第三章 〜夜叉〜(70P)
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「あの頃の私は、親父様を取り戻すためのきっかけと情報を集めたいという気持ち以上に、天人への復讐心が大きかったんだ。実の両親を殺した天人への制裁をしてやろうという気持ちが強かったの。後になって思えば、あの当時は色々な事があり過ぎて心が壊れてしまってたんだと思う」
最初に天人と対峙した時は、あくまで守る事だけを考えていた。しかし回を重ねる毎に天人側に柚希の存在は知れ渡り、攘夷志士ではなく柚希自身を狙った襲撃が始まってしまう。
念のためにと決して本名は名乗らず、自らの住処も気取られぬよう、細心の注意を払いながら行動をしてはいたつもりだったが、例え変名でも名が売れればいつかはバレるもの。天人の間で存在を伝えるために付けられた『夜叉の娘』の名も、数日後には『姫夜叉』へと格上げされ、やがて診療所の場所も嗅ぎつけられた。
「ただ守るだけだと自分に言い聞かせる事が出来ていれば、戦い方も違ったんだろうけどね。命を奪う事だけはするまいと、そこだけは自分に規制をかけていたけど、私に相手を打ち倒す意志と力がある事を察した天人たちは、どんどん強い輩を送り込んでくるようになって。さすがに手加減の出来なくなった私は、五度目の対峙で天人を殺したの……」
その時の記憶が鮮明に思い出されたのだろう。柚希はフッと小さく息を吐くと、少しだけ口角を上げた。
「初めて奪った命は重かったけど、既に壊れていた心は平然とそれを受け入れてた。それどころか、安堵すらしていたわ。私は敵を殺せるんだって。もう、戦場に出ても躊躇う事無く戦えるんだって」
「柚希……」
ふと銀時の脳裏に浮かんだのは、初めて目の前で天人の命を奪った柚希の姿。虚ろな表情で天人を見下ろしていた柚希を見た時、銀時が感じていたのはそこはかとない不安と、今にも壊れてしまいそうな危うさだった。
「人間は、勝手な生き物だわ。命を奪うなんて非人道的だと言いながら、身内を守るための殺しは正当化するんだもの。天人を殺せば殺すほど、英雄視されちゃうんだよ。……その辺りはシロもよく分かってるよね」
「……まァ、な」
柚希の言葉に皮肉な笑みで返した銀時は、自らが白夜叉と呼ばれるようになったあの頃の事を思い出していた。
最初に天人と対峙した時は、あくまで守る事だけを考えていた。しかし回を重ねる毎に天人側に柚希の存在は知れ渡り、攘夷志士ではなく柚希自身を狙った襲撃が始まってしまう。
念のためにと決して本名は名乗らず、自らの住処も気取られぬよう、細心の注意を払いながら行動をしてはいたつもりだったが、例え変名でも名が売れればいつかはバレるもの。天人の間で存在を伝えるために付けられた『夜叉の娘』の名も、数日後には『姫夜叉』へと格上げされ、やがて診療所の場所も嗅ぎつけられた。
「ただ守るだけだと自分に言い聞かせる事が出来ていれば、戦い方も違ったんだろうけどね。命を奪う事だけはするまいと、そこだけは自分に規制をかけていたけど、私に相手を打ち倒す意志と力がある事を察した天人たちは、どんどん強い輩を送り込んでくるようになって。さすがに手加減の出来なくなった私は、五度目の対峙で天人を殺したの……」
その時の記憶が鮮明に思い出されたのだろう。柚希はフッと小さく息を吐くと、少しだけ口角を上げた。
「初めて奪った命は重かったけど、既に壊れていた心は平然とそれを受け入れてた。それどころか、安堵すらしていたわ。私は敵を殺せるんだって。もう、戦場に出ても躊躇う事無く戦えるんだって」
「柚希……」
ふと銀時の脳裏に浮かんだのは、初めて目の前で天人の命を奪った柚希の姿。虚ろな表情で天人を見下ろしていた柚希を見た時、銀時が感じていたのはそこはかとない不安と、今にも壊れてしまいそうな危うさだった。
「人間は、勝手な生き物だわ。命を奪うなんて非人道的だと言いながら、身内を守るための殺しは正当化するんだもの。天人を殺せば殺すほど、英雄視されちゃうんだよ。……その辺りはシロもよく分かってるよね」
「……まァ、な」
柚希の言葉に皮肉な笑みで返した銀時は、自らが白夜叉と呼ばれるようになったあの頃の事を思い出していた。