第一章 ~再会~(49P)
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朝食を終えてしばらくした頃、柚希は銀行に足を運んでいた。勿論ボディーガードとして、神楽も一緒である。
出かけたいと伝えた時、昨日の今日だからと銀時には強く反対されたのだが、強引に許可を得たらしい。
「勝手にしやがれ」
と不機嫌に言う銀時を受け流し、柚希と神楽は楽し気に銀行へと向かう。途中かぶき町の説明を受ける柚希は、殊の外ご機嫌だった。
「色んなものがあって、色んな人がいて。面白い町なのね、かぶき町って」
道行く先を、目を輝かせて見ながら柚希が言う。
もうずっと長い事、柚希は春雨が管理する冷たい壁に囲まれたとある施設の中にいた。地球から出た事は無かったが、記憶にある限り目にすることのできる外の景色はいつも、モニターに映された宇宙の景色で。昨日施設を抜け出すことができてから、ようやく人間の暮らす町の景色を目にすることができたのだ。
柚希にとってかぶき町の風景は、これ以上なく素晴らしいものに見えていた。
銀行に着くと、柚希は神楽に待合スペースで待つよう促した。
「さっさと終わらせるヨロシ」と言って手を振る神楽に笑顔を見せると、ATMへと向かう。懐からクレジットカードと、今朝になって枕元に置かれていた扇子を取り出すと、不意に緊張した面持ちへと変わった。
チラリと防犯カメラの位置を確認し、周囲の気配を伺う。流れるように、扇子の手元に付いた小さな飾りを引き出すと、ATMに取り付けた。
本来の物とは違う画面が表示されたのを確認し、指示通りカードを入れて暗証番号と金額を入力すれば、引き出し可能限度額一杯の札が吐き出される。
「この口座が生きててくれて助かったわ」
フゥッとため息をつき、無造作につかんだ札束を懐に入れると、先ほど取り付けた飾りとカードを何事もなかったように回収してATMを離れる。神楽に声をかけて銀行を出ると、柚希は言った。
「ねぇ神楽ちゃん。銀行だけって約束だったんだけど、ちょっと買い物に付き合ってくれるかしら?」
答えを聞こうと横を見れば、いつの間にか手に酢昆布を握って今まさに口に入れようとしている神楽がいる。選んでいる物が物だけに、柚希は思わず吹き出してしまった。
「さっき朝食を食べたばかりだと思ったんだけど、もう小腹が空いたかな? 後でどこかでお茶でもしよっか」
「マジか? でも私お金持ってないアルよ。銀ちゃんから給料もらってないアルからな」
「給料? そう言えば聞いてなかったけど、銀時って何の仕事をしてるのかしら」
自分の過去については聞き出そうとしていながら、銀時についての話を全くしていなかったことに今更ながら気付いた柚希は、せっかくだからと神楽に尋ねた。
「万事屋アルよ。要するに何でも屋ネ。私と新八は従業員アル」
「何でも屋かぁ。あまりイメージできないけど、とりあえず自営業って事ね。でもお給料をもらってないってのは酷いなぁ」
「ダロ? 銀ちゃんは悪徳経営者ネ」
尤もらしくウンウンと頷く神楽がおかしくて、柚希は笑いながら言った。
「きっちり請求しなくちゃね。でも今日のところは私が出すから心配しなくても大丈夫よ。ただその前に私の服やらなんやらを調達したいの。お店の場所も分からないし、一緒に回ってくれると嬉しいんだけど」
「お安い御用ネ。美味い店なら私に任せるヨロシ」
「いや、衣料品を先にお願いします」
ブレない食への欲求を露わにする神楽に笑いが止まらぬまま、二人は商店街へと向かったのだった。
出かけたいと伝えた時、昨日の今日だからと銀時には強く反対されたのだが、強引に許可を得たらしい。
「勝手にしやがれ」
と不機嫌に言う銀時を受け流し、柚希と神楽は楽し気に銀行へと向かう。途中かぶき町の説明を受ける柚希は、殊の外ご機嫌だった。
「色んなものがあって、色んな人がいて。面白い町なのね、かぶき町って」
道行く先を、目を輝かせて見ながら柚希が言う。
もうずっと長い事、柚希は春雨が管理する冷たい壁に囲まれたとある施設の中にいた。地球から出た事は無かったが、記憶にある限り目にすることのできる外の景色はいつも、モニターに映された宇宙の景色で。昨日施設を抜け出すことができてから、ようやく人間の暮らす町の景色を目にすることができたのだ。
柚希にとってかぶき町の風景は、これ以上なく素晴らしいものに見えていた。
銀行に着くと、柚希は神楽に待合スペースで待つよう促した。
「さっさと終わらせるヨロシ」と言って手を振る神楽に笑顔を見せると、ATMへと向かう。懐からクレジットカードと、今朝になって枕元に置かれていた扇子を取り出すと、不意に緊張した面持ちへと変わった。
チラリと防犯カメラの位置を確認し、周囲の気配を伺う。流れるように、扇子の手元に付いた小さな飾りを引き出すと、ATMに取り付けた。
本来の物とは違う画面が表示されたのを確認し、指示通りカードを入れて暗証番号と金額を入力すれば、引き出し可能限度額一杯の札が吐き出される。
「この口座が生きててくれて助かったわ」
フゥッとため息をつき、無造作につかんだ札束を懐に入れると、先ほど取り付けた飾りとカードを何事もなかったように回収してATMを離れる。神楽に声をかけて銀行を出ると、柚希は言った。
「ねぇ神楽ちゃん。銀行だけって約束だったんだけど、ちょっと買い物に付き合ってくれるかしら?」
答えを聞こうと横を見れば、いつの間にか手に酢昆布を握って今まさに口に入れようとしている神楽がいる。選んでいる物が物だけに、柚希は思わず吹き出してしまった。
「さっき朝食を食べたばかりだと思ったんだけど、もう小腹が空いたかな? 後でどこかでお茶でもしよっか」
「マジか? でも私お金持ってないアルよ。銀ちゃんから給料もらってないアルからな」
「給料? そう言えば聞いてなかったけど、銀時って何の仕事をしてるのかしら」
自分の過去については聞き出そうとしていながら、銀時についての話を全くしていなかったことに今更ながら気付いた柚希は、せっかくだからと神楽に尋ねた。
「万事屋アルよ。要するに何でも屋ネ。私と新八は従業員アル」
「何でも屋かぁ。あまりイメージできないけど、とりあえず自営業って事ね。でもお給料をもらってないってのは酷いなぁ」
「ダロ? 銀ちゃんは悪徳経営者ネ」
尤もらしくウンウンと頷く神楽がおかしくて、柚希は笑いながら言った。
「きっちり請求しなくちゃね。でも今日のところは私が出すから心配しなくても大丈夫よ。ただその前に私の服やらなんやらを調達したいの。お店の場所も分からないし、一緒に回ってくれると嬉しいんだけど」
「お安い御用ネ。美味い店なら私に任せるヨロシ」
「いや、衣料品を先にお願いします」
ブレない食への欲求を露わにする神楽に笑いが止まらぬまま、二人は商店街へと向かったのだった。