第三章 〜夜叉〜(70P)
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「聞いてるだけじゃふざけているように思えるだろうが、アイツなりに考えての事だ。実際身元を洗われて、身内が見せしめに殺された仲間もいたからな。それを知っていたからこそ、細心の注意を払って家族の存在を隠しながら戦ってたってのに……」
柚希をじっと見つめた畑中は、その向こうに見える面影に語りかけるかのように言った。
「逝っちまった後、俺んトコに嬢ちゃんを寄こすたぁどういう了見なんだろうなぁ」
「畑中さん?」
突然鋭くなった視線に、柚希が戸惑う。だがそこに敵意や殺意が無い事だけは分かっていた為、柚希は畑中の次の言葉を待った。
「親父さんが死んだ後、どんな生き方をしてきたのかは知らねぇが、少なくとも普通の娘とは違うってのは分かる。子供らしからぬ達観した喋りとこの扇子を扱う腕前は、相当の地獄を見てきたか、よほどの才を持った者から教育を受けたんだろう」
言われてコクリと頷く柚希。
それを確認した畑中は、ため息を吐きながら聞いた。
「こうなりゃ単刀直入に聞くぞ。ここに来た目的は何だ? 壊れた扇子を直しに来たってだけじゃねぇよな。親父さんの情報が欲しくてか? 家族を殺された復讐をしようとしてんなら止めておけ」
「いえ、復讐なんて考えてはいませんでした。扇子は直してもらおうと思っていましたが、父についてはもしご存知だったら思い出話でも伺えれば、と」
「そうか、それなら良い。親父さんも、自分の娘を血生臭い戦いの場へと送り出したくはないだろうからな。俺も嬢ちゃんみたいな子供を危険な目になんざ合わせたくは――」
「そう、思ってたんです」
畑中の言葉を遮るように、柚希が呟く。その顔と続く言葉を聞いた瞬間、畑中は目を見開いて言葉を失ってしまった。
「ここに……来るまでは」
柚希が見せているのは、口角だけを上げた笑顔。だがそこに畑中が感じたのは凄惨さであり、強い意志だった。
「家族が殺されてすぐ、私はとある男に拾われました。その男……吉田松陽は師として、そしてもう一人の父として私を慈しみ、育ててくれたんです。ところが昨日、見知らぬ男たちに襲われて……私も扇子で抗いはしたものの二人しか倒す事が出来ず、松陽も連れ去られてしまいました」
そこまで言った柚希は先ほど新たに与えられた扇子を再び開き、構える。その手を軽く横に振ると、扇子から飛び出した玉は真っ直ぐに畑中へと向かっていった。
「おい! 嬢ちゃん!?」
咄嗟に一つ目の玉を避けた畑中だったが、すぐに何かに気付いたように腕を顔の前に出す。そして玉のもう一つを腕に巻きつけるようにして受け止めた。
柚希をじっと見つめた畑中は、その向こうに見える面影に語りかけるかのように言った。
「逝っちまった後、俺んトコに嬢ちゃんを寄こすたぁどういう了見なんだろうなぁ」
「畑中さん?」
突然鋭くなった視線に、柚希が戸惑う。だがそこに敵意や殺意が無い事だけは分かっていた為、柚希は畑中の次の言葉を待った。
「親父さんが死んだ後、どんな生き方をしてきたのかは知らねぇが、少なくとも普通の娘とは違うってのは分かる。子供らしからぬ達観した喋りとこの扇子を扱う腕前は、相当の地獄を見てきたか、よほどの才を持った者から教育を受けたんだろう」
言われてコクリと頷く柚希。
それを確認した畑中は、ため息を吐きながら聞いた。
「こうなりゃ単刀直入に聞くぞ。ここに来た目的は何だ? 壊れた扇子を直しに来たってだけじゃねぇよな。親父さんの情報が欲しくてか? 家族を殺された復讐をしようとしてんなら止めておけ」
「いえ、復讐なんて考えてはいませんでした。扇子は直してもらおうと思っていましたが、父についてはもしご存知だったら思い出話でも伺えれば、と」
「そうか、それなら良い。親父さんも、自分の娘を血生臭い戦いの場へと送り出したくはないだろうからな。俺も嬢ちゃんみたいな子供を危険な目になんざ合わせたくは――」
「そう、思ってたんです」
畑中の言葉を遮るように、柚希が呟く。その顔と続く言葉を聞いた瞬間、畑中は目を見開いて言葉を失ってしまった。
「ここに……来るまでは」
柚希が見せているのは、口角だけを上げた笑顔。だがそこに畑中が感じたのは凄惨さであり、強い意志だった。
「家族が殺されてすぐ、私はとある男に拾われました。その男……吉田松陽は師として、そしてもう一人の父として私を慈しみ、育ててくれたんです。ところが昨日、見知らぬ男たちに襲われて……私も扇子で抗いはしたものの二人しか倒す事が出来ず、松陽も連れ去られてしまいました」
そこまで言った柚希は先ほど新たに与えられた扇子を再び開き、構える。その手を軽く横に振ると、扇子から飛び出した玉は真っ直ぐに畑中へと向かっていった。
「おい! 嬢ちゃん!?」
咄嗟に一つ目の玉を避けた畑中だったが、すぐに何かに気付いたように腕を顔の前に出す。そして玉のもう一つを腕に巻きつけるようにして受け止めた。