第二章 ~松陽~(83P)
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「親父様を取り戻したいのは私も同じよ。でもそれがいかに困難かって事も分かってるから。親父様に貴方たちの事を護れと言われている以上、確実に命を落とすような事をさせたくないの。だから強くなって。せめて今の私を倒せるようになった頃にも親父様を取り戻したいと思っていたら、その時は一緒に攘夷戦争に参戦する事も考えよう」
張っていた糸を緩め、高杉を解放する。
自由になった体を震わせながら、高杉は言った。
「なってやる……絶対に強くなってやるよ。柚希も、あの男も倒せるくらいに強く、な」
「俺たちも負けてはいられないな、銀時。共に頑張ろうではないか」
「はッ! 知るかよ。俺は俺で勝手にやるさ」
肩にポンと置かれた桂の手を振り払って言う銀時の目は、柚希を見つめたままだ。
視線に気付いてまたも笑顔で応える柚希に、銀時が舌打ちする。
――お前一人に背負わせるつもりはねェよ。
言葉にはせず、心でそう柚希に語り掛けた銀時は、高杉達に向かって言った。
「そんじゃ、やる事は決まったし今日はこれで解散な。柚希は診療所の仕事もあるし、強くなったと思ったらまずは俺んトコに来いよ。いつでも相手してやっから」
「ふむ、それもそうだな。まずは小者から叩くのが定石だ」
「ちょっ! 誰が小者だ、誰が!」
「テメェしかいねェだろ、銀時」
「何だとゴルァ! お前らまとめてかかってこいや!」
笑いながら言う桂と高杉に銀時が噛みつく。
いつものじゃれ合いがまたも始まった事で残っていた子供達も笑顔になると、先ほどまでの緊張感は吹き飛んでしまっていた。
「またアンタたちは……もう勝手にして」
呆れたため息を吐き、銀時たちを残して診療所へと戻っていく柚希。
今度は誰も引き留める事は無く、屋内へと入る事の出来た柚希は一人呟く。
「これで少しは時間を稼げる……」
懐に手を差し込むと、扇子を取り出してじっと見つめた。
「強くならなきゃ。もっと……誰にも負けない力と心を持たなくちゃ」
自分に言い聞かせ、扇子を握り締める。
「高杉くんたちは未だ戦う事の本当の意味に気付いてない。倒すのではなく『殺す』という事がどれほど恐ろしいか……死を目の当たりにする怖さを知らないもんね。シロは……覚えてるのかなぁ」
未だ松陽と出会う前、戦場にいた頃の記憶がどれだけ鮮明に残っているかは、本人にしか分からない。
「どちらにせよ、私がアイツらを護らなきゃね。例えどんな手を使おうとも……」
――護ってみせる。
その決意は余程の物なのだろう。まっすぐ前を見つめる柚希の顔は、先日小夜に言われた『夜叉』のように冷たく恐ろしい物だった。
第三章 〜夜叉〜(70P)に続く
張っていた糸を緩め、高杉を解放する。
自由になった体を震わせながら、高杉は言った。
「なってやる……絶対に強くなってやるよ。柚希も、あの男も倒せるくらいに強く、な」
「俺たちも負けてはいられないな、銀時。共に頑張ろうではないか」
「はッ! 知るかよ。俺は俺で勝手にやるさ」
肩にポンと置かれた桂の手を振り払って言う銀時の目は、柚希を見つめたままだ。
視線に気付いてまたも笑顔で応える柚希に、銀時が舌打ちする。
――お前一人に背負わせるつもりはねェよ。
言葉にはせず、心でそう柚希に語り掛けた銀時は、高杉達に向かって言った。
「そんじゃ、やる事は決まったし今日はこれで解散な。柚希は診療所の仕事もあるし、強くなったと思ったらまずは俺んトコに来いよ。いつでも相手してやっから」
「ふむ、それもそうだな。まずは小者から叩くのが定石だ」
「ちょっ! 誰が小者だ、誰が!」
「テメェしかいねェだろ、銀時」
「何だとゴルァ! お前らまとめてかかってこいや!」
笑いながら言う桂と高杉に銀時が噛みつく。
いつものじゃれ合いがまたも始まった事で残っていた子供達も笑顔になると、先ほどまでの緊張感は吹き飛んでしまっていた。
「またアンタたちは……もう勝手にして」
呆れたため息を吐き、銀時たちを残して診療所へと戻っていく柚希。
今度は誰も引き留める事は無く、屋内へと入る事の出来た柚希は一人呟く。
「これで少しは時間を稼げる……」
懐に手を差し込むと、扇子を取り出してじっと見つめた。
「強くならなきゃ。もっと……誰にも負けない力と心を持たなくちゃ」
自分に言い聞かせ、扇子を握り締める。
「高杉くんたちは未だ戦う事の本当の意味に気付いてない。倒すのではなく『殺す』という事がどれほど恐ろしいか……死を目の当たりにする怖さを知らないもんね。シロは……覚えてるのかなぁ」
未だ松陽と出会う前、戦場にいた頃の記憶がどれだけ鮮明に残っているかは、本人にしか分からない。
「どちらにせよ、私がアイツらを護らなきゃね。例えどんな手を使おうとも……」
――護ってみせる。
その決意は余程の物なのだろう。まっすぐ前を見つめる柚希の顔は、先日小夜に言われた『夜叉』のように冷たく恐ろしい物だった。
第三章 〜夜叉〜(70P)に続く
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