第三章 〜夜叉〜(70P)
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思わず嬉しそうな声をあげた柚希を横目に、一瞬で冷静さを取り戻した朧は、軽やかにその場から飛び離れる。音も立てずに着地した時には、元いた場所に、銀時を乗せた定春が立っていた。
グルル、と朧を睨みつけるように喉を鳴らした定春は尻尾を振って、直前に地面に突き刺さった木刀を跳ね上げる。飛ばされた木刀は、器用に銀時の手の中に吸い込まれた。
「柚希、来い!」
定春の足元にいる柚希に手を伸ばしながら、銀時が叫ぶ。その言葉を待っていたかのように飛んだ柚希は、銀時の手によって定春の背中に引き上げられた。流れるような一連の動きは、誰よりもお互いを信頼している証として、朧の目に映る。そして縋り付くようにして銀時の腕の中にいる柚希の姿に、朧の歯がギリリと鳴った。
「つくづく松陽の息がかかった者は、諦めが悪いな」
自分の中にある感情を隠すかのように、朧が冷たく言い放つ。だが、銀時も負けてはいなかった。
「よォ、生きてるだろうとは思ってたが、まさかこんな形で再会する事になるとはな。前回城で会った時は、汚ェジジイのケツを追い回してたが、今度は女のケツを追っかけてんのか? まァ確かに柚希は良いケツしてっけど、コイツは俺のモンだからやんねーぞ」
グイと柚希の肩を抱き寄せ、不敵な笑みを見せる銀時。しかし実際は、余裕など無かった。離れた所にいる朧は気付いていないが、銀時の太ももからは血が流れ、定春の毛をも赤く染めている。
それを見た柚希は思わず声を上げそうになったが、チラリと自分に向けられた銀時の視線がそれを止めた。
「ま、そういうわけだから、コイツは連れて帰るわ。夜更かしは美容の大敵だしよ」
「ふざけるな。その女は元々我らの管轄下にある。……柚希、こちらに来い。お前は自分の立場が分かっているはずだ」
朧の言葉に、ビクリと震えて身を竦める柚希。こんなにも怯えて小さくなる柚希を見たのは初めてで、怒りに我を忘れそうになった銀時だったが、自分に縋り付く柚希を感じて踏みとどまった。
「立場なんて知ったこっちゃねーよ。柚希がお前を拒否してんだ。諦めてサッサと消えちまえ。しつこい男は嫌われんぞ。それともーー今ここで又戦うか?」
我を忘れてはいないものの、我慢は出来なかったのか挑発する銀時。定春の上から木刀を構え、朧を見下ろす目は、紛う方なき夜叉の瞳。
「無理だよ、シロ! 朧に敵うはずなんてない」
そんな銀時を止めようと、柚希が叫ぶ。苦しげな表情の柚希に違和感を覚えながらも、銀時は言った。
グルル、と朧を睨みつけるように喉を鳴らした定春は尻尾を振って、直前に地面に突き刺さった木刀を跳ね上げる。飛ばされた木刀は、器用に銀時の手の中に吸い込まれた。
「柚希、来い!」
定春の足元にいる柚希に手を伸ばしながら、銀時が叫ぶ。その言葉を待っていたかのように飛んだ柚希は、銀時の手によって定春の背中に引き上げられた。流れるような一連の動きは、誰よりもお互いを信頼している証として、朧の目に映る。そして縋り付くようにして銀時の腕の中にいる柚希の姿に、朧の歯がギリリと鳴った。
「つくづく松陽の息がかかった者は、諦めが悪いな」
自分の中にある感情を隠すかのように、朧が冷たく言い放つ。だが、銀時も負けてはいなかった。
「よォ、生きてるだろうとは思ってたが、まさかこんな形で再会する事になるとはな。前回城で会った時は、汚ェジジイのケツを追い回してたが、今度は女のケツを追っかけてんのか? まァ確かに柚希は良いケツしてっけど、コイツは俺のモンだからやんねーぞ」
グイと柚希の肩を抱き寄せ、不敵な笑みを見せる銀時。しかし実際は、余裕など無かった。離れた所にいる朧は気付いていないが、銀時の太ももからは血が流れ、定春の毛をも赤く染めている。
それを見た柚希は思わず声を上げそうになったが、チラリと自分に向けられた銀時の視線がそれを止めた。
「ま、そういうわけだから、コイツは連れて帰るわ。夜更かしは美容の大敵だしよ」
「ふざけるな。その女は元々我らの管轄下にある。……柚希、こちらに来い。お前は自分の立場が分かっているはずだ」
朧の言葉に、ビクリと震えて身を竦める柚希。こんなにも怯えて小さくなる柚希を見たのは初めてで、怒りに我を忘れそうになった銀時だったが、自分に縋り付く柚希を感じて踏みとどまった。
「立場なんて知ったこっちゃねーよ。柚希がお前を拒否してんだ。諦めてサッサと消えちまえ。しつこい男は嫌われんぞ。それともーー今ここで又戦うか?」
我を忘れてはいないものの、我慢は出来なかったのか挑発する銀時。定春の上から木刀を構え、朧を見下ろす目は、紛う方なき夜叉の瞳。
「無理だよ、シロ! 朧に敵うはずなんてない」
そんな銀時を止めようと、柚希が叫ぶ。苦しげな表情の柚希に違和感を覚えながらも、銀時は言った。