第一章 ~再会~(49P)
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そのまま数分様子を見ていた柚希だったが、完全に男の姿が見えなくなったのを確認すると、今度は工具の店へと足を運んだ。
専門職が扱いそうなセットをまとめた工具箱を品定めしていると、
「あんたみたいな若いねえちゃんが、こんなモンを欲しがるたぁ珍しいな」
と声をかけてきた者がいた。
また変な輩に絡まれたか、と声の主を見れば、それは一人の怪しげな老人。だが妙な人懐こさがあり、その表情がとても楽しそうだったことから、柚希は警戒をしつつも笑顔で会釈した。
「ねえちゃんは、何かを作ったりするのかい?」
「ええ、まぁ。ちょっとしたカラクリなんかを触ってみるのが好きなだけです。出来上がってる物をいじるくらいですけどね」
「そうかいそうかい。カラクリってのは面白ぇからなぁ。わしも毎日どんだけいじってても飽きねぇや」
だはははは! と豪快に笑う老人に「カラクリがお好きなんですね」と言うと、「あたぼうよ」と更に豪快に笑って返す。そのあまりに大きな笑い声は、通りすがりの者が驚いて振り返ってしまうほどだ。だがそれは柚希にとって嫌なものではなかった。
「ご老人は、カラクリを扱うお仕事か何かをなさっておいでなのですか? どんなものを作っておられるんでしょう」
「そうさなぁ。家電だったり、人形だったり、乗り物だったり……」
顎を撫でながら話す老人に、フンフンと柔らかい笑みで頷く柚希。だが、次の言葉でその表情は一気に凍りついた。
「武器だったり、洗脳装置だったり、だな」
言い終わるのを待たずに柚希が身構える。ゆっくりと懐から扇子を取り出せば、いつでも攻撃に転ずることの出来る態勢だ。
流れる冷や汗を拭いもせず、ジリジリと下がりながら柚希は自分の間合いを取ろうとしていた。ところがである。
「心配いらんよ、わしゃァ敵じゃねぇ。お前さん、今銀の字の所にいるんだろう?」
「銀の字……ああ、銀時の事? ご老人は銀時のお知り合い?」
『銀』の文字が出て来たことで、ほんの少しだけ警戒を解く。だが手の中の扇子は握られたままだ。
「アイツ、ワシのことを話してねぇのか。ったく物臭なヤツだな」
やれやれとため息を吐いた老人は、しばし柚希の顔を見つめる。そしてフム、と一つ頷くと店の奥へと入っていき、一つの工具箱を持ってきた。
「多分お前さんにはコレが扱いやすいじゃろうて。その扇子のメンテナンスもだが……」
ズイッと片手で工具箱を突き出し、もう片方の手を自分の耳に当て、トントンと叩く。
「コイツにも、な」
「ご老人、貴方は一体……」
思わず自分の耳に手を当てた柚希が触れたのは、小さな丸いピアスだった。
専門職が扱いそうなセットをまとめた工具箱を品定めしていると、
「あんたみたいな若いねえちゃんが、こんなモンを欲しがるたぁ珍しいな」
と声をかけてきた者がいた。
また変な輩に絡まれたか、と声の主を見れば、それは一人の怪しげな老人。だが妙な人懐こさがあり、その表情がとても楽しそうだったことから、柚希は警戒をしつつも笑顔で会釈した。
「ねえちゃんは、何かを作ったりするのかい?」
「ええ、まぁ。ちょっとしたカラクリなんかを触ってみるのが好きなだけです。出来上がってる物をいじるくらいですけどね」
「そうかいそうかい。カラクリってのは面白ぇからなぁ。わしも毎日どんだけいじってても飽きねぇや」
だはははは! と豪快に笑う老人に「カラクリがお好きなんですね」と言うと、「あたぼうよ」と更に豪快に笑って返す。そのあまりに大きな笑い声は、通りすがりの者が驚いて振り返ってしまうほどだ。だがそれは柚希にとって嫌なものではなかった。
「ご老人は、カラクリを扱うお仕事か何かをなさっておいでなのですか? どんなものを作っておられるんでしょう」
「そうさなぁ。家電だったり、人形だったり、乗り物だったり……」
顎を撫でながら話す老人に、フンフンと柔らかい笑みで頷く柚希。だが、次の言葉でその表情は一気に凍りついた。
「武器だったり、洗脳装置だったり、だな」
言い終わるのを待たずに柚希が身構える。ゆっくりと懐から扇子を取り出せば、いつでも攻撃に転ずることの出来る態勢だ。
流れる冷や汗を拭いもせず、ジリジリと下がりながら柚希は自分の間合いを取ろうとしていた。ところがである。
「心配いらんよ、わしゃァ敵じゃねぇ。お前さん、今銀の字の所にいるんだろう?」
「銀の字……ああ、銀時の事? ご老人は銀時のお知り合い?」
『銀』の文字が出て来たことで、ほんの少しだけ警戒を解く。だが手の中の扇子は握られたままだ。
「アイツ、ワシのことを話してねぇのか。ったく物臭なヤツだな」
やれやれとため息を吐いた老人は、しばし柚希の顔を見つめる。そしてフム、と一つ頷くと店の奥へと入っていき、一つの工具箱を持ってきた。
「多分お前さんにはコレが扱いやすいじゃろうて。その扇子のメンテナンスもだが……」
ズイッと片手で工具箱を突き出し、もう片方の手を自分の耳に当て、トントンと叩く。
「コイツにも、な」
「ご老人、貴方は一体……」
思わず自分の耳に手を当てた柚希が触れたのは、小さな丸いピアスだった。