第三章 〜夜叉〜(70P)
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深い眠りに就いた銀時を気にしながら、万事屋に辿り着いた柚希が、看板を片付けるために【スナックお登勢】から出てきたお登勢と鉢合わせたのは偶然だった。
「おや、ずいぶん遅いご帰還だねェ。こんな仕事をしてるアタシが言うのも何だが、夜遊びも大概にしときなよ。泥酔するまで飲んでるようじゃ……」
定春の背中で眠り込んでいる銀時を見て、呆れたように声をかけてきたお登勢だが、柚希の表情からすぐに状況を理解したようだ。途中まで言いかけていた説教を飲み込むと、代わりに大きなため息を吐く。
「またこのバカは周りが見えなくなったのかい? ったく、ロクなこたァしないねェ」
「お前さんも、毎度お疲れさんだね」と言いながら、定春に近付いて体を撫でてやったお登勢は、意味ありげに柚希を見上げた。
「アンタも色々と苦労してるようだね」
「いえ、私は……」
どう答えれば良いのか分からず、戸惑う柚希。だがそんな事はお構い無しに、お登勢は続けた。
「まあ、アンタたちの関係に首を突っ込む気は無いよ。でもこんなバカでも、アタシにとっちゃ大事な収入源の一つだからさ」
「え? あ……はい」
ますます反応に困った柚希は、頷く事しか出来ない。でも何故か不思議と、嫌な気持ちにはならなかった。
「銀時がここにきた時はね、何も入っていない空っぽの器で、投げ込まれる物をただ手当たり次第受け入れてたんだよ。しかも、どれだけ受け入れても満ち足りる事は無い癖に、その状況すら受け入れようとしてたんだ。そんな奴が今初めて、自分から手を伸ばして器を満たそうとしてるのさ」
そう言ってチラリと銀時に視線を向けたお登勢は、フッと小さく笑みをこぼす。喋りは淡々としていながらも、その表情はとても嬉しそうだった。
「情が深い癖に、自分の事にはからっきしでねェ。いつも死んだ魚のような目をして、感情をひた隠しにしてた。どこか破滅的な所があって、正直心配してたんだけどさ。アンタが来てからの銀時は、人が変わったようにすっかり丸くなっちまった。本人が気付いてるかどうかは知らないよ。でもとりあえずは良い傾向さ。ありがとうよ」
「……え?」
何故か突然、自分が感謝の対象になった事に驚く柚希。目を丸くして驚いている柚希に苦笑いしながら、お登勢は言った。
「ただし逆を言えば、アンタの存在は諸刃の剣でもある。銀時を生かすも殺すもアンタ次第さ。そこんトコ、理解しといておくれよ」
「すみません、仰ってる意味が分からないのですが……」
理解しろと言われても、お登勢の言わんとしている部分が読み取れない柚希は、素直に尋ねる。だがお登勢がその答えをくれる事は無かった。
「おや、ずいぶん遅いご帰還だねェ。こんな仕事をしてるアタシが言うのも何だが、夜遊びも大概にしときなよ。泥酔するまで飲んでるようじゃ……」
定春の背中で眠り込んでいる銀時を見て、呆れたように声をかけてきたお登勢だが、柚希の表情からすぐに状況を理解したようだ。途中まで言いかけていた説教を飲み込むと、代わりに大きなため息を吐く。
「またこのバカは周りが見えなくなったのかい? ったく、ロクなこたァしないねェ」
「お前さんも、毎度お疲れさんだね」と言いながら、定春に近付いて体を撫でてやったお登勢は、意味ありげに柚希を見上げた。
「アンタも色々と苦労してるようだね」
「いえ、私は……」
どう答えれば良いのか分からず、戸惑う柚希。だがそんな事はお構い無しに、お登勢は続けた。
「まあ、アンタたちの関係に首を突っ込む気は無いよ。でもこんなバカでも、アタシにとっちゃ大事な収入源の一つだからさ」
「え? あ……はい」
ますます反応に困った柚希は、頷く事しか出来ない。でも何故か不思議と、嫌な気持ちにはならなかった。
「銀時がここにきた時はね、何も入っていない空っぽの器で、投げ込まれる物をただ手当たり次第受け入れてたんだよ。しかも、どれだけ受け入れても満ち足りる事は無い癖に、その状況すら受け入れようとしてたんだ。そんな奴が今初めて、自分から手を伸ばして器を満たそうとしてるのさ」
そう言ってチラリと銀時に視線を向けたお登勢は、フッと小さく笑みをこぼす。喋りは淡々としていながらも、その表情はとても嬉しそうだった。
「情が深い癖に、自分の事にはからっきしでねェ。いつも死んだ魚のような目をして、感情をひた隠しにしてた。どこか破滅的な所があって、正直心配してたんだけどさ。アンタが来てからの銀時は、人が変わったようにすっかり丸くなっちまった。本人が気付いてるかどうかは知らないよ。でもとりあえずは良い傾向さ。ありがとうよ」
「……え?」
何故か突然、自分が感謝の対象になった事に驚く柚希。目を丸くして驚いている柚希に苦笑いしながら、お登勢は言った。
「ただし逆を言えば、アンタの存在は諸刃の剣でもある。銀時を生かすも殺すもアンタ次第さ。そこんトコ、理解しといておくれよ」
「すみません、仰ってる意味が分からないのですが……」
理解しろと言われても、お登勢の言わんとしている部分が読み取れない柚希は、素直に尋ねる。だがお登勢がその答えをくれる事は無かった。