第三章 〜夜叉〜(70P)
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「だったら今後、万が一にも襲ってこられた時に対処できるように準備しておきゃ良いんだ。その扇子は今は玉を二つ組み込んでいるが、使い手が慣れてくれば中骨の数だけ玉を増やす事が出来る。多分嬢ちゃんなら、練習すりゃすぐに全ての中骨を埋められるだろ。刀と違って軌道が読みにくい上に複数攻撃ってのは、脅威になるぜ」
ニヤリと笑みを見せた畑中は、柚希の頭をぐしゃぐしゃとかき回す。
「護るための力ってのは、その気になりゃいくらでも身につけられるさ。要は本人の心がけ次第だ。まぁそういうわけでまずは怪我を治してから、改めてその扇子を使ってみるんだな。ただし言っておくが、俺がこの扇子をお前にやるのはお前の復讐の為じゃねぇ。一度天導衆に目を付けられたからには、また襲われる可能性が無いとは言えないからな。その時に自分と周りの奴らを護るための術として与えただけだ。そこんとこ肝に銘じておけよ」
「……はい、分かってます」
「本当に分かってんのか? 怪しいもんだが、一先ず置いとくか。おい千代、終わったぞ!」
そう言った畑中は最後にポンポンと柚希の頭を叩くと、玄関の方に視線を向けた。その声と同時にガラリと戸が開き、千代と呼ばれた万屋の女店主が入ってくる。
「随分長い事話してたねェ。この男に襲われたりしなかったかい?」
「ばぁか。誰がこんな乳臭ぇガキを襲うかってんだよ」
呆れたように言う畑中に「どうだかねぇ」と答えた千代は、そっと柚希を抱きしめた。
「こんなに可愛い子だからね。間違いがあっちゃ困るんだよ。で、話は付いたのかい?」
優しく柚希に尋ねた千代がチラリと畑中に視線を送ると、小さな頷きが返ってくる。千代も数回小さく頷くと、腕の中の柚希に語り掛けた。
「ねえ柚希ちゃん、私はアンタが好きだよ。私だけじゃない。この辺りの店の者たちや、診療所に通ってる患者たちだって、アンタの事が大好きさ。その事を忘れないでおくれ」
「おばちゃん……」
「間違っても復讐しようなんて考えちゃいけない。アンタのお父さんもきっと、そんな事望んでないからね。それに、どうせ奈落たちはまた戦場へと戻っていくだろう。こちらから何も手出しさえしなければ……」
「おい、千代!」
不意に咎めるように畑中が口をはさむ。ハッと気付いた千代が息を飲んで柚希を見ると、深く何かを考え込んでいるようだった。
ニヤリと笑みを見せた畑中は、柚希の頭をぐしゃぐしゃとかき回す。
「護るための力ってのは、その気になりゃいくらでも身につけられるさ。要は本人の心がけ次第だ。まぁそういうわけでまずは怪我を治してから、改めてその扇子を使ってみるんだな。ただし言っておくが、俺がこの扇子をお前にやるのはお前の復讐の為じゃねぇ。一度天導衆に目を付けられたからには、また襲われる可能性が無いとは言えないからな。その時に自分と周りの奴らを護るための術として与えただけだ。そこんとこ肝に銘じておけよ」
「……はい、分かってます」
「本当に分かってんのか? 怪しいもんだが、一先ず置いとくか。おい千代、終わったぞ!」
そう言った畑中は最後にポンポンと柚希の頭を叩くと、玄関の方に視線を向けた。その声と同時にガラリと戸が開き、千代と呼ばれた万屋の女店主が入ってくる。
「随分長い事話してたねェ。この男に襲われたりしなかったかい?」
「ばぁか。誰がこんな乳臭ぇガキを襲うかってんだよ」
呆れたように言う畑中に「どうだかねぇ」と答えた千代は、そっと柚希を抱きしめた。
「こんなに可愛い子だからね。間違いがあっちゃ困るんだよ。で、話は付いたのかい?」
優しく柚希に尋ねた千代がチラリと畑中に視線を送ると、小さな頷きが返ってくる。千代も数回小さく頷くと、腕の中の柚希に語り掛けた。
「ねえ柚希ちゃん、私はアンタが好きだよ。私だけじゃない。この辺りの店の者たちや、診療所に通ってる患者たちだって、アンタの事が大好きさ。その事を忘れないでおくれ」
「おばちゃん……」
「間違っても復讐しようなんて考えちゃいけない。アンタのお父さんもきっと、そんな事望んでないからね。それに、どうせ奈落たちはまた戦場へと戻っていくだろう。こちらから何も手出しさえしなければ……」
「おい、千代!」
不意に咎めるように畑中が口をはさむ。ハッと気付いた千代が息を飲んで柚希を見ると、深く何かを考え込んでいるようだった。