第三章 〜夜叉〜(70P)
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「シロ……」
人前では呼ばぬと決めていた名を口にしてしまうほどの動揺が、柚希を襲っている。
だからこそ、気付いていなかったのだ。
すぐ後ろまで近付いていた、その『別の誰か』の気配に。
「捕らえた!」
「……っ!」
後ろから羽交い絞めにされ、そのまま地面に押し倒される。
咄嗟の事で受け身を取り切れず、柚希は強く胸を打った。
「ぐ……っ!」
痛みと苦しさで一瞬息が止まるも、このままでは何をされるか分からない。何とかして逃れようと、柚希は必死にもがいた。
「放して!」
「うわっ! 暴れてくれるなよ柚希!」
「え……?」
力付くで拘束を解こうとしていた柚希だったが、自分の名を呼んだのが聞き覚えのある声だと気付き、動きが止まる。
「その声……桂くん?」
少しずつ煙は流れていき、やがて視界が開けてくると、そこにいたのはやはり桂だった。躊躇はしながらも柚希の利き腕を後ろに捻り上げ、逃げ出せないよう地面に固定している。
「あまり褒められたやり方で無い事は承知しているが、必要な事だったのでな。これで良いのだろう? 銀時」
そう言って桂は、ゆっくりと歩み寄って来た銀時と高杉を見た。
「ああ。俺たちの勝ちだ」
「ちょっと待ってよ! 卑怯じゃない! 私は銀時と高杉くんの二人と勝負してたのよ。桂くんが入るなんて聞いてない!」
桂に押さえつけられたまま、納得のいかない表情で柚希が叫ぶ。しかし銀時は、柚希の目の前に落ちている扇子を拾い上げながら当然のように答えた。
「俺たちは別に『二人』だなんて一言も言ってないぜ。お前は『一人で良い』と言ったが、俺は『どんな手を使っても良い』としか言ってねェ」
「それは……」
思い返せば、確かに銀時の言う通りだ。銀時も高杉も、ただの一言も『二人』と口にはしていない。全てが計算された上での挑発だったことが分かり、柚希は小さく歯噛みした。
「こんなやり方、アンタたちが考え付くはずないよね。誰の入れ知恵?」
押さえつけられながらも、柚希は頭だけを起こして三人の顔を見る。だが誰も答えようとはせず、バツの悪そうな顔をしていた。
「答えられないの? だったら質問を変えるわ。どうしてこんなやり方をしてでも、私に勝とうとしたの?」
「そんなの決まってんだろ。お前を戦場に連れて行きたくねーからだよ」
銀時の言葉に、高杉と桂が小さく頷く。
「じゃあアンタたちは良いわけ? 冗談じゃないわ。こんな不意打ちでしか私に勝てない癖に、私を連れて行きたくないなんて、よくそんな事を言えたわね!」
怒りを露わにして三人を睨みつける柚希。その顔を見た銀時は苦しそうに唇を噛み締めると、大きなため息を吐く。そして決心したように言った。
人前では呼ばぬと決めていた名を口にしてしまうほどの動揺が、柚希を襲っている。
だからこそ、気付いていなかったのだ。
すぐ後ろまで近付いていた、その『別の誰か』の気配に。
「捕らえた!」
「……っ!」
後ろから羽交い絞めにされ、そのまま地面に押し倒される。
咄嗟の事で受け身を取り切れず、柚希は強く胸を打った。
「ぐ……っ!」
痛みと苦しさで一瞬息が止まるも、このままでは何をされるか分からない。何とかして逃れようと、柚希は必死にもがいた。
「放して!」
「うわっ! 暴れてくれるなよ柚希!」
「え……?」
力付くで拘束を解こうとしていた柚希だったが、自分の名を呼んだのが聞き覚えのある声だと気付き、動きが止まる。
「その声……桂くん?」
少しずつ煙は流れていき、やがて視界が開けてくると、そこにいたのはやはり桂だった。躊躇はしながらも柚希の利き腕を後ろに捻り上げ、逃げ出せないよう地面に固定している。
「あまり褒められたやり方で無い事は承知しているが、必要な事だったのでな。これで良いのだろう? 銀時」
そう言って桂は、ゆっくりと歩み寄って来た銀時と高杉を見た。
「ああ。俺たちの勝ちだ」
「ちょっと待ってよ! 卑怯じゃない! 私は銀時と高杉くんの二人と勝負してたのよ。桂くんが入るなんて聞いてない!」
桂に押さえつけられたまま、納得のいかない表情で柚希が叫ぶ。しかし銀時は、柚希の目の前に落ちている扇子を拾い上げながら当然のように答えた。
「俺たちは別に『二人』だなんて一言も言ってないぜ。お前は『一人で良い』と言ったが、俺は『どんな手を使っても良い』としか言ってねェ」
「それは……」
思い返せば、確かに銀時の言う通りだ。銀時も高杉も、ただの一言も『二人』と口にはしていない。全てが計算された上での挑発だったことが分かり、柚希は小さく歯噛みした。
「こんなやり方、アンタたちが考え付くはずないよね。誰の入れ知恵?」
押さえつけられながらも、柚希は頭だけを起こして三人の顔を見る。だが誰も答えようとはせず、バツの悪そうな顔をしていた。
「答えられないの? だったら質問を変えるわ。どうしてこんなやり方をしてでも、私に勝とうとしたの?」
「そんなの決まってんだろ。お前を戦場に連れて行きたくねーからだよ」
銀時の言葉に、高杉と桂が小さく頷く。
「じゃあアンタたちは良いわけ? 冗談じゃないわ。こんな不意打ちでしか私に勝てない癖に、私を連れて行きたくないなんて、よくそんな事を言えたわね!」
怒りを露わにして三人を睨みつける柚希。その顔を見た銀時は苦しそうに唇を噛み締めると、大きなため息を吐く。そして決心したように言った。