第三章 〜夜叉〜(70P)
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「それで終わり?」
「ばァか、未だ始まったばかりじゃねーか。さっさと下りて来いよ」
「じゃ、遠慮なく」
玉を器用に操り、衝撃を逃がしながらふわりと着地する柚希。人の重みを感じさせない軽やかさに驚嘆しながらも、二人は竹刀を構え直した。
「行くぞ……ッ!」
今度は銀時が先手を打つ。真っ直ぐ正面から突かれた竹刀は、避けてもすぐに軌道を変えて柚希を襲った。その速さは残像が残るほどで、人間離れしている。だがそれすらも柚希は見切っているようだ。
「素早さが増したみたいね、銀時。でも当たらなきゃ意味は無いよ」
避けながら言った柚希は、タイミングを合わせて扇子を振り上げる。放たれた玉が引き寄せられ、銀時に向かって撃ち落とされると、それは高杉の竹刀によって薙ぎ払われた。
全ての玉が軌道を変えるも、柚希は落ち着いたものだ。すぐにまた玉を引き戻し、新たな角度から二人を襲う。暫くの間その攻防は続いていたが、さすがに埒が明かないと思ったのだろう。徐に柚希が動いた。
「そろそろ終わりにしよっか」
そう言った柚希はまるで舞い踊るかのように、回転しながら緩やかに扇子を振り下ろす。それに呼応して糸は玉を運び、寸分違わず二人を襲い、体を縛り上げた。両腕はおろか両足まで拘束され、バランスを崩した二人はそのまま倒れてしまう。
「くそ……ッ!」
必死に抜け出そうともがくも、糸はギリギリと体を締め上げるばかり。
「は〜い、アンタたちの負け」
悠々と近付き、二人の顔の前で仁王立ちになった柚希は、冷たい眼差しで見下ろしながら言った。
「これでハッキリしたでしょ? 私相手に負けちゃうんだから、銀時も高杉くんも、とてもじゃ無いけど天人相手に戦えないわ。既に松下村塾の生徒たちはもうほとんど諦めてる。……それが正解なんだよ」
そしてしゃがみ込み「諦める事ね」と言いながら二人の頭をポンポンと叩く。柚希にとってそれは、ダメ押しのつもりだった。
ーーところが。
「残念ながら、俺たちは諦めるつもりなんざねーよ」
「え?」
銀時が言うと同時に、どこからか飛んで来た丸い物体。柚希が咄嗟に避けるとそれは銀時たちのすぐ側に落ち、煙を吐き出した。
「何!?」
慌てて口元を押さえた柚希だったが、辺りは煙に覆われてしまい何も見えない。しかも扇子から伸びる、糸の先にあったはずの二人の存在が消えた事に気付き、焦りを覚えた。
「自力で抜け出した? でも彼らにそんな事ができるとは思えないし……一瞬別の誰かの気配を感じた気がしたけど、まさかその人物に襲われたなんて事は……銀時! 高杉くん! 無事なの!?」
名を叫ぶも、返事は無い。何が起こっているのかも分からぬ不安を抱えたまま、柚希は煙が流れ消えるのを待つ事しか出来なかった。
「ばァか、未だ始まったばかりじゃねーか。さっさと下りて来いよ」
「じゃ、遠慮なく」
玉を器用に操り、衝撃を逃がしながらふわりと着地する柚希。人の重みを感じさせない軽やかさに驚嘆しながらも、二人は竹刀を構え直した。
「行くぞ……ッ!」
今度は銀時が先手を打つ。真っ直ぐ正面から突かれた竹刀は、避けてもすぐに軌道を変えて柚希を襲った。その速さは残像が残るほどで、人間離れしている。だがそれすらも柚希は見切っているようだ。
「素早さが増したみたいね、銀時。でも当たらなきゃ意味は無いよ」
避けながら言った柚希は、タイミングを合わせて扇子を振り上げる。放たれた玉が引き寄せられ、銀時に向かって撃ち落とされると、それは高杉の竹刀によって薙ぎ払われた。
全ての玉が軌道を変えるも、柚希は落ち着いたものだ。すぐにまた玉を引き戻し、新たな角度から二人を襲う。暫くの間その攻防は続いていたが、さすがに埒が明かないと思ったのだろう。徐に柚希が動いた。
「そろそろ終わりにしよっか」
そう言った柚希はまるで舞い踊るかのように、回転しながら緩やかに扇子を振り下ろす。それに呼応して糸は玉を運び、寸分違わず二人を襲い、体を縛り上げた。両腕はおろか両足まで拘束され、バランスを崩した二人はそのまま倒れてしまう。
「くそ……ッ!」
必死に抜け出そうともがくも、糸はギリギリと体を締め上げるばかり。
「は〜い、アンタたちの負け」
悠々と近付き、二人の顔の前で仁王立ちになった柚希は、冷たい眼差しで見下ろしながら言った。
「これでハッキリしたでしょ? 私相手に負けちゃうんだから、銀時も高杉くんも、とてもじゃ無いけど天人相手に戦えないわ。既に松下村塾の生徒たちはもうほとんど諦めてる。……それが正解なんだよ」
そしてしゃがみ込み「諦める事ね」と言いながら二人の頭をポンポンと叩く。柚希にとってそれは、ダメ押しのつもりだった。
ーーところが。
「残念ながら、俺たちは諦めるつもりなんざねーよ」
「え?」
銀時が言うと同時に、どこからか飛んで来た丸い物体。柚希が咄嗟に避けるとそれは銀時たちのすぐ側に落ち、煙を吐き出した。
「何!?」
慌てて口元を押さえた柚希だったが、辺りは煙に覆われてしまい何も見えない。しかも扇子から伸びる、糸の先にあったはずの二人の存在が消えた事に気付き、焦りを覚えた。
「自力で抜け出した? でも彼らにそんな事ができるとは思えないし……一瞬別の誰かの気配を感じた気がしたけど、まさかその人物に襲われたなんて事は……銀時! 高杉くん! 無事なの!?」
名を叫ぶも、返事は無い。何が起こっているのかも分からぬ不安を抱えたまま、柚希は煙が流れ消えるのを待つ事しか出来なかった。