第三章 〜夜叉〜(70P)
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「シロが前線で本格的に戦うようになってから、また私は救護所に詰めるようになったよね。暫くして坂本くんが合流してからは、ますます私が戦場に出る事も無くなった。攘夷四天王の名が知れ渡った事で、私の名は忘れられて行ったわ」
「訳の分かんねー二つ名を、皆してつけられてたからな。俺は早い時期から白夜叉だったけどよ。桂に付けられた『狂乱の貴公子』ってのはスカしてたよな〜。アイツのどこが貴公子だってんだよ。貴公子じゃなくて奇行師のだっつーの」
「未だ納得してなかったのね。高杉くんも、鬼兵隊総督として有名になっていったし、坂本くんも……」
「声のデカイ人ってやつだろ?」
「いや、それ単なるネタだから。一応当時は桂浜の龍……とか何とか呼ばれてなかったっけ?」
「お前もちゃんと覚えてねェんじゃねーか」
「だっていつも大声で叫んでたイメージしかないんだもん」
いつの間にか真剣な話からふざけた話へとシフトし、じゃれ合う二人。子供の頃と変わらぬ明るい表情を見せる柚希を、いつものようにふざけた返しをしながらも、銀時は微笑ましく見つめていた。
「そう言えば、結束を固めるためにと私の扇子に皆の名前を書いたのもあの頃だったよね。私が渡したのは一本だったのに、気が付いたら何本か持ち出されてて、しかも半分落書き状態だったんだもん。お陰で天人に笑われた事もあったんだよ。命のやり取りの最中に笑われるって、どんな気持ちか分かる!?」
「お前がいつも気を張ってるから、少しでも緊張を和らげようって気ィ使ってやったんだぜ。俺たちからの優しさだってーの」
「優しさぁ? 普通に面白がってただけでしょ」
呆れたように言いながら、柚希は懐に手を入れる。そして中を探りーー。
「……無い」
「は?」
「扇子が無いのよ。そう言えばさっきお……天導衆の輩と対峙した時に落としてそのままだったんだ」
「お前が扇子を落としたまま忘れてたなんざ、珍しいな」
あの時は土方に助けられた事で、動揺を抑える事が出来ていたと思っていたが、実際はそうでも無かったようだ。いつもなら決して存在を忘れる事のない相棒を失念していた事に、一番驚いているのは柚希自身だった。
「何も無かったとは言え、やっぱり天導衆を目の当たりにしちゃうとね。でももう大丈夫よ。って事で、今からちょっと拾いに行ってくるわ」
スックと立ち上がり、玄関へと向かう柚希。
「あ、おい、待てよ。俺もついて行くから」
慌てて銀時も立ち上がり、柚希を追いかける。
「もしかしたら、未だそいつが近くにいるかもしんねーだろ。そろそろ日も暮れ始めてるし、俺がボディガードしてやっから」
「もう、相変わらずの心配性ね。私なら大丈夫よ」
銀時の過保護っぷりに呆れながらも、嬉しそうに微笑んだ柚希は、玄関の戸に手をかけようとした。が、手が触れる直前に勝手に戸が開いてしまう。
見るとそこには、新八と神楽が立っていた。
「訳の分かんねー二つ名を、皆してつけられてたからな。俺は早い時期から白夜叉だったけどよ。桂に付けられた『狂乱の貴公子』ってのはスカしてたよな〜。アイツのどこが貴公子だってんだよ。貴公子じゃなくて奇行師のだっつーの」
「未だ納得してなかったのね。高杉くんも、鬼兵隊総督として有名になっていったし、坂本くんも……」
「声のデカイ人ってやつだろ?」
「いや、それ単なるネタだから。一応当時は桂浜の龍……とか何とか呼ばれてなかったっけ?」
「お前もちゃんと覚えてねェんじゃねーか」
「だっていつも大声で叫んでたイメージしかないんだもん」
いつの間にか真剣な話からふざけた話へとシフトし、じゃれ合う二人。子供の頃と変わらぬ明るい表情を見せる柚希を、いつものようにふざけた返しをしながらも、銀時は微笑ましく見つめていた。
「そう言えば、結束を固めるためにと私の扇子に皆の名前を書いたのもあの頃だったよね。私が渡したのは一本だったのに、気が付いたら何本か持ち出されてて、しかも半分落書き状態だったんだもん。お陰で天人に笑われた事もあったんだよ。命のやり取りの最中に笑われるって、どんな気持ちか分かる!?」
「お前がいつも気を張ってるから、少しでも緊張を和らげようって気ィ使ってやったんだぜ。俺たちからの優しさだってーの」
「優しさぁ? 普通に面白がってただけでしょ」
呆れたように言いながら、柚希は懐に手を入れる。そして中を探りーー。
「……無い」
「は?」
「扇子が無いのよ。そう言えばさっきお……天導衆の輩と対峙した時に落としてそのままだったんだ」
「お前が扇子を落としたまま忘れてたなんざ、珍しいな」
あの時は土方に助けられた事で、動揺を抑える事が出来ていたと思っていたが、実際はそうでも無かったようだ。いつもなら決して存在を忘れる事のない相棒を失念していた事に、一番驚いているのは柚希自身だった。
「何も無かったとは言え、やっぱり天導衆を目の当たりにしちゃうとね。でももう大丈夫よ。って事で、今からちょっと拾いに行ってくるわ」
スックと立ち上がり、玄関へと向かう柚希。
「あ、おい、待てよ。俺もついて行くから」
慌てて銀時も立ち上がり、柚希を追いかける。
「もしかしたら、未だそいつが近くにいるかもしんねーだろ。そろそろ日も暮れ始めてるし、俺がボディガードしてやっから」
「もう、相変わらずの心配性ね。私なら大丈夫よ」
銀時の過保護っぷりに呆れながらも、嬉しそうに微笑んだ柚希は、玄関の戸に手をかけようとした。が、手が触れる直前に勝手に戸が開いてしまう。
見るとそこには、新八と神楽が立っていた。