第三章 〜夜叉〜(70P)
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「よォ柚希。そろそろ一手交えてみねェか?」
いつものように診察を終え、診療所の外を片付けていた柚希は、不意にかけられた声にゆっくりと振り向く。
そこにいたのは高杉。
久しぶりに見た彼は幼さが抜けて精悍な顔立ちとなっており、柚希は感嘆の声をあげた。
「うわぁ、久しぶり! 最後に会ったのはどのくらい前だっけ? 銀時からは相も変わらず『低杉』だって聞いてたけど、いつの間にか私の背を越しちゃうくらい大きくなってたんだねぇ。うんうん、柚希さんは嬉しいよ」
ほんの少しだけ高い位置にある高杉の顔を上目遣いで見ながら、柚希は嬉しそうに頷く。そんな柚希に、高杉は苦笑いをするしかない。
「成長期の来るのが遅かっただけで、これからもっとでかくなるっつーの!……んなこたァどうでも良い。久しぶりにお互いの実力を確認しようぜ」
そう言って高杉は腰の竹刀を抜くと、剣先を柚希に向けた。見れば柄の部分はボロボロになっており、これまで相当激しい修行をしてきたのだろうというのが分かる。線の細かった体には程よく筋肉も付いており、技術だけでなく力も成長している事を予見させた。
「良いけどちょっと待っててくれる? きちんと片付けておかないと、後で色々面倒なのよ」
ここ最近は、銀時ですらほとんど顔を合わせていなかった事もあり、懐かしい感覚にワクワクしてくる。
口元を綻ばせながら、柚希は診療所の前に置いていた診療中の立て看板を片付けようとした。
――ところが。
「よっ……と」
柚希が軽やかに着地したのは、診療所の屋根の上。
シュルシュルと音を立てて柚希の手元に収まったのは、例のごとく扇子の玉だった。
「流石だな。殺気を抑えてたってのに気付かれてたか」
つい今し方まで柚希が立っていた場所には、抉られたような跡がある。それは高杉の竹刀が地面を削った跡だった。
「殺気を抑えてたという割には、本気で私を殺しにかかってなかった? さてはさっきの『低杉』発言を恨んでるな?」
「うるせェよ! 大体この程度でお前がやられるわけねェだろ。っつーか今の動きは何だ? 助走も無くそんな高いとこまで飛べるなんて、重力完全無視かよ」
「ごめんね~。小鳥のように軽いんだ、私」
「以前より肉付きが良くなってるように見えるのは俺の気のせいか?」
「うっ……人が気にしてる事をっ!」
トンっと軽やかに地面へと着地した柚希は、高杉を正面に扇子を構える。
「何だ、やっぱ太ったのか」
「レディに対して太ったって言うな~っ!」
怒鳴りながら振られた柚希の扇子から、高杉へと一直線に向かう複数の玉。小さく手首を返しながら絶妙のバランスで操られたそれは、様々な角度から高杉を狙い撃つ。
「チッ!」
予想以上に数が増えていた事に舌打ちしながらも、冷静に玉を避けていく高杉。間合いに入って来た物から順に竹刀で叩き落していけば、柚希は嬉しそうに目を見開いた。
いつものように診察を終え、診療所の外を片付けていた柚希は、不意にかけられた声にゆっくりと振り向く。
そこにいたのは高杉。
久しぶりに見た彼は幼さが抜けて精悍な顔立ちとなっており、柚希は感嘆の声をあげた。
「うわぁ、久しぶり! 最後に会ったのはどのくらい前だっけ? 銀時からは相も変わらず『低杉』だって聞いてたけど、いつの間にか私の背を越しちゃうくらい大きくなってたんだねぇ。うんうん、柚希さんは嬉しいよ」
ほんの少しだけ高い位置にある高杉の顔を上目遣いで見ながら、柚希は嬉しそうに頷く。そんな柚希に、高杉は苦笑いをするしかない。
「成長期の来るのが遅かっただけで、これからもっとでかくなるっつーの!……んなこたァどうでも良い。久しぶりにお互いの実力を確認しようぜ」
そう言って高杉は腰の竹刀を抜くと、剣先を柚希に向けた。見れば柄の部分はボロボロになっており、これまで相当激しい修行をしてきたのだろうというのが分かる。線の細かった体には程よく筋肉も付いており、技術だけでなく力も成長している事を予見させた。
「良いけどちょっと待っててくれる? きちんと片付けておかないと、後で色々面倒なのよ」
ここ最近は、銀時ですらほとんど顔を合わせていなかった事もあり、懐かしい感覚にワクワクしてくる。
口元を綻ばせながら、柚希は診療所の前に置いていた診療中の立て看板を片付けようとした。
――ところが。
「よっ……と」
柚希が軽やかに着地したのは、診療所の屋根の上。
シュルシュルと音を立てて柚希の手元に収まったのは、例のごとく扇子の玉だった。
「流石だな。殺気を抑えてたってのに気付かれてたか」
つい今し方まで柚希が立っていた場所には、抉られたような跡がある。それは高杉の竹刀が地面を削った跡だった。
「殺気を抑えてたという割には、本気で私を殺しにかかってなかった? さてはさっきの『低杉』発言を恨んでるな?」
「うるせェよ! 大体この程度でお前がやられるわけねェだろ。っつーか今の動きは何だ? 助走も無くそんな高いとこまで飛べるなんて、重力完全無視かよ」
「ごめんね~。小鳥のように軽いんだ、私」
「以前より肉付きが良くなってるように見えるのは俺の気のせいか?」
「うっ……人が気にしてる事をっ!」
トンっと軽やかに地面へと着地した柚希は、高杉を正面に扇子を構える。
「何だ、やっぱ太ったのか」
「レディに対して太ったって言うな~っ!」
怒鳴りながら振られた柚希の扇子から、高杉へと一直線に向かう複数の玉。小さく手首を返しながら絶妙のバランスで操られたそれは、様々な角度から高杉を狙い撃つ。
「チッ!」
予想以上に数が増えていた事に舌打ちしながらも、冷静に玉を避けていく高杉。間合いに入って来た物から順に竹刀で叩き落していけば、柚希は嬉しそうに目を見開いた。