第一章 ~再会~(49P)
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向かった先は、薬局。先ほどは店の前を通っただけで気付かなかったが、思っていた以上に品揃えが充実しているようだ。
柚希は慣れた手つきでいくつもの薬品をカゴに放り込むと、レジへと向かった。その時狭い通路を通ったせいで、すれ違いざまに他の客とぶつかってしまう。
「あ、すみません」
頭を下げて謝れば、「いや、構わねぇ」と返される。チラリと視線を上げると、それは警察官と思しき黒い制服をまとった若い男だった。
少し強めの煙草の臭いと、自分に向けられる鋭い視線から察するに、この男とは極力関わらない方が良さそうだ。柚希はもう一度小さく頭を下げると、それ以上は何も言わずに立ち去ろうとした。
ところが、だ。
「おい」
声をかけられてしまい、歩みを止めざるを得ない。
「はい、何でしょう」
「突然で悪いがアンタ、どこかで会ったことねぇか?」
それは、予想もしていなかった質問。本気で覚えのない柚希は、いぶかし気に首をかしげながら言った。
「すみません。多分お会いしたことは無いと思うのですが……誰かとお間違えじゃありませんか?」
「そうか? っかしいな……記憶力は良い方なんだが。呼び止めて悪かったな」
「いえ、お気になさらず」
「それにしても、結構な量を買い込むんだな。一般人なら買わないような代物も混じってんじゃねぇか。アンタは医療関係者か何かか?」
男が柚希の持つカゴの中を覗き込みながら言うと、柚希の眉が小さくピクリと動いた。
実際柚希が選んだ薬の中には、それなりに知識が無いと使いこなせない物がいくつも入っている。使い方によっては少々やっかいな代物にもなるため、あまり詮索されたくはなかった。
「よくお分かりですね。在庫が足りなくなってしまったので、急いで買ってくるよう頼まれたんです。時間がありませんので、もう宜しいでしょうか」
「失礼します」と半ば強引に話を切り上げさせた柚希は、あくまで平静さを保ちながらレジを通り、薬局を出る。怪しまれぬよう振り返ることなく、かつ急いでいる風に小走りに店から離れれば、ゆっくりと店から出てくる男の気配が感じられた。
二つほど道をやり過ごし、三つ目の角を曲がって暫くすると、男の気配は遠のいていく。そっと先ほどの道を覗いてみれば、小さくなっていく男の後ろ姿が見えた。
「あの男は何者なんだろう。多分幕府の警察だと思うんだけど……なんにしても目を付けられたら厄介ね。気を付けよう」
相手が誰かと尋ねることはできたが、下手に自己紹介などをさせてしまえばこちらも素性を明かさねばならず、自分の印象が強まってしまう。謎を残したままにはなったが、敢えて深入りせずにおこうと計算した上での行動だったが――
この事がきっかけで、後に足元をすくわれる事態になる事を、この時の柚希は未だ知らない。
柚希は慣れた手つきでいくつもの薬品をカゴに放り込むと、レジへと向かった。その時狭い通路を通ったせいで、すれ違いざまに他の客とぶつかってしまう。
「あ、すみません」
頭を下げて謝れば、「いや、構わねぇ」と返される。チラリと視線を上げると、それは警察官と思しき黒い制服をまとった若い男だった。
少し強めの煙草の臭いと、自分に向けられる鋭い視線から察するに、この男とは極力関わらない方が良さそうだ。柚希はもう一度小さく頭を下げると、それ以上は何も言わずに立ち去ろうとした。
ところが、だ。
「おい」
声をかけられてしまい、歩みを止めざるを得ない。
「はい、何でしょう」
「突然で悪いがアンタ、どこかで会ったことねぇか?」
それは、予想もしていなかった質問。本気で覚えのない柚希は、いぶかし気に首をかしげながら言った。
「すみません。多分お会いしたことは無いと思うのですが……誰かとお間違えじゃありませんか?」
「そうか? っかしいな……記憶力は良い方なんだが。呼び止めて悪かったな」
「いえ、お気になさらず」
「それにしても、結構な量を買い込むんだな。一般人なら買わないような代物も混じってんじゃねぇか。アンタは医療関係者か何かか?」
男が柚希の持つカゴの中を覗き込みながら言うと、柚希の眉が小さくピクリと動いた。
実際柚希が選んだ薬の中には、それなりに知識が無いと使いこなせない物がいくつも入っている。使い方によっては少々やっかいな代物にもなるため、あまり詮索されたくはなかった。
「よくお分かりですね。在庫が足りなくなってしまったので、急いで買ってくるよう頼まれたんです。時間がありませんので、もう宜しいでしょうか」
「失礼します」と半ば強引に話を切り上げさせた柚希は、あくまで平静さを保ちながらレジを通り、薬局を出る。怪しまれぬよう振り返ることなく、かつ急いでいる風に小走りに店から離れれば、ゆっくりと店から出てくる男の気配が感じられた。
二つほど道をやり過ごし、三つ目の角を曲がって暫くすると、男の気配は遠のいていく。そっと先ほどの道を覗いてみれば、小さくなっていく男の後ろ姿が見えた。
「あの男は何者なんだろう。多分幕府の警察だと思うんだけど……なんにしても目を付けられたら厄介ね。気を付けよう」
相手が誰かと尋ねることはできたが、下手に自己紹介などをさせてしまえばこちらも素性を明かさねばならず、自分の印象が強まってしまう。謎を残したままにはなったが、敢えて深入りせずにおこうと計算した上での行動だったが――
この事がきっかけで、後に足元をすくわれる事態になる事を、この時の柚希は未だ知らない。