第三章 〜夜叉〜(70P)
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時は駆け足で過ぎていく。
気が付けばいくつかの季節を越えて、子供たちも大きくなっていた。
あの話し合い以降、銀時は緒方診療所の裏方の仕事を手伝いながら、暇さえあれば竹刀を振り続けている。
高杉と桂も毎日時と場所を決めて手合わせをし、成長を感じると銀時の元へとやって来ては試合をしていた。そのお陰か修行を始めた頃に比べて、三人とも格段に強くなっている。
ある日高杉の提案により道場破りに出かけた際には、そこの道場主を簡単に倒してしまった。もうこの近隣では大人たちを含めても、彼らに敵う者はいなくなってしまったようだ。
一方柚希はと言うと、相変わらず診療所で働いていた。
働き始めた頃は、優秀とはいっても未だ助手としての立場だったが、今では緒方と肩を並べる医師として治療を行っている。その実力はお墨付きで、評判を聞きつけた幕府関係者が、真偽の程を確かめに来たほどだった。
しかも医者としての実力だけではなく、柚希の容姿もまた噂の的となっている。松陽と別れた頃はあどけなさの残る少女だったが、今では凛とした美しい大人の女性へと変貌を遂げていた。
お陰で診療所は、柚希目当ての患者が常に殺到している。
その中にはもちろん、あわよくば柚希を自分の物にしようと目を血走らせている若者もいた。しかし相手がどんな条件を出して来ても、柚希は首を縦に振る事は無い。様々な甘言を初め、酷いものでは力尽くで頷かせようとする輩もいたが、診察室を出る頃には皆項垂れて帰って行った。
あまりにも情けない表情で帰っていく男たちが気になり、
「ねぇ柚希ちゃん。しつこい患者にはどうやって対応してるんだい?」
と緒方が尋ねた事がある。すると柚希はニッコリと笑ってこう答えたのだ。
「『私より強い男じゃなきゃイヤ』って言ってるの」
その手には、懐から取り出した扇子が握られている。
ふと思い立って緒方が柚希の診察室を見ると、部屋の隅のゴミ箱に少量の髪の毛と思しき物や、割れたボタンなどが捨てられていた。ただし、床や壁には全く傷は無い。
それを見て、緒方は全てを悟った。
「……また腕が上がったみたいだね……」
「でしょ~? 意外とこういうのも実戦経験になるみたい」
扇子を広げ、キャッキャと嬉しそうに笑いながら言う柚希に小さく引きつりながらも、緒方は「うん、そうだね……」と頷くしかなかった。
その扇子だが、改良に改良を重ねた結果、特殊な作りによって中骨の数だけ玉の数も増えている。初めの内こそ戸惑いはしたものの、今ではそれら全てを自在に操る事が出来るようになっていた。
それは紛う方なき柚希の努力と才能の賜物。だがそれ以上に知り合ったカラクリ師の力も大きかった。
気が付けばいくつかの季節を越えて、子供たちも大きくなっていた。
あの話し合い以降、銀時は緒方診療所の裏方の仕事を手伝いながら、暇さえあれば竹刀を振り続けている。
高杉と桂も毎日時と場所を決めて手合わせをし、成長を感じると銀時の元へとやって来ては試合をしていた。そのお陰か修行を始めた頃に比べて、三人とも格段に強くなっている。
ある日高杉の提案により道場破りに出かけた際には、そこの道場主を簡単に倒してしまった。もうこの近隣では大人たちを含めても、彼らに敵う者はいなくなってしまったようだ。
一方柚希はと言うと、相変わらず診療所で働いていた。
働き始めた頃は、優秀とはいっても未だ助手としての立場だったが、今では緒方と肩を並べる医師として治療を行っている。その実力はお墨付きで、評判を聞きつけた幕府関係者が、真偽の程を確かめに来たほどだった。
しかも医者としての実力だけではなく、柚希の容姿もまた噂の的となっている。松陽と別れた頃はあどけなさの残る少女だったが、今では凛とした美しい大人の女性へと変貌を遂げていた。
お陰で診療所は、柚希目当ての患者が常に殺到している。
その中にはもちろん、あわよくば柚希を自分の物にしようと目を血走らせている若者もいた。しかし相手がどんな条件を出して来ても、柚希は首を縦に振る事は無い。様々な甘言を初め、酷いものでは力尽くで頷かせようとする輩もいたが、診察室を出る頃には皆項垂れて帰って行った。
あまりにも情けない表情で帰っていく男たちが気になり、
「ねぇ柚希ちゃん。しつこい患者にはどうやって対応してるんだい?」
と緒方が尋ねた事がある。すると柚希はニッコリと笑ってこう答えたのだ。
「『私より強い男じゃなきゃイヤ』って言ってるの」
その手には、懐から取り出した扇子が握られている。
ふと思い立って緒方が柚希の診察室を見ると、部屋の隅のゴミ箱に少量の髪の毛と思しき物や、割れたボタンなどが捨てられていた。ただし、床や壁には全く傷は無い。
それを見て、緒方は全てを悟った。
「……また腕が上がったみたいだね……」
「でしょ~? 意外とこういうのも実戦経験になるみたい」
扇子を広げ、キャッキャと嬉しそうに笑いながら言う柚希に小さく引きつりながらも、緒方は「うん、そうだね……」と頷くしかなかった。
その扇子だが、改良に改良を重ねた結果、特殊な作りによって中骨の数だけ玉の数も増えている。初めの内こそ戸惑いはしたものの、今ではそれら全てを自在に操る事が出来るようになっていた。
それは紛う方なき柚希の努力と才能の賜物。だがそれ以上に知り合ったカラクリ師の力も大きかった。
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