第一章 ~再会~(49P)
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「お前、誰を見てるアルか?」
「え? 何のこと?」
「気付いてないアルか。柚希の目、ここにはいない誰かを見てるネ。それって銀ちゃんか?」
探りながらも心配しつつ伺ってくる神楽に、柚希は戸惑いを隠せない。何故なら柚希は、ここにいない誰かを見ているつもりなど全く無かったから。
「柚希がいないとダメな人間って誰アルか? その扇子は柚希の何ネ?」
具体的に質問をされ、柚希の頭の中は混乱し始めた。
――私がいないとダメな人間? それは私を必要としている人間のことよね。そんな人、いた? 扇子はずっと持ってた命よりも大切なもの。でも何で私はそんなにこれを大切に持ち続けてるの? 武器であり、生きる術を組み込んではいるけれど、どうして命よりも大切だと思い込んでるんだろう。
「柚希?」
「私……」
「お待たせいたしました」
場の空気を読まずに現れたのは、先ほどのウェイター。両手いっぱいの品を器用に運び、次々とテーブルに並べていけば、あっという間にスイーツパーティー会場へと変わっていった。
「キャッホウ! やっと来たネ。いっただっきまーす!」
同時に緊張感は消え去り、神楽の意識は完全に食モードへと移行する。
だが早速テーブル一杯のスイーツにかぶり付く神楽とはうらはらに、柚希の心は未だここにあらずだ。見えない出口を探すかのように、頭を抱え込んでいた。
既に神楽の注文した品は、半分腹の中に消え去っている。それでも全く手を付けようとしない柚希に、神楽は言った。
「何で食べ無いアルか? 好きで頼んだはずネ。残すのはプリンに失礼ヨ。何なら私が食べてやるネ。銀ちゃんと一緒だと、プリンはほとんど食べられないからな」
手を伸ばして柚希の前にあるプリンを引き寄せようとした時。
「ダメよっ! これはアイツに……!」
全身で守るようにプリンを押さえた柚希が、神楽の動きを止める。その様相が尋常では無いことに気付いたのか、神楽はアッサリと手を引いた。
「プリン一つに何そこまで必死になってるアルか。だったらさっさと食べるか、あげたい奴がいるならテイクアウトを頼むネ」
そう言うと何事もなかったかのように、神楽は自分の目の前にあるスイーツを片付けていった。
ハッとしたように気付いた柚希はと言うと、自分の発言に戸惑いながらバツが悪そうに謝る。
「ごめんね、神楽ちゃん。大人げない姿を見せちゃったわ」
「別に気にしてないアル。テイクアウトで手を打つネ」
「……ちゃっかりしてるわ」
変わらぬ態度で接してくる神楽に救われる。柚希は今度こそ神楽を見てほほ笑むと、何かを決心したように言った。
「ねぇ神楽ちゃん、未だお腹は空いてる?」
「こんなの腹の足しにもなってないネ」
「じゃぁもっと注文して良いから、ちょっとここで待っててくれる? 買い忘れてたものがあるから、すぐそこの店に行ってきたいの」
「店に行くのは構わないけど、銀ちゃんから一人歩きさせるなと言われてるネ。柚希がいなくなったら、銀ちゃん発狂するアルよ」
「いなくなったりしないから大丈夫。ここの支払いだってあるし、本当にすぐ戻ってくるから、ね」
「分かったアル」
神楽の承諾を得た柚希は、既に冷めてしまったコーヒーとプリンをかき込むと「すぐに戻るからね」と指切りをして店を出たのだった。
「え? 何のこと?」
「気付いてないアルか。柚希の目、ここにはいない誰かを見てるネ。それって銀ちゃんか?」
探りながらも心配しつつ伺ってくる神楽に、柚希は戸惑いを隠せない。何故なら柚希は、ここにいない誰かを見ているつもりなど全く無かったから。
「柚希がいないとダメな人間って誰アルか? その扇子は柚希の何ネ?」
具体的に質問をされ、柚希の頭の中は混乱し始めた。
――私がいないとダメな人間? それは私を必要としている人間のことよね。そんな人、いた? 扇子はずっと持ってた命よりも大切なもの。でも何で私はそんなにこれを大切に持ち続けてるの? 武器であり、生きる術を組み込んではいるけれど、どうして命よりも大切だと思い込んでるんだろう。
「柚希?」
「私……」
「お待たせいたしました」
場の空気を読まずに現れたのは、先ほどのウェイター。両手いっぱいの品を器用に運び、次々とテーブルに並べていけば、あっという間にスイーツパーティー会場へと変わっていった。
「キャッホウ! やっと来たネ。いっただっきまーす!」
同時に緊張感は消え去り、神楽の意識は完全に食モードへと移行する。
だが早速テーブル一杯のスイーツにかぶり付く神楽とはうらはらに、柚希の心は未だここにあらずだ。見えない出口を探すかのように、頭を抱え込んでいた。
既に神楽の注文した品は、半分腹の中に消え去っている。それでも全く手を付けようとしない柚希に、神楽は言った。
「何で食べ無いアルか? 好きで頼んだはずネ。残すのはプリンに失礼ヨ。何なら私が食べてやるネ。銀ちゃんと一緒だと、プリンはほとんど食べられないからな」
手を伸ばして柚希の前にあるプリンを引き寄せようとした時。
「ダメよっ! これはアイツに……!」
全身で守るようにプリンを押さえた柚希が、神楽の動きを止める。その様相が尋常では無いことに気付いたのか、神楽はアッサリと手を引いた。
「プリン一つに何そこまで必死になってるアルか。だったらさっさと食べるか、あげたい奴がいるならテイクアウトを頼むネ」
そう言うと何事もなかったかのように、神楽は自分の目の前にあるスイーツを片付けていった。
ハッとしたように気付いた柚希はと言うと、自分の発言に戸惑いながらバツが悪そうに謝る。
「ごめんね、神楽ちゃん。大人げない姿を見せちゃったわ」
「別に気にしてないアル。テイクアウトで手を打つネ」
「……ちゃっかりしてるわ」
変わらぬ態度で接してくる神楽に救われる。柚希は今度こそ神楽を見てほほ笑むと、何かを決心したように言った。
「ねぇ神楽ちゃん、未だお腹は空いてる?」
「こんなの腹の足しにもなってないネ」
「じゃぁもっと注文して良いから、ちょっとここで待っててくれる? 買い忘れてたものがあるから、すぐそこの店に行ってきたいの」
「店に行くのは構わないけど、銀ちゃんから一人歩きさせるなと言われてるネ。柚希がいなくなったら、銀ちゃん発狂するアルよ」
「いなくなったりしないから大丈夫。ここの支払いだってあるし、本当にすぐ戻ってくるから、ね」
「分かったアル」
神楽の承諾を得た柚希は、既に冷めてしまったコーヒーとプリンをかき込むと「すぐに戻るからね」と指切りをして店を出たのだった。