第三章 〜夜叉〜(70P)
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「銀さんを信じなさいってェの。これでも俺は、こいつとやりあって倒してる。ま、辛うじてって感じだけどよ。それでも勝てる可能性は十分にあるぜ」
「やりあってって……シロは攘夷戦争後にも朧と戦った事があったの?」
「ああ。少し前に、城の中でちょっと、な」
そう答えて木刀を握る手に力を込めた銀時は、朧がいつ攻撃をして来ても良いよう、柚希を庇うようにして構える。共に戦えば有利な事は分かっていたが、柚希から消えない震えが、それを許さなかった。
「ってなわけで、アンタがその気なら俺が相手してやる。それにしても、あんだけ派手にやられたってのに、こうしてアッサリと復活しちまうんだからな。アンタは俺たちを諦めが悪いと言ったが、そっちの方がよっぽどタチが悪ィぜ」
「……よく喋る男だ。流石松陽の弟子だな」
不快な感情をあらわにして銀時を睨んだ朧は、挑発に乗る気なのか、懐の毒針に手をかける。それを察した銀時も殺気を隠さず、朧の動きに全神経を集中させて睨み合った時だった。
まるで瞬間移動でもして来たかのように突然、虚無僧姿の男が現れる。朧のすぐ後ろで膝をついた男は「朧様、お時間です」と言い残すと、一瞬でその場から姿を消した。
それは朧にとって絶対的な事由だったのだろう。朧の意識が、銀時達から逸れたのがハッキリと分かった。
「命拾いしたな、松陽の弟子達よ」
柚希達とは反対の方向に視線を送りながら言った朧はもう、その場を離れる体勢だ。
「今日の所は見逃してやるが、次に相まみえた時は……覚悟しておく事だな、柚希」
敢えて名指しにした朧は、銀時に庇われながらこちらを見る柚希にチラリと視線を向ける。その時小さく朧の口が動いたが、銀時にはそれを読み取る事が出来なかった。
そして先ほどの男と同じく、瞬時に姿を消す朧。残されたのは、ただ静寂のみだった。
朧が引き返してくる事を想定し、暫く緊張したまま様子を伺っていた二人だったが、完全に気配が消えた事でようやくほっと息を吐く。そこでハッと気付いた柚希は、今も未だ出血の続く銀時の足に、手を伸ばした。
「シロ、すぐに傷の手当てを……!」
だがその手は銀時に触れる事なく、柚希の視界がグラリとゆれる。
「え……?」
パァン! という音と、その後にジワジワと訪れた頬の痛みが何なのかを理解するまでには、かなりの時間が必要だった。
「やりあってって……シロは攘夷戦争後にも朧と戦った事があったの?」
「ああ。少し前に、城の中でちょっと、な」
そう答えて木刀を握る手に力を込めた銀時は、朧がいつ攻撃をして来ても良いよう、柚希を庇うようにして構える。共に戦えば有利な事は分かっていたが、柚希から消えない震えが、それを許さなかった。
「ってなわけで、アンタがその気なら俺が相手してやる。それにしても、あんだけ派手にやられたってのに、こうしてアッサリと復活しちまうんだからな。アンタは俺たちを諦めが悪いと言ったが、そっちの方がよっぽどタチが悪ィぜ」
「……よく喋る男だ。流石松陽の弟子だな」
不快な感情をあらわにして銀時を睨んだ朧は、挑発に乗る気なのか、懐の毒針に手をかける。それを察した銀時も殺気を隠さず、朧の動きに全神経を集中させて睨み合った時だった。
まるで瞬間移動でもして来たかのように突然、虚無僧姿の男が現れる。朧のすぐ後ろで膝をついた男は「朧様、お時間です」と言い残すと、一瞬でその場から姿を消した。
それは朧にとって絶対的な事由だったのだろう。朧の意識が、銀時達から逸れたのがハッキリと分かった。
「命拾いしたな、松陽の弟子達よ」
柚希達とは反対の方向に視線を送りながら言った朧はもう、その場を離れる体勢だ。
「今日の所は見逃してやるが、次に相まみえた時は……覚悟しておく事だな、柚希」
敢えて名指しにした朧は、銀時に庇われながらこちらを見る柚希にチラリと視線を向ける。その時小さく朧の口が動いたが、銀時にはそれを読み取る事が出来なかった。
そして先ほどの男と同じく、瞬時に姿を消す朧。残されたのは、ただ静寂のみだった。
朧が引き返してくる事を想定し、暫く緊張したまま様子を伺っていた二人だったが、完全に気配が消えた事でようやくほっと息を吐く。そこでハッと気付いた柚希は、今も未だ出血の続く銀時の足に、手を伸ばした。
「シロ、すぐに傷の手当てを……!」
だがその手は銀時に触れる事なく、柚希の視界がグラリとゆれる。
「え……?」
パァン! という音と、その後にジワジワと訪れた頬の痛みが何なのかを理解するまでには、かなりの時間が必要だった。