第一章 ~再会~(49P)
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歩きながらそれぞれの店の特徴を説明する神楽は、さすがにこの町の住人だと思わせる。とは言えその内容は徹底しており、
「この店はチャーハンと餃子が絶品ネ。しかもお代わり半額ヨ。この洋品店は普通。ここはどんぶり飯をタダで大盛にしてくれるおススメの店ヨ。ここは雑貨屋。この店はこないだ来たけど、おかずの量が少なすぎて物足りないネ。企業努力が足りないヨ。あ、ここ薬局ネ」
と言ったように、メインは食べ物に関する店の説明が主だった。
それでも一通りの店を流し見て、必要最低限の日用品を買い終えた柚希は満足していた。
「ありがとね、神楽ちゃんのおかげで助かったわ。少し疲れたし、そろそろお茶にしよっか」
「やったぁ!」
心の底から嬉しそうにはしゃぐ神楽に、柚希の顔もほころぶ。神楽の勧めもあり、二人はすぐ近くにあった茶店に入ることにした。
そろそろモーニングからランチへと切り替わる時間のためか、客は少なめだ。店の窓際に席を取った二人は、それぞれ好みの品を注文しようとメニューを見る。
「私は……ホットコーヒーとプリンにしようかな。神楽ちゃんは?」
「オレンジジュースと特製ホットケーキ3人前、チョコパフェとバナナパフェ、イチゴショートとモンブラン。とりあえずこんなもんアルか」
「――ちょっと聞きたいんだけど、本当に全部食べられるの? もうお茶受けのデザートを通り越して大食い選手権だよね?」
「何言ってるアルか。こんなのは序の口ネ。もうすぐお昼だし、ランチ前のデザートってやつヨ」
当たり前のように神楽に言われ、柚希は目を丸くした。
夜兎が大食いという話は知っており、実際朝食時の食べっぷりも目の当たりにしている。炊飯器を抱え込んで食べる姿を初めて見たときの衝撃は、筆舌に尽くしがたい。
「銀時がお給料を渡してないのって、実はこれが原因なんじゃ……」
「ん? 何か言ったアルか?」
「ううん、何でもない。じゃぁこれで注文をお願いします」
「承知いたしました」
ウェイターが頬を引きつらせながら厨房へと向かうと、柚希はホッとため息をついた。元気そうに見えるが、あばらにヒビが入ったのは昨日の夜だ。痛み止めのおかげでかなり楽にはなっているものの、顔に出さないだけで体は悲鳴を上げていた。
――ちょっと無理をしちゃったかなぁ。早めに戻って休まないと。
ヒビのあたりを撫でただけでも、鈍い痛みが響く。痛みに弱いわけではないが、決して慣れているわけでもない。同じことをしていても、痛みの有無で体力の削られ方が違う事はよく分かっていた。
「そんで買い物はもう全部終わったアルか?」
手持無沙汰の神楽が、テーブルの上の砂糖をつまんで口に運ぼうとしながら言う。「すぐにデザートが来るからそれはやめなさい」と取り上げながら、柚希は答えた。
「あとは食料品かな。冷蔵庫の中が空っぽだったし、色々と買い込んでおかなきゃね。帰りはタクシーを使えば荷物が多少重くても何とかなるでしょ」
「荷物運びは任せるネ。食べ物ならいくらでも運べるヨ」
「食べ物限定かいな」
神楽の発言や行動は、苦笑いをさせられるものが多い。だが不思議と嫌なものではなく、むしろ手のかかる妹を見ているような気がして、柚希はこの空間を心地よく感じていた。
「ほんと、私がいないとダメなんだなぁ……」
そう言うと柚希は、懐から扇子を取り出した。胸に当てるようにして握りしめ、神楽に優しい眼差しを向ける。
「柚希……?」
不意に、神楽の表情が変わった。
「この店はチャーハンと餃子が絶品ネ。しかもお代わり半額ヨ。この洋品店は普通。ここはどんぶり飯をタダで大盛にしてくれるおススメの店ヨ。ここは雑貨屋。この店はこないだ来たけど、おかずの量が少なすぎて物足りないネ。企業努力が足りないヨ。あ、ここ薬局ネ」
と言ったように、メインは食べ物に関する店の説明が主だった。
それでも一通りの店を流し見て、必要最低限の日用品を買い終えた柚希は満足していた。
「ありがとね、神楽ちゃんのおかげで助かったわ。少し疲れたし、そろそろお茶にしよっか」
「やったぁ!」
心の底から嬉しそうにはしゃぐ神楽に、柚希の顔もほころぶ。神楽の勧めもあり、二人はすぐ近くにあった茶店に入ることにした。
そろそろモーニングからランチへと切り替わる時間のためか、客は少なめだ。店の窓際に席を取った二人は、それぞれ好みの品を注文しようとメニューを見る。
「私は……ホットコーヒーとプリンにしようかな。神楽ちゃんは?」
「オレンジジュースと特製ホットケーキ3人前、チョコパフェとバナナパフェ、イチゴショートとモンブラン。とりあえずこんなもんアルか」
「――ちょっと聞きたいんだけど、本当に全部食べられるの? もうお茶受けのデザートを通り越して大食い選手権だよね?」
「何言ってるアルか。こんなのは序の口ネ。もうすぐお昼だし、ランチ前のデザートってやつヨ」
当たり前のように神楽に言われ、柚希は目を丸くした。
夜兎が大食いという話は知っており、実際朝食時の食べっぷりも目の当たりにしている。炊飯器を抱え込んで食べる姿を初めて見たときの衝撃は、筆舌に尽くしがたい。
「銀時がお給料を渡してないのって、実はこれが原因なんじゃ……」
「ん? 何か言ったアルか?」
「ううん、何でもない。じゃぁこれで注文をお願いします」
「承知いたしました」
ウェイターが頬を引きつらせながら厨房へと向かうと、柚希はホッとため息をついた。元気そうに見えるが、あばらにヒビが入ったのは昨日の夜だ。痛み止めのおかげでかなり楽にはなっているものの、顔に出さないだけで体は悲鳴を上げていた。
――ちょっと無理をしちゃったかなぁ。早めに戻って休まないと。
ヒビのあたりを撫でただけでも、鈍い痛みが響く。痛みに弱いわけではないが、決して慣れているわけでもない。同じことをしていても、痛みの有無で体力の削られ方が違う事はよく分かっていた。
「そんで買い物はもう全部終わったアルか?」
手持無沙汰の神楽が、テーブルの上の砂糖をつまんで口に運ぼうとしながら言う。「すぐにデザートが来るからそれはやめなさい」と取り上げながら、柚希は答えた。
「あとは食料品かな。冷蔵庫の中が空っぽだったし、色々と買い込んでおかなきゃね。帰りはタクシーを使えば荷物が多少重くても何とかなるでしょ」
「荷物運びは任せるネ。食べ物ならいくらでも運べるヨ」
「食べ物限定かいな」
神楽の発言や行動は、苦笑いをさせられるものが多い。だが不思議と嫌なものではなく、むしろ手のかかる妹を見ているような気がして、柚希はこの空間を心地よく感じていた。
「ほんと、私がいないとダメなんだなぁ……」
そう言うと柚希は、懐から扇子を取り出した。胸に当てるようにして握りしめ、神楽に優しい眼差しを向ける。
「柚希……?」
不意に、神楽の表情が変わった。