第三章 〜夜叉〜(70P)
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「さてと、あたしゃそろそろ寝ようかね。部屋に戻るんなら、静かにしておくれよ」
「あの……」
言いたい事だけを言い、柚希が声をかけるのを聞き流して、お登勢はさっさと店の中へと入ってしまう。その後ろ姿を見送りながら、柚希は先ほどのお登勢の言葉の意味を考えていた。
「シロを生かすも殺すも私次第……」
お登勢の姿が完全に見えなくなり、視線を銀時に移す。意識は無いはずなのに、未だその手は自分の着物の裾を掴んだままだった事に息を飲んだ。
「お登勢さんはああ言ってたけど、私の知ってるシロは、結構自分から欲しい物に手を伸ばしてたけどなぁ」
おやつを取り合う時も。
いかに松陽に褒められるかを競った時も。
言葉にできない思いを抱いた時も、銀時は自らの意思で手を伸ばし、その思いを柚希に伝えてきていた。
「ねぇ、シロ……私と離れている間に、シロはどんな人生を送って来たの?」
裾を掴んでいる銀時の手を、そっと開かせる。
「もし本当に、自ら何かに手を伸ばす事無く、ここまで生きて来たのなら……」
その手を取り、自らの頬へと運んだ。
柚希の頬を包み込んだ大きな手は、とても温かくて。でも同時に何故か寂しさも感じられた。
「もし本当に私が、シロの器を満たせる存在なら……」
銀時の手の平に、口付ける。
「黒く染まってしまった私で、真っ白な器を満たす事は許される?」
本当は銀時が眠りから覚める前に、ここを去るつもりでいた柚希だったが、それを一瞬で看破していたお登勢の言葉が、柚希の心を揺さぶっていた。
「全てを知ってしまったら、シロは私を軽蔑するかもしれない。逆に、無理に受け入れようとして壊れてしまうかもしれない。それでも――」
柚希の瞳から零れた涙が、銀時の手を伝う。その熱を感じたのか、深い眠りの中、無意識に柚希の頬を撫でた銀時の指は、柚希の心を包み込むかのように優しかった。
「やっぱり私は……もう離れたく無い。シロの側にいたいよ……」
偽りの無い本音を口にした柚希はその夜、万事屋を出て行く事は無く。布団の中で眠り続ける銀時の横で、その寝顔を心から愛おしそうに見つめながら、朝を迎えたのだった。
「あの……」
言いたい事だけを言い、柚希が声をかけるのを聞き流して、お登勢はさっさと店の中へと入ってしまう。その後ろ姿を見送りながら、柚希は先ほどのお登勢の言葉の意味を考えていた。
「シロを生かすも殺すも私次第……」
お登勢の姿が完全に見えなくなり、視線を銀時に移す。意識は無いはずなのに、未だその手は自分の着物の裾を掴んだままだった事に息を飲んだ。
「お登勢さんはああ言ってたけど、私の知ってるシロは、結構自分から欲しい物に手を伸ばしてたけどなぁ」
おやつを取り合う時も。
いかに松陽に褒められるかを競った時も。
言葉にできない思いを抱いた時も、銀時は自らの意思で手を伸ばし、その思いを柚希に伝えてきていた。
「ねぇ、シロ……私と離れている間に、シロはどんな人生を送って来たの?」
裾を掴んでいる銀時の手を、そっと開かせる。
「もし本当に、自ら何かに手を伸ばす事無く、ここまで生きて来たのなら……」
その手を取り、自らの頬へと運んだ。
柚希の頬を包み込んだ大きな手は、とても温かくて。でも同時に何故か寂しさも感じられた。
「もし本当に私が、シロの器を満たせる存在なら……」
銀時の手の平に、口付ける。
「黒く染まってしまった私で、真っ白な器を満たす事は許される?」
本当は銀時が眠りから覚める前に、ここを去るつもりでいた柚希だったが、それを一瞬で看破していたお登勢の言葉が、柚希の心を揺さぶっていた。
「全てを知ってしまったら、シロは私を軽蔑するかもしれない。逆に、無理に受け入れようとして壊れてしまうかもしれない。それでも――」
柚希の瞳から零れた涙が、銀時の手を伝う。その熱を感じたのか、深い眠りの中、無意識に柚希の頬を撫でた銀時の指は、柚希の心を包み込むかのように優しかった。
「やっぱり私は……もう離れたく無い。シロの側にいたいよ……」
偽りの無い本音を口にした柚希はその夜、万事屋を出て行く事は無く。布団の中で眠り続ける銀時の横で、その寝顔を心から愛おしそうに見つめながら、朝を迎えたのだった。