第三章 〜夜叉〜(70P)
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「戦場にいた頃は常にどこかしら傷があったから、血なんて簡単に調達できたわよ。でも今は違うでしょ! わざわざ自分を傷付けるなんて行為、私は許さないからね!」
そう言ってキッと銀時を睨むと、怯えたフリをしながら銀時が肩を竦め、口を閉じようとする。しかし柚希はそれを許さず、銀時の傷口を舐めるように唇を重ねた。
一瞬驚きで目を見開いた銀時も、すぐにそれを受け入れて目を細めると、されるがままになる。うっすらと口内から鼻へ抜ける鉄の臭いも気にならないくらいに、柚希の口付けは甘かった。
「『姫』からキスされるなんざ、貴重だねェ」
「茶化さないでよ。それに今の私は姫じゃないわ。診療所で呼ばれたのがきっかけとは言え、私にとっては戦場で戦う時のあだ名でしかないって事、シロが一番分かってくれてると思ってたんだけど」
「分かってるさ。だから敢えて呼んでんだよ。今のお前、心の中で何かと戦ってるんだろ?」
正面から見つめ合い、お互いの瞳に映る自分を見れば、柚希がいかに苦し気な表情をしているのかが分かる。
「私は……戦ってなんか……」
「俺が、お前を勝たせてやるから。絶対に柚希の全てを護ってやるから。だから……聞かせろよ」
そう言いながら頭に置かれた銀時の手はとても大きく、頼もしく思えた。
――そう言えば私が弱音を吐けずにいる時は、いつもシロが側に寄り添ってくれてたっけ。
当たり前過ぎて忘れていた銀時の心遣いを思い出し、柚希は覚悟を決める。
「うん……分かった。話すよ」
一度目を閉じ、再び開いた柚希の目に映ったのは、銀時の瞳に映る自らの笑顔だった。
「あの日……シロに別れを告げた日。私はその足で戦場へと向かったの。以前天人に襲われて大怪我していたところを助けた人が、偶然攘夷志士でね。その縁から攘夷戦争の情報をもらうようになって、いずれは戦場に向かうつもりでいたんだけど……一度攘夷志士を助けてしまうと、今までのように遠巻きに見ている事は出来なくなってしまって、彼らが虐げられるのを目にする度に助けるようになったの。お陰で天人たちに目を付けられるようになっちゃった」
いたずらが見つかった子供のように舌を出して見せる柚希に、銀時が苦笑する。
柚希は頭の良い娘ではあったが、この時は考えるより先に体が動いてしまっていたのだろう。何故自ら危険に飛び込んだと言いたい気持ちをぐっとこらえ、銀時は話の続きを待った。
そう言ってキッと銀時を睨むと、怯えたフリをしながら銀時が肩を竦め、口を閉じようとする。しかし柚希はそれを許さず、銀時の傷口を舐めるように唇を重ねた。
一瞬驚きで目を見開いた銀時も、すぐにそれを受け入れて目を細めると、されるがままになる。うっすらと口内から鼻へ抜ける鉄の臭いも気にならないくらいに、柚希の口付けは甘かった。
「『姫』からキスされるなんざ、貴重だねェ」
「茶化さないでよ。それに今の私は姫じゃないわ。診療所で呼ばれたのがきっかけとは言え、私にとっては戦場で戦う時のあだ名でしかないって事、シロが一番分かってくれてると思ってたんだけど」
「分かってるさ。だから敢えて呼んでんだよ。今のお前、心の中で何かと戦ってるんだろ?」
正面から見つめ合い、お互いの瞳に映る自分を見れば、柚希がいかに苦し気な表情をしているのかが分かる。
「私は……戦ってなんか……」
「俺が、お前を勝たせてやるから。絶対に柚希の全てを護ってやるから。だから……聞かせろよ」
そう言いながら頭に置かれた銀時の手はとても大きく、頼もしく思えた。
――そう言えば私が弱音を吐けずにいる時は、いつもシロが側に寄り添ってくれてたっけ。
当たり前過ぎて忘れていた銀時の心遣いを思い出し、柚希は覚悟を決める。
「うん……分かった。話すよ」
一度目を閉じ、再び開いた柚希の目に映ったのは、銀時の瞳に映る自らの笑顔だった。
「あの日……シロに別れを告げた日。私はその足で戦場へと向かったの。以前天人に襲われて大怪我していたところを助けた人が、偶然攘夷志士でね。その縁から攘夷戦争の情報をもらうようになって、いずれは戦場に向かうつもりでいたんだけど……一度攘夷志士を助けてしまうと、今までのように遠巻きに見ている事は出来なくなってしまって、彼らが虐げられるのを目にする度に助けるようになったの。お陰で天人たちに目を付けられるようになっちゃった」
いたずらが見つかった子供のように舌を出して見せる柚希に、銀時が苦笑する。
柚希は頭の良い娘ではあったが、この時は考えるより先に体が動いてしまっていたのだろう。何故自ら危険に飛び込んだと言いたい気持ちをぐっとこらえ、銀時は話の続きを待った。