第三章 〜夜叉〜(70P)
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全てを思い出し、銀時の眠気も吹き飛ぶ。
「あのヤロー、一体どういうつもりだってんだ? 天導衆が柚希を狙うにしても、執着の仕方がおかしいだろ。それにあれは……」
柚希を護ろうと抱きしめた時、銀時が目にしたのは、揺らぐ朧の瞳。これまで数回に渡って対峙してきた朧は、いつだって冷酷な表情しか見せなかったのに、あの一瞬だけは全く別人のようだった。
「アイツ、ひょっとして柚希を……」
ふとそんな考えが銀時の頭を過 ぎる。だがすぐに自らの考えを否定しようと、かぶりを振った。
「冗談でも考えたくねーわ。胸糞悪ィ」
苛立ちを隠せぬまま、 頭をガシガシと掻きむしった銀時は、何の気なしに隣を見る。流れでもぬけの殻となっている布団に手を差し込んだが、そこに主の温もりは感じられなかった。
「まさか……」
ザァッと全身から血の気が引く。気配を探る事も忘れ、銀時は叫んだ。
「柚希ッ! どこだッ!?」
「はいっ」
驚きの声と共にバタバタと聞こえた足音。慌てて部屋に走り込んできたのは、エプロン姿の柚希だ。
「どうしたのよ、起き抜けにいきなり叫んだりして。怖い夢でも見たの?」
銀時の声に余程驚いたのだろう。目の前に立つ柚希の右手には包丁、左手にはトマトが握られたままだった。
「柚希、お前……」
昨夜の事を問いただそうとした銀時だったが、あまりにもいつもと変わらぬ柚希の姿を見て、何も言えなくなる。
「なぁに? お化けでも見るような顔をして。私の顔に何か付いてる?」
持っていた包丁に、自分の顔を写して確認する柚希の姿は、滑稽ながらも銀時が大切にしたいと思っているいつもの柚希だ。
「何も変な物は付いてないよ?」
「……誰もそんな事言ってねェだろ、バァカ」
ホッとした顔を見せ、両手を広げた銀時に「誰がバカですって?」と言いながら柚希が歩み寄る。包丁とトマトを背中に回して膝をつくと、銀時の胸にポスンと頭を付けた。
「もうすぐ朝ごはんが出来るから、顔を洗っておいでよ。あ、ちなみに新八くんと神楽ちゃんは、お登勢さんに呼ばれて……さっき出かけたからね。帰りは夕方になるって」
そう銀時に向けて言った後、見上げながら柚希が笑顔を見せると、柚希の肩に手が回される。自然な動作で重ねられた唇は、かすかにマヨネーズの味がした。
「何か土方に『NTL』された気分だな」
「はい? それってどういう事よ」
「別にィ。朝食のメニューが気になったって事」
「なんのこっちゃ。今朝はサンドイッチよ。卵サラダとハムチーズ、あとはピーナツバターとイチゴジャム」
「そいつは美味そー。そんじゃ早速顔を洗って……」
嬉しそうに言いかけた銀時の顔が、一瞬にして強張る。
「シロ、痛い……っ」
柚希を掴む手には無意識に力がこもり、そのあまりの強さに柚希の顔が歪んだ。だが銀時は力を緩めずに柚希を睨む。正確には銀時の鋭い視線は、柚希の首筋に向けられていた。
「あのヤロー、一体どういうつもりだってんだ? 天導衆が柚希を狙うにしても、執着の仕方がおかしいだろ。それにあれは……」
柚希を護ろうと抱きしめた時、銀時が目にしたのは、揺らぐ朧の瞳。これまで数回に渡って対峙してきた朧は、いつだって冷酷な表情しか見せなかったのに、あの一瞬だけは全く別人のようだった。
「アイツ、ひょっとして柚希を……」
ふとそんな考えが銀時の頭を
「冗談でも考えたくねーわ。胸糞悪ィ」
苛立ちを隠せぬまま、 頭をガシガシと掻きむしった銀時は、何の気なしに隣を見る。流れでもぬけの殻となっている布団に手を差し込んだが、そこに主の温もりは感じられなかった。
「まさか……」
ザァッと全身から血の気が引く。気配を探る事も忘れ、銀時は叫んだ。
「柚希ッ! どこだッ!?」
「はいっ」
驚きの声と共にバタバタと聞こえた足音。慌てて部屋に走り込んできたのは、エプロン姿の柚希だ。
「どうしたのよ、起き抜けにいきなり叫んだりして。怖い夢でも見たの?」
銀時の声に余程驚いたのだろう。目の前に立つ柚希の右手には包丁、左手にはトマトが握られたままだった。
「柚希、お前……」
昨夜の事を問いただそうとした銀時だったが、あまりにもいつもと変わらぬ柚希の姿を見て、何も言えなくなる。
「なぁに? お化けでも見るような顔をして。私の顔に何か付いてる?」
持っていた包丁に、自分の顔を写して確認する柚希の姿は、滑稽ながらも銀時が大切にしたいと思っているいつもの柚希だ。
「何も変な物は付いてないよ?」
「……誰もそんな事言ってねェだろ、バァカ」
ホッとした顔を見せ、両手を広げた銀時に「誰がバカですって?」と言いながら柚希が歩み寄る。包丁とトマトを背中に回して膝をつくと、銀時の胸にポスンと頭を付けた。
「もうすぐ朝ごはんが出来るから、顔を洗っておいでよ。あ、ちなみに新八くんと神楽ちゃんは、お登勢さんに呼ばれて……さっき出かけたからね。帰りは夕方になるって」
そう銀時に向けて言った後、見上げながら柚希が笑顔を見せると、柚希の肩に手が回される。自然な動作で重ねられた唇は、かすかにマヨネーズの味がした。
「何か土方に『NTL』された気分だな」
「はい? それってどういう事よ」
「別にィ。朝食のメニューが気になったって事」
「なんのこっちゃ。今朝はサンドイッチよ。卵サラダとハムチーズ、あとはピーナツバターとイチゴジャム」
「そいつは美味そー。そんじゃ早速顔を洗って……」
嬉しそうに言いかけた銀時の顔が、一瞬にして強張る。
「シロ、痛い……っ」
柚希を掴む手には無意識に力がこもり、そのあまりの強さに柚希の顔が歪んだ。だが銀時は力を緩めずに柚希を睨む。正確には銀時の鋭い視線は、柚希の首筋に向けられていた。