第三章 〜夜叉〜(70P)
名前変換はこちら
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ここに来た一番の目的は、扇子を直してもらうため。ずっと続けて来た剣術に限界を感じて、強くなる事をあきらめかけていたのですが、この扇子のお陰でまた希望を見出す事が出来たんです。……そう、これがあれば、私は皆を護れると思ってた。でも現実はそんな簡単な物じゃなくて……」
無駄な動きの全くない柚希の治療を見ていた畑中だったが、その実包帯を持つ手が小さく震えている事に気付き、柚希の顔を見る。その表情は今にも泣き出しそうで、畑中を動揺させた。
「嬢ちゃん……」
「ねえおじさん、正直に答えて。さっきの攻撃は私の全力だったのに、不意打ちにも拘らずあっさりとかわされた。やっぱり今の私は、その天導衆っていうやつの足元にも及ばないくらい弱いって事だよね? シロは自分が弱いから親父様が連れて行かれたって言ったけど、本当は私に力が無くて人質になっちゃったから、親父様は抵抗する事が出来なくて……!」
「ちょ、ちょっと待て嬢ちゃん、一旦落ち着け!」
言葉遣いが崩れてしまっている事も気付かぬほど必死になり、詰め寄ってくる柚希に慌てる畑中。だがすぐに気を取り直すと、柚希の頭をポンポンと優しく叩いて落ち着かせてやった。
「あ~……おじさん、一気に言われても困っちまうんだわ。しかも新しい登場人物まで出てきてるしよ。シロってのはまさか犬じゃねぇよな? とりあえず俺が言えるのは、天導衆……いや、直接手を下したのは奈落か。あいつらは尋常じゃ無く強い。確かに今の嬢ちゃんじゃ勝ち目はねぇな」
畑中の言葉が胸に突き刺さる。
勝ち目がないという事は希望も無いわけで、柚希は絶望感に覆われた。
だが畑中の表情は意外に明るく、柚希とは正反対だ。
「話は最後まで聞けってんだ。今のままじゃ勝ち目はねぇが、それなりに準備をすりゃあ何とかなるかもしれねぇ」
「え……?」
一瞬でパァっと明るくなる柚希の表情に、小さく噴き出す畑中。こういう所は子供なんだなと思いながら、畑中は先ほど取り上げた扇子を柚希に渡した。
「嬢ちゃんが戦った時、二人は倒せたんだろ? って事はまず、この扇子が嬢ちゃんの戦いに合ってるってのは間違いないだろう。だがすぐに捕まっちまったって事は、その時は玉が一つしか装備されていなかった事による単調な攻撃を読まれたからってのと、複数相手の対応が出来なかった事が大きいんじゃねぇか? そもそも奴らは戦うためだけに作られた戦闘員みてぇなモンだからな。相手は最初から戦うつもりで準備してきてるのに、実戦を経験していない嬢ちゃんがいきなり戦って勝てるわけがねぇ」
「だろ?」と言われ、コクリと小さく頷く柚希。
その顔はあまりにも悲しそうで、畑中は困ったような笑顔を見せたがそのまま話を続けた。
無駄な動きの全くない柚希の治療を見ていた畑中だったが、その実包帯を持つ手が小さく震えている事に気付き、柚希の顔を見る。その表情は今にも泣き出しそうで、畑中を動揺させた。
「嬢ちゃん……」
「ねえおじさん、正直に答えて。さっきの攻撃は私の全力だったのに、不意打ちにも拘らずあっさりとかわされた。やっぱり今の私は、その天導衆っていうやつの足元にも及ばないくらい弱いって事だよね? シロは自分が弱いから親父様が連れて行かれたって言ったけど、本当は私に力が無くて人質になっちゃったから、親父様は抵抗する事が出来なくて……!」
「ちょ、ちょっと待て嬢ちゃん、一旦落ち着け!」
言葉遣いが崩れてしまっている事も気付かぬほど必死になり、詰め寄ってくる柚希に慌てる畑中。だがすぐに気を取り直すと、柚希の頭をポンポンと優しく叩いて落ち着かせてやった。
「あ~……おじさん、一気に言われても困っちまうんだわ。しかも新しい登場人物まで出てきてるしよ。シロってのはまさか犬じゃねぇよな? とりあえず俺が言えるのは、天導衆……いや、直接手を下したのは奈落か。あいつらは尋常じゃ無く強い。確かに今の嬢ちゃんじゃ勝ち目はねぇな」
畑中の言葉が胸に突き刺さる。
勝ち目がないという事は希望も無いわけで、柚希は絶望感に覆われた。
だが畑中の表情は意外に明るく、柚希とは正反対だ。
「話は最後まで聞けってんだ。今のままじゃ勝ち目はねぇが、それなりに準備をすりゃあ何とかなるかもしれねぇ」
「え……?」
一瞬でパァっと明るくなる柚希の表情に、小さく噴き出す畑中。こういう所は子供なんだなと思いながら、畑中は先ほど取り上げた扇子を柚希に渡した。
「嬢ちゃんが戦った時、二人は倒せたんだろ? って事はまず、この扇子が嬢ちゃんの戦いに合ってるってのは間違いないだろう。だがすぐに捕まっちまったって事は、その時は玉が一つしか装備されていなかった事による単調な攻撃を読まれたからってのと、複数相手の対応が出来なかった事が大きいんじゃねぇか? そもそも奴らは戦うためだけに作られた戦闘員みてぇなモンだからな。相手は最初から戦うつもりで準備してきてるのに、実戦を経験していない嬢ちゃんがいきなり戦って勝てるわけがねぇ」
「だろ?」と言われ、コクリと小さく頷く柚希。
その顔はあまりにも悲しそうで、畑中は困ったような笑顔を見せたがそのまま話を続けた。