも柚希とこういう事がデキるわけだし? 今は言う事を聞いてやるか」
「バッ……!」
一瞬で顔が真っ赤になった柚希は、銀時を突き飛ばして立ち上がると、脱ぎ捨てられていた着物を掴んで部屋から駆け出ようとした。そんな柚希の後ろ姿を見て、銀時の鼻の下が伸びる。
「おーおー、可愛いお尻が丸見……」
「ばかぁっ!」
「ふごッ!」
間髪入れず、手近にあった時計を銀時に投げつけた柚希は、キッチンの方へと駆けて行った。
銀時はと言うと、飛んで来た時計を顎で受け止め、ひっくり返っている。
「ッてェ……柚希のやつ、本気で投げやがったな」
涙目で顎を撫でる銀時だったが、口元に浮かんでいるのは、穏やかな笑みだ。
――豪快で凶暴な割に照れ屋で、きつい事もはっきり言う癖に、その実誰よりも優しいんだよなァ。
仰向けになって目を瞑り、過去を思い出す。クルクルと変わっていく柚希の表情は全て、銀時の記憶の中に鮮明に焼き付いていた。
「だから俺は……」
ゆっくりと目を開け、優しい眼差しを向けた先にあるのは、少し拗ねた表情で部屋の入口に立っている柚希。その手にはいちご牛乳とお茶と駄菓子、救急セット、そしてガーゼにくるまれた保冷剤の乗せられたお盆があった。
「……あのくらい、シロなら本当は避けられたでしょ」
お盆を置き、保冷剤を銀時の顎にそっと当てる。痛みに顔を顰めた銀時を見て、思わず心配そうな表情を見せた柚希だったが、またすぐに口を尖らせた。
「どんな理由であれ、自分から怪我をする必要なんてないんだからね。ほら、足も見せて」
「足?」
顎はともかく足って何だ? と自らの太ももに視線を向けた銀時は、ようやく自分の怪我を思い出す。夕べ自ら作った刀傷は、包帯に赤をにじませていた。
「うわ……っと。危ないなぁもう。ほら、シロも喉乾いてるでしょ? ついでに甘い物も見てくるから、ね?」
「やだ。もう暫くこのままが良い」
「子供かいな。新八くんたちがいつ帰ってくるかも分からないし、身なりも整えておかなきゃいけないんだから、わがまま言わないの」
時計を見れば、銀時が目を覚ましてからもう、二時間近くが経っていた。帰ってくるのは夕方頃とは言え、二人きりで過去の話をするには、いくら時間があっても足りないくらいだろう。途中、来客が無いとも限らない。
「……ちっ、仕方ねェな。まァこれからはいつでも柚希とこういう事がデキるわけだし? 今は言う事を聞いてやるか」
「バッ……!」
一瞬で顔が真っ赤になった柚希は、銀時を突き飛ばして立ち上がると、脱ぎ捨てられていた着物を掴んで部屋から駆け出ようとした。そんな柚希の後ろ姿を見て、銀時の鼻の下が伸びる。
「おーおー、可愛いお尻が丸見……」
「ばかぁっ!」
「ふごッ!」
間髪入れず、手近にあった時計を銀時に投げつけた柚希は、キッチンの方へと駆けて行った。
銀時はと言うと、飛んで来た時計を顎で受け止め、ひっくり返っている。
「ッてェ……柚希のやつ、本気で投げやがったな」
涙目で顎を撫でる銀時だったが、口元に浮かんでいるのは、穏やかな笑みだ。
――豪快で凶暴な割に照れ屋で、きつい事もはっきり言う癖に、その実誰よりも優しいんだよなァ。
仰向けになって目を瞑り、過去を思い出す。クルクルと変わっていく柚希の表情は全て、銀時の記憶の中に鮮明に焼き付いていた。
「だから俺は……」
ゆっくりと目を開け、優しい眼差しを向けた先にあるのは、少し拗ねた表情で部屋の入口に立っている柚希。その手にはいちご牛乳とお茶と駄菓子、救急セット、そしてガーゼにくるまれた保冷剤の乗せられたお盆があった。
「……あのくらい、シロなら本当は避けられたでしょ」
お盆を置き、保冷剤を銀時の顎にそっと当てる。痛みに顔を顰めた銀時を見て、思わず心配そうな表情を見せた柚希だったが、またすぐに口を尖らせた。
「どんな理由であれ、自分から怪我をする必要なんてないんだからね。ほら、足も見せて」
「足?」
顎はともかく足って何だ? と自らの太ももに視線を向けた銀時は、ようやく自分の怪我を思い出す。夕べ自ら作った刀傷は、包帯に赤をにじませていた。