第三章 〜夜叉〜(70P)
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「……もう数年前になります。町中という事もあり目撃者も多い中、数名の天人が家を急襲したそうです。攘夷志士への牽制と、逆らう者の末路はこうなるとの見せしめの為でした」
ここに来た時から話すつもりでいた過去の記憶だったが、実際に口にするとやはり胸が痛む。それでも柚希は毅然として話を続けた。
「その時家の中に入らず、外で指示を出していた者がいたらしいのですが、男の手には鳥のような彫り物があったと聞いています」
「鳥の彫り物……八咫烏の紋章か」
「八咫烏? それって確か、物語に出てくる神の遣いの鳥でしたよね?」
「よく知ってんな。だが残念ながらこの八咫烏は神の遣いなんかじゃねぇ。俺たち……攘夷志士を狩る地獄の遣いだ」
チッと舌打ちした畑中は、何かを思い出したかのように大きくため息を吐きながら天井を見上げる。柚希には見えていなかったが、その眼光は炯々としていた。
「成り済ましじゃなきゃ、そいつは天導衆の一味だろうな。八咫烏の紋章があったって事は、天導衆の配下である暗殺部隊、天照院奈落で間違いねぇ」
「天導衆……天照院奈落?」
「ああ。編み笠を被り、錫杖を持った虚無僧のような姿が特徴でな。攘夷戦争では志士達の天敵として恐れられている」
「編み笠……錫杖……!?」
ハッとしたように目を見開いた柚希だったが、天井を見上げたままの畑中は気付いてはいないようだ。
「そういや奈落はともかくとして、何でお前の親父さんは家に帰ってたんだ? 引退する年でもあるまいて」
ふと気付いたように視線を柚希に戻した畑中が聞く。
先ほどの驚きなど無かったように「ああ、それなら」と頷いた柚希は答えた。
「大怪我を負ってしまって、戦線から離脱していたんです。そこそこ回復はしていたのですが、かなりの深手だったので復帰を迷っていた時に……」
「なるほど、そこを狙われたってわけか」
合点がいったと頷いた畑中だったが、その表情は複雑だった。
「なぁ嬢ちゃん、知ってるか? 戦場では名のある者ほど狙われやすい。しかも氏素性が知れればその家族を人質にされちまう事だってある。だからこそ親父さんは、戦場では決して誰にも本名を明かさなかった。わざわざ『大地の荒鷲』なんて名で俺たちに呼ばせたりまでしてよ」
「厨二くせぇ上に、呼びにくいったらありゃしねぇ」とわざと小馬鹿にしたように言う畑中だが、そこには寂しさと懐かしさが複雑に絡み合っているのが見て取れた。
ここに来た時から話すつもりでいた過去の記憶だったが、実際に口にするとやはり胸が痛む。それでも柚希は毅然として話を続けた。
「その時家の中に入らず、外で指示を出していた者がいたらしいのですが、男の手には鳥のような彫り物があったと聞いています」
「鳥の彫り物……八咫烏の紋章か」
「八咫烏? それって確か、物語に出てくる神の遣いの鳥でしたよね?」
「よく知ってんな。だが残念ながらこの八咫烏は神の遣いなんかじゃねぇ。俺たち……攘夷志士を狩る地獄の遣いだ」
チッと舌打ちした畑中は、何かを思い出したかのように大きくため息を吐きながら天井を見上げる。柚希には見えていなかったが、その眼光は炯々としていた。
「成り済ましじゃなきゃ、そいつは天導衆の一味だろうな。八咫烏の紋章があったって事は、天導衆の配下である暗殺部隊、天照院奈落で間違いねぇ」
「天導衆……天照院奈落?」
「ああ。編み笠を被り、錫杖を持った虚無僧のような姿が特徴でな。攘夷戦争では志士達の天敵として恐れられている」
「編み笠……錫杖……!?」
ハッとしたように目を見開いた柚希だったが、天井を見上げたままの畑中は気付いてはいないようだ。
「そういや奈落はともかくとして、何でお前の親父さんは家に帰ってたんだ? 引退する年でもあるまいて」
ふと気付いたように視線を柚希に戻した畑中が聞く。
先ほどの驚きなど無かったように「ああ、それなら」と頷いた柚希は答えた。
「大怪我を負ってしまって、戦線から離脱していたんです。そこそこ回復はしていたのですが、かなりの深手だったので復帰を迷っていた時に……」
「なるほど、そこを狙われたってわけか」
合点がいったと頷いた畑中だったが、その表情は複雑だった。
「なぁ嬢ちゃん、知ってるか? 戦場では名のある者ほど狙われやすい。しかも氏素性が知れればその家族を人質にされちまう事だってある。だからこそ親父さんは、戦場では決して誰にも本名を明かさなかった。わざわざ『大地の荒鷲』なんて名で俺たちに呼ばせたりまでしてよ」
「厨二くせぇ上に、呼びにくいったらありゃしねぇ」とわざと小馬鹿にしたように言う畑中だが、そこには寂しさと懐かしさが複雑に絡み合っているのが見て取れた。