第三章 〜夜叉〜(70P)
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「へぇ、しっかり見えてるんだね。さすが高杉くん」
そう言いながら一旦全ての玉を引き戻した柚希は、間髪入れず次の攻撃を繰り出す。糸の長さギリギリの距離を保てば竹刀は届かない。そこを計算しての動きだった。
ところが高杉も負けてはいない。玉が放たれるのと同時に前へと飛び出すと、急所を狙ってくる玉のみを叩き落す。残りの玉は腕や足を掠めたが、それらを物ともせず柚希の懐へと滑り込んだ。
「近距離には弱いだろ」
ニヤリと笑いながら竹刀を突き出す高杉に、柚希はどうしたか。
――ゾワリ
高杉の全身を駆け抜けた鋭い冷気。
思わず後ろに飛び退いた高杉が見た物は、あと一歩踏み出せば自分がいたであろう場所に落ちてきた銀の光だった。
目標を見失い、ドスッと鈍い音を立てて地面に突き刺さった柚希の玉は、またすぐに主の元へと引き戻されて行く。
「高杉くんの動きに合わせて 軌道を変えておいたのよ。君が修行している間、私が何もしていないとでも思った?」
口元を扇子で覆い、クスリと笑う柚希。その妖艶な笑みは一瞬高杉の思考を停止させた。だがそれは決して見惚れたからではなく、今まで出会ったことの無い狂気のような物を感じたから。
「柚希お前、今までどうやって修行してきた? 相手は銀時だけじゃねェだろ」
「さぁね。とりあえず強くなれればそれで良いじゃない。さて、このまま続ける? それとも辞める?」
選択権を高杉に与え、答えを待つ柚希。どこまでも余裕のある態度が癇に触ったか、高杉の瞳が鈍く光った。
「これで終わりとは、お前だって思っちゃいるめェ。だが長引かせるつもりもねェよ」
「へぇ。そしたら次が最後の……」と言いかけた柚希が息を飲む。何故なら目の前の高杉は、竹刀を構えるどころか両腕を垂らし、まるで攻撃してくれと言わんばかりの無防備な姿を晒したから。
「今までのは小手調べって事か。無形の位……本気だね、高杉くん」
刀を構えず、相手の攻撃によって自らの動きを決める。それは決して簡単な事ではないが、敢えてその形を取るという事は、腕に相当の覚えがあるのだろう。そして何よりも強い覚悟があるはずだ。
「それじゃぁ私も本気でお相手しなきゃ、失礼ってもんだよね」
お互いの実力を試す程度のつもりでいた柚希だったが、この流れでは無理だろう。覚悟を決めてゆっくりと扇子を肩の位置で構え、高杉との間合いを測る。そして一つ大きく深呼吸すると、まっすぐに高杉の目を見て叫んだ。
そう言いながら一旦全ての玉を引き戻した柚希は、間髪入れず次の攻撃を繰り出す。糸の長さギリギリの距離を保てば竹刀は届かない。そこを計算しての動きだった。
ところが高杉も負けてはいない。玉が放たれるのと同時に前へと飛び出すと、急所を狙ってくる玉のみを叩き落す。残りの玉は腕や足を掠めたが、それらを物ともせず柚希の懐へと滑り込んだ。
「近距離には弱いだろ」
ニヤリと笑いながら竹刀を突き出す高杉に、柚希はどうしたか。
――ゾワリ
高杉の全身を駆け抜けた鋭い冷気。
思わず後ろに飛び退いた高杉が見た物は、あと一歩踏み出せば自分がいたであろう場所に落ちてきた銀の光だった。
目標を見失い、ドスッと鈍い音を立てて地面に突き刺さった柚希の玉は、またすぐに主の元へと引き戻されて行く。
「高杉くんの動きに合わせて 軌道を変えておいたのよ。君が修行している間、私が何もしていないとでも思った?」
口元を扇子で覆い、クスリと笑う柚希。その妖艶な笑みは一瞬高杉の思考を停止させた。だがそれは決して見惚れたからではなく、今まで出会ったことの無い狂気のような物を感じたから。
「柚希お前、今までどうやって修行してきた? 相手は銀時だけじゃねェだろ」
「さぁね。とりあえず強くなれればそれで良いじゃない。さて、このまま続ける? それとも辞める?」
選択権を高杉に与え、答えを待つ柚希。どこまでも余裕のある態度が癇に触ったか、高杉の瞳が鈍く光った。
「これで終わりとは、お前だって思っちゃいるめェ。だが長引かせるつもりもねェよ」
「へぇ。そしたら次が最後の……」と言いかけた柚希が息を飲む。何故なら目の前の高杉は、竹刀を構えるどころか両腕を垂らし、まるで攻撃してくれと言わんばかりの無防備な姿を晒したから。
「今までのは小手調べって事か。無形の位……本気だね、高杉くん」
刀を構えず、相手の攻撃によって自らの動きを決める。それは決して簡単な事ではないが、敢えてその形を取るという事は、腕に相当の覚えがあるのだろう。そして何よりも強い覚悟があるはずだ。
「それじゃぁ私も本気でお相手しなきゃ、失礼ってもんだよね」
お互いの実力を試す程度のつもりでいた柚希だったが、この流れでは無理だろう。覚悟を決めてゆっくりと扇子を肩の位置で構え、高杉との間合いを測る。そして一つ大きく深呼吸すると、まっすぐに高杉の目を見て叫んだ。