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第三章 〜夜叉〜(70P)

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「あだ名なんてのは、本人の意思とは関係なく勝手に付けられちまうもんだろ。……一部を除いてな。ついでに言うと、いよいよ賞金がかけられるって話も出てるらしい。それを聞いて身を隠すよう忠告に来たら……」

 そう言いながら畑中は、未だ呆然としている高杉と桂を見た。

「どういう経緯でかは知らねーが、この二人が天人と対峙してんのを見ちまったわけだ。こいつらもそれなりに実力はあるが、未だ誰の命も奪った事はねぇだろ? 一線を越えた者とそうでない者ってのは、どうしても最後の所で大きく違ってくる。案の定、蛇に睨まれた蛙のように萎縮しちまってたところを、俺が助けたんだよ」
「そんじゃ怪我は……」
「あっても打ち身くらいだろ。本物の殺意って奴に当てられただけだからな」

『本物の殺意』

 その言葉に銀時は、松下村塾が炎上した日の出来事を思い出す。
 あの時は未だ同じ所に立っていたはずの柚希が、既に一人で遠く先へと離れてしまっていた事に気付き、胸が締め付けられた。

 しばし考え込んでいた銀時だったが、何かを思い立ったように自らの手の平を見ると、そのまま高杉の頬へと振り下ろす。
 パァン! と大きな音が辺り一帯に響き、高杉の目が見開かれた。続いて桂の頬も大きく音を立て、小さなモミジが浮き上がる。

「何すんだよ、銀時!」

 驚きと痛みで意識が鮮明となった高杉が怒鳴るも聞き流し、自らの頬を強く叩く銀時。

「一体何なのだ? 銀時」

 痛みと銀時の行動に戸惑う桂の疑問に答える事無く、銀時は畑中に向けて言った。

「なあ、おっさん。俺たちが柚希と対等に……いや、それ以上に強くなるにはどうしたら良い?」

 銀時の言葉に、その場にいた者たちがハッと息を飲む。『背中を押す言葉』だけしか必要とされていないこの質問には、銀時の強い意志が込められているのが分かったから。

「ったく……今時のガキってのは、面倒な奴しかいねーのかよ」

 畑中はやれやれと大きくため息を吐くと、まずは高杉と桂を見た。

「今なら尻尾巻いて逃げ出せるし、誰も責めやしねーぞ」

 畑中に言われ、高杉と桂は顔を見合わせる。数秒目を合わせお互い小さく頷くと、桂が言った。

「いえ、俺たちも強くなりたい。あんな醜態を晒すのは一度で沢山です」

 心底悔しそうに拳を握り締める桂。高杉も、歯噛みしながら桂の言葉に頷いた。
 その意志の固さに、畑中も覚悟を決めたようだ。今度は銀時の顔を見ながら聞いた。
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