第三章 〜夜叉〜(70P)
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「それはそうだけど……二対一で負けたらもう言い訳できないよ?」
そんな銀時に返って来たのは、まるで挑発の如き言葉で。思わず怒りを覚えた銀時の手が、強く竹刀を握る。だが自分のすぐ後ろから感じた殺気によって、何とか冷静さを保つ事が出来た。
「言ってくれるぜ。そこまで勝てる自信があるってんなら……一つ提案がある」
そう言った銀時は、ちらりと横を見た。柚希もその視線を追ったが、特に変わった様子はない。
「あっちに何かあるの?」
「いや、別に。とにかく提案だが、今から戦って俺たちが勝ったら、お前は一切攘夷戦争には関わらないと約束してもらう」
「はあ!? 何よそれ。勝手な事言わないでよね。むしろアンタたちが諦めなさいよ」
「俺たちが負けたらそうするさ。だったら文句ねェだろ」
銀時の目は真剣だ。元々そのつもりでここに合流して来たのだろう。決して曲げられる事は無いであろう強い意志がそこにはあった。
「実戦と思って、お互いどんな手を使っても良い。それとも一対一にするか?」
「私は一人で良いよ。その代わり、手加減はしないからね」
「……分かった」
銀時が一つ頷き、話がまとまる。
正直なところ心に引っかかる物を感じながらも、柚希はそれが何かを見出せないでいた。しかしゆっくりと考えている時間など無い。
「高杉くんも良いのね?」
「ああ」
横から口を挟む事なく、銀時の提案を受け入れた高杉が頷くと、柚希は「そっか」と言いながら持っていた扇子を見た。
先ほどの高杉との戦いで糸を切ってしまった為、そのまま使うには不利だと判断したのだろう。それは懐に戻し、予備として持っていたもう一本の扇子を取り出して広げる。
「いつでも良いよ」
そう言って柚希が扇子を構えたのを合図に、銀時と高杉は顔を見合わせると二手に分かれて走り出した。
「はぁっ!」
柚希を左右に挟み込むようにしながらまず襲い掛かって来たのは高杉。真っ直ぐに腰の辺りを狙ってきた竹刀は、先ほどよりも動きが速い。だが事も無げにかわした柚希はそのまま高杉の懐に入り込み、みぞおちに肘を入れた。
「ぐ……ッ!」
咄嗟にこちらもかわしはしたが、それでも軽く肘は埋まり、一瞬息が止まる。
「こっちがガラ空きだぜ!」
柚希の意識が高杉に向いている隙を狙って、銀時の竹刀が頭上から振り下ろされる。だが寸での所で柚希の体は横に滑り、竹刀の軌道から外れた。どうやら柚希が玉を放ち、すぐ側の木に絡めて体を引き寄せたらしい。太い木の枝に座り、楽しそうに見下ろす姿は無邪気な子供のようではあるが、銀時と高杉には憎たらしいものでしか無かった。
そんな銀時に返って来たのは、まるで挑発の如き言葉で。思わず怒りを覚えた銀時の手が、強く竹刀を握る。だが自分のすぐ後ろから感じた殺気によって、何とか冷静さを保つ事が出来た。
「言ってくれるぜ。そこまで勝てる自信があるってんなら……一つ提案がある」
そう言った銀時は、ちらりと横を見た。柚希もその視線を追ったが、特に変わった様子はない。
「あっちに何かあるの?」
「いや、別に。とにかく提案だが、今から戦って俺たちが勝ったら、お前は一切攘夷戦争には関わらないと約束してもらう」
「はあ!? 何よそれ。勝手な事言わないでよね。むしろアンタたちが諦めなさいよ」
「俺たちが負けたらそうするさ。だったら文句ねェだろ」
銀時の目は真剣だ。元々そのつもりでここに合流して来たのだろう。決して曲げられる事は無いであろう強い意志がそこにはあった。
「実戦と思って、お互いどんな手を使っても良い。それとも一対一にするか?」
「私は一人で良いよ。その代わり、手加減はしないからね」
「……分かった」
銀時が一つ頷き、話がまとまる。
正直なところ心に引っかかる物を感じながらも、柚希はそれが何かを見出せないでいた。しかしゆっくりと考えている時間など無い。
「高杉くんも良いのね?」
「ああ」
横から口を挟む事なく、銀時の提案を受け入れた高杉が頷くと、柚希は「そっか」と言いながら持っていた扇子を見た。
先ほどの高杉との戦いで糸を切ってしまった為、そのまま使うには不利だと判断したのだろう。それは懐に戻し、予備として持っていたもう一本の扇子を取り出して広げる。
「いつでも良いよ」
そう言って柚希が扇子を構えたのを合図に、銀時と高杉は顔を見合わせると二手に分かれて走り出した。
「はぁっ!」
柚希を左右に挟み込むようにしながらまず襲い掛かって来たのは高杉。真っ直ぐに腰の辺りを狙ってきた竹刀は、先ほどよりも動きが速い。だが事も無げにかわした柚希はそのまま高杉の懐に入り込み、みぞおちに肘を入れた。
「ぐ……ッ!」
咄嗟にこちらもかわしはしたが、それでも軽く肘は埋まり、一瞬息が止まる。
「こっちがガラ空きだぜ!」
柚希の意識が高杉に向いている隙を狙って、銀時の竹刀が頭上から振り下ろされる。だが寸での所で柚希の体は横に滑り、竹刀の軌道から外れた。どうやら柚希が玉を放ち、すぐ側の木に絡めて体を引き寄せたらしい。太い木の枝に座り、楽しそうに見下ろす姿は無邪気な子供のようではあるが、銀時と高杉には憎たらしいものでしか無かった。