第三章 〜夜叉〜(70P)
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「八咫烏の紋章……」
驚きの声をあげる銀時。震える手で柚希の胸に触れると、その紋章は刺青とは違い、体の内から浮かび上がっているようだった。
「何で……昨日までこんなモン無かった筈……」
訳が分からず、柚希の顔と紋章を交互に見ながら呟く銀時に、柚希は肩で息をしながら答える。
「だから……無理だって言ったじゃない……」
銀時の視線を受けながら、全てを諦めたかのように閉じられた柚希の眦から、一粒の涙が流れ落ちた。
「記憶が戻っても……記憶が戻ったからこそ、私はこの枷から逃れられないのよ」
「どういう事だ? 洗いざらい話せよ、柚希!」
柚希の悲しい涙を見て、一度爆発してしまった感情を必死に抑え込みながら、銀時が言う。
「こう次々と爆弾を落とされちゃたまんねェよ。頼むから全部聞かせてくれ。もう今更何を言われても驚きゃしねェから、お前が抱えてる苦しみを俺にも分けてくれ」
「でも……」
「本当に隠したいと思ってたら、俺の意識が無い内にさっさとここを立ち去ってたはずだ。悩みながらも、心の奥では俺に聞いて欲しかったんじゃねェのか? でなきゃ、何事も無かったかのように朝飯を作ったり、俺の……」
言葉の続きが無い事に疑問を覚えた柚希が目を開けると、間近に迫る銀時の顔。唇が触れた瞬間、柚希の目からポロポロと涙が零れ落ちていく。
「俺のキスを、こんな風に受け入れたりしねェだろ?」
それは、とても優しいキス。ただ柚希を想い、柚希だけを求めている、悲しいくらいに優しいキスだった。
「俺を見ろよ、柚希。お前ン中にいる俺は未だ、攘夷戦争の頃の……ガキの頃の俺のイメージが強いのかもしんねェ。でもよォ、あれから何年経ったと思ってんだ? 俺ももう十分過ぎるくらいに大人だぜ。お前一人抱えるくらいどーってことねェんだよ」
次々と溢れ出てくる涙を指で拭いながら言った銀時は、もう一度柚希の胸に浮かぶ紋章を見る。
「……もし本当にお前の言う、枷とやらから逃れられねェってんなら、その枷ごとお前を受け止めてやる。今は無理でも、いつかはその枷から解放してやる。だから……俺を信じろ、柚希」
そのまま銀時は、まるで毒を吸い出すかのように、柚希の胸の紋章に強く吸い付いた。
「……っ、シロ……!」
「話してくれるな? 柚希」
銀時の唇が離れ、チリリとした痛みから解放された事で、ホッと息を吐きながらその場所を見ると、紋章の一部を紅が覆い隠している。それは不思議な安心感を呼び、柚希の口元から小さな笑みがこぼれた。
「相変わらず自信家だよね、シロは」
「そうか? いつだって俺は謙虚だぜ?」
「それは初耳」
クスクスと笑いながら、柚希は改めて銀時の瞳を見つめた。誰よりも間近に見てきた紅は、出会った頃と変わらず、ハッキリと柚希を映し出している。
「本当は、ね、逃げようと思ってた」
銀時の瞳に映る自分を見ながら、柚希は言った。
「シロを万事屋に連れ帰って、きちんと怪我の処置をしたら、そのまま姿を消そうと考えてたの」
「でもそうしなかった。それは何でだ?」
柚希の決意を感じ取り、話しやすいよう銀時が促す。銀時の優しい後押しを受け、柚希はポツポツと語り出した。
「シロが眠り込んで、定春に万事屋まで運んでもらった時にね。お登勢さんに会ったんだ――」
驚きの声をあげる銀時。震える手で柚希の胸に触れると、その紋章は刺青とは違い、体の内から浮かび上がっているようだった。
「何で……昨日までこんなモン無かった筈……」
訳が分からず、柚希の顔と紋章を交互に見ながら呟く銀時に、柚希は肩で息をしながら答える。
「だから……無理だって言ったじゃない……」
銀時の視線を受けながら、全てを諦めたかのように閉じられた柚希の眦から、一粒の涙が流れ落ちた。
「記憶が戻っても……記憶が戻ったからこそ、私はこの枷から逃れられないのよ」
「どういう事だ? 洗いざらい話せよ、柚希!」
柚希の悲しい涙を見て、一度爆発してしまった感情を必死に抑え込みながら、銀時が言う。
「こう次々と爆弾を落とされちゃたまんねェよ。頼むから全部聞かせてくれ。もう今更何を言われても驚きゃしねェから、お前が抱えてる苦しみを俺にも分けてくれ」
「でも……」
「本当に隠したいと思ってたら、俺の意識が無い内にさっさとここを立ち去ってたはずだ。悩みながらも、心の奥では俺に聞いて欲しかったんじゃねェのか? でなきゃ、何事も無かったかのように朝飯を作ったり、俺の……」
言葉の続きが無い事に疑問を覚えた柚希が目を開けると、間近に迫る銀時の顔。唇が触れた瞬間、柚希の目からポロポロと涙が零れ落ちていく。
「俺のキスを、こんな風に受け入れたりしねェだろ?」
それは、とても優しいキス。ただ柚希を想い、柚希だけを求めている、悲しいくらいに優しいキスだった。
「俺を見ろよ、柚希。お前ン中にいる俺は未だ、攘夷戦争の頃の……ガキの頃の俺のイメージが強いのかもしんねェ。でもよォ、あれから何年経ったと思ってんだ? 俺ももう十分過ぎるくらいに大人だぜ。お前一人抱えるくらいどーってことねェんだよ」
次々と溢れ出てくる涙を指で拭いながら言った銀時は、もう一度柚希の胸に浮かぶ紋章を見る。
「……もし本当にお前の言う、枷とやらから逃れられねェってんなら、その枷ごとお前を受け止めてやる。今は無理でも、いつかはその枷から解放してやる。だから……俺を信じろ、柚希」
そのまま銀時は、まるで毒を吸い出すかのように、柚希の胸の紋章に強く吸い付いた。
「……っ、シロ……!」
「話してくれるな? 柚希」
銀時の唇が離れ、チリリとした痛みから解放された事で、ホッと息を吐きながらその場所を見ると、紋章の一部を紅が覆い隠している。それは不思議な安心感を呼び、柚希の口元から小さな笑みがこぼれた。
「相変わらず自信家だよね、シロは」
「そうか? いつだって俺は謙虚だぜ?」
「それは初耳」
クスクスと笑いながら、柚希は改めて銀時の瞳を見つめた。誰よりも間近に見てきた紅は、出会った頃と変わらず、ハッキリと柚希を映し出している。
「本当は、ね、逃げようと思ってた」
銀時の瞳に映る自分を見ながら、柚希は言った。
「シロを万事屋に連れ帰って、きちんと怪我の処置をしたら、そのまま姿を消そうと考えてたの」
「でもそうしなかった。それは何でだ?」
柚希の決意を感じ取り、話しやすいよう銀時が促す。銀時の優しい後押しを受け、柚希はポツポツと語り出した。
「シロが眠り込んで、定春に万事屋まで運んでもらった時にね。お登勢さんに会ったんだ――」