第三章 〜夜叉〜(70P)
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「う~ん……」
重い瞼を少しだけ開き、光を探す。
見慣れた天井のシミと、窓の外から聞こえてくる道行く人々の声に、いつもの朝を迎えた事を悟った銀時は、もう一度寝直そうと目を閉じて寝返りを打った。だがその時、太ももに強い痛みを感じて顔をしかめる。
「……ッ! なんだァ?」
体を起こして痛む箇所を確認すると、丁寧に巻かれた包帯にはうっすらと滲む赤。
「そう言えば……」
未だ寝ぼけている頭の中で記憶を辿れば、夕べの出来事がボンヤリと再生された。
万事屋で夕食を済ませ、賑やかな1日を終えた夜。グッスリと眠っていた銀時はふと、夢うつつで柚希の唇が触れるのを感じた。
――え? ひょっとして柚希ちゃんってば夜這い?
とワクワクしながらもその心地良さにまどろんでいると、何故か遠のいていく柚希の気配。咄嗟にマズイと思い、引き止めようとしたが声はおろか、指もまともに動かなくて。異様な眠気が自らを縛っているのだと、その時になってようやく気付いた。
「……う……」
薬を盛られたのだと分かっても、今更抗う術は無い。朦朧とした意識の中で足掻いていると、異変に気付いたらしい定春が銀時の元へとやって来た。
しばし銀時の様子を伺っていた定春は、何かを察したかのように、銀時の頭に噛み付く。動物の本能だろうか。いつもの豪快なじゃれつきとは明らかに違う、意識をして力を加減した噛み付きは、銀時の頬に一筋の血の跡を作った。
「悪ィ、定春……」
適度な出血が功を奏したらしく、かろうじて起き上がれる程度に体が動くようになった銀時は、フラつきながらも立ち上がり、定春に寄りかかる。
「迷惑ついでに……柚希を追ってくれるか? 何処に行こうとしてるか知らねェが、一人でっつーのはヤベェ気がすんだ」
「わん!」
銀時の後ろ襟を咥え、自らの背中に投げ上げた定春は、柚希の匂いを追って走り出す。向かう先に見つけた柚希は、一人の男に自由を奪われていた。
風に乗って聞こえて来た悲しい声が、銀時を呼んでいるのだと分かり、ボンヤリとしていた意識が覚醒する。しかし、未だ体は思うように動かなかった。
「くそッ……!」
指一本ですら、動かすのが億劫な体を叱咤し、懐から取り出したのは、念の為にと持ち出していた小刀。それをゆるゆると振り上げた銀時は、重力に任せて太ももに振り下ろした。
「ぐ……ッ」
切っ先は真っ直ぐに突き刺さり、血が流れ出す。ズキズキと痛みはしたが、それが刺激となり、先程よりも体は動くようになっていた。
「よし、これなら……」
木刀を握り、柚希と男の間を目掛けて投げつける。
「はーい、そこまで」
いつもの気怠げな態度でその場の空気を乱しはしたが、銀時の胸の内は、痛みと怒りで余裕などありはしなかった。
しかも、柚希を縛り付けている男の存在が、銀時の中にくすぶる火に油を注ぐ。
――絶対に柚希を護る……!
その強い意志は、真っ直ぐ朧に向けられた。
重い瞼を少しだけ開き、光を探す。
見慣れた天井のシミと、窓の外から聞こえてくる道行く人々の声に、いつもの朝を迎えた事を悟った銀時は、もう一度寝直そうと目を閉じて寝返りを打った。だがその時、太ももに強い痛みを感じて顔をしかめる。
「……ッ! なんだァ?」
体を起こして痛む箇所を確認すると、丁寧に巻かれた包帯にはうっすらと滲む赤。
「そう言えば……」
未だ寝ぼけている頭の中で記憶を辿れば、夕べの出来事がボンヤリと再生された。
万事屋で夕食を済ませ、賑やかな1日を終えた夜。グッスリと眠っていた銀時はふと、夢うつつで柚希の唇が触れるのを感じた。
――え? ひょっとして柚希ちゃんってば夜這い?
とワクワクしながらもその心地良さにまどろんでいると、何故か遠のいていく柚希の気配。咄嗟にマズイと思い、引き止めようとしたが声はおろか、指もまともに動かなくて。異様な眠気が自らを縛っているのだと、その時になってようやく気付いた。
「……う……」
薬を盛られたのだと分かっても、今更抗う術は無い。朦朧とした意識の中で足掻いていると、異変に気付いたらしい定春が銀時の元へとやって来た。
しばし銀時の様子を伺っていた定春は、何かを察したかのように、銀時の頭に噛み付く。動物の本能だろうか。いつもの豪快なじゃれつきとは明らかに違う、意識をして力を加減した噛み付きは、銀時の頬に一筋の血の跡を作った。
「悪ィ、定春……」
適度な出血が功を奏したらしく、かろうじて起き上がれる程度に体が動くようになった銀時は、フラつきながらも立ち上がり、定春に寄りかかる。
「迷惑ついでに……柚希を追ってくれるか? 何処に行こうとしてるか知らねェが、一人でっつーのはヤベェ気がすんだ」
「わん!」
銀時の後ろ襟を咥え、自らの背中に投げ上げた定春は、柚希の匂いを追って走り出す。向かう先に見つけた柚希は、一人の男に自由を奪われていた。
風に乗って聞こえて来た悲しい声が、銀時を呼んでいるのだと分かり、ボンヤリとしていた意識が覚醒する。しかし、未だ体は思うように動かなかった。
「くそッ……!」
指一本ですら、動かすのが億劫な体を叱咤し、懐から取り出したのは、念の為にと持ち出していた小刀。それをゆるゆると振り上げた銀時は、重力に任せて太ももに振り下ろした。
「ぐ……ッ」
切っ先は真っ直ぐに突き刺さり、血が流れ出す。ズキズキと痛みはしたが、それが刺激となり、先程よりも体は動くようになっていた。
「よし、これなら……」
木刀を握り、柚希と男の間を目掛けて投げつける。
「はーい、そこまで」
いつもの気怠げな態度でその場の空気を乱しはしたが、銀時の胸の内は、痛みと怒りで余裕などありはしなかった。
しかも、柚希を縛り付けている男の存在が、銀時の中にくすぶる火に油を注ぐ。
――絶対に柚希を護る……!
その強い意志は、真っ直ぐ朧に向けられた。