第三章 〜夜叉〜(70P)
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「只今戻りました……ってあれ? 柚希さん達はこれからお出かけですか?」
「あ、新八くん、神楽ちゃん、おか……」
「出かけるなら酢昆布買ってくるヨロシ。箱ごとな」
「いやいや神楽ちゃん、酢昆布くらい柚希さんに頼まず自分で買って来ようよ。っていうか、箱で買うってどんだけ!?」
「今の世の中を生き抜くためには、食料を出来る限りストックをしておくのが常識ネ。味ヨシ、保存にヨシ、銀ちゃんの髪にもヨシの三拍子揃った最強の食材は、酢昆布だけヨ」
「おいおい神楽! お前図々しく柚希にねだりながらも、さりげなく俺をバカにしてねェ!?」
『お帰り』の一言を言い切る間も無く、展開される会話についていけず、ただ見ている事しか出来ない柚希。でもそのやり取りはとても面白くて、つい吹き出してしまう。
「バカにしてなんか無いネ。ただ真実を述べたまでヨ。最近床のあちこちに落ちてる縮れ天パの数が多くて……あ、でもひょっとしてコレ、違う毛か?」
「神楽! 女の子がそんな事言うもんじゃありません!」
慌てて銀時が神楽の口を押さえて黙らせる。ジタバタと暴れる神楽と、必死に押さえ込む銀時との攻防を暫く眺めていた柚希だったが、やがてさりげなく銀時の後ろに回り込み、そっと銀時の後頭部を撫でた。
「酢昆布限定だと飽きちゃうから、これからは種類を変えながら定期的に海藻を摂ろうね」
「ちょっと待って柚希ちゃん! 今のって一体どう言うことッ!?」
「まあまあ銀さん、今ならきっと間に合いますから」
「何がどうしてこういう流れになってるんだよッ! 大体俺が気にしてるのは毛髪の癖であって、毛根じゃないってェの!」
拳を振り上げた銀時の腕からスルリと抜け出した神楽と、全然フォローになってなかった新八が部屋の奥へと笑いながら走って逃げるのを、銀時が追いかける。始まってしまった鬼ごっこは、ヒートアップするばかりだ。
この調子では、銀時が出かけるのは無理そうだなと判断した柚希は、一人で扇子を取りに行って来ようと思い、玄関を出た。ところが足を数歩進めたところで、立ち止まってしまう。
「何でこんな所に……?」
柚希の視線は、外廊下の手すりに釘付けになっていた。その上に器用に乗せられていたのは、一本の見慣れた扇子。警戒しながらも手にとって開いてみれば、間違いなくそれは柚希の物だった。
だが、持った時に感じた小さな違和感が、柚希から表情を奪う。扇子を閉じて握りしめた柚希は、数秒の間目を瞑り何かを考えていたが、やがてふぅっと大きく息を吐くと、何も言わずに扇子を懐に入れた。
「あ、新八くん、神楽ちゃん、おか……」
「出かけるなら酢昆布買ってくるヨロシ。箱ごとな」
「いやいや神楽ちゃん、酢昆布くらい柚希さんに頼まず自分で買って来ようよ。っていうか、箱で買うってどんだけ!?」
「今の世の中を生き抜くためには、食料を出来る限りストックをしておくのが常識ネ。味ヨシ、保存にヨシ、銀ちゃんの髪にもヨシの三拍子揃った最強の食材は、酢昆布だけヨ」
「おいおい神楽! お前図々しく柚希にねだりながらも、さりげなく俺をバカにしてねェ!?」
『お帰り』の一言を言い切る間も無く、展開される会話についていけず、ただ見ている事しか出来ない柚希。でもそのやり取りはとても面白くて、つい吹き出してしまう。
「バカにしてなんか無いネ。ただ真実を述べたまでヨ。最近床のあちこちに落ちてる縮れ天パの数が多くて……あ、でもひょっとしてコレ、違う毛か?」
「神楽! 女の子がそんな事言うもんじゃありません!」
慌てて銀時が神楽の口を押さえて黙らせる。ジタバタと暴れる神楽と、必死に押さえ込む銀時との攻防を暫く眺めていた柚希だったが、やがてさりげなく銀時の後ろに回り込み、そっと銀時の後頭部を撫でた。
「酢昆布限定だと飽きちゃうから、これからは種類を変えながら定期的に海藻を摂ろうね」
「ちょっと待って柚希ちゃん! 今のって一体どう言うことッ!?」
「まあまあ銀さん、今ならきっと間に合いますから」
「何がどうしてこういう流れになってるんだよッ! 大体俺が気にしてるのは毛髪の癖であって、毛根じゃないってェの!」
拳を振り上げた銀時の腕からスルリと抜け出した神楽と、全然フォローになってなかった新八が部屋の奥へと笑いながら走って逃げるのを、銀時が追いかける。始まってしまった鬼ごっこは、ヒートアップするばかりだ。
この調子では、銀時が出かけるのは無理そうだなと判断した柚希は、一人で扇子を取りに行って来ようと思い、玄関を出た。ところが足を数歩進めたところで、立ち止まってしまう。
「何でこんな所に……?」
柚希の視線は、外廊下の手すりに釘付けになっていた。その上に器用に乗せられていたのは、一本の見慣れた扇子。警戒しながらも手にとって開いてみれば、間違いなくそれは柚希の物だった。
だが、持った時に感じた小さな違和感が、柚希から表情を奪う。扇子を閉じて握りしめた柚希は、数秒の間目を瞑り何かを考えていたが、やがてふぅっと大きく息を吐くと、何も言わずに扇子を懐に入れた。