第一章 ~再会~(49P)
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とは言え、自分についての話は未だしないと言っていた銀時が、口を滑らせ始めているこの機を逃す手はない。
「要するに過去の私も、銀時をモフモフのシロちゃんと呼んでいたわけね」
「……まぁ、な」
「って事は、私は人格形成に影響のない形で、ごっそりと記憶が抜けてるって事か。せめていつの時点でそうなったかが分かれば、手の打ちようがあるんだけどなぁ」
「少なくとも、攘夷戦争の頃までは……っと、ヤベッ」
そこまで言って慌てる銀時に、柚希の目がキラリと光る。
「ほほ〜。攘夷戦争の頃ね。それでそれで?」
「その手には乗んねーよ。先ずは傷を治してからだっつったろ。銀さん未だ未だハートブレイクですから」
流石にこれ以上は口を滑らせまいと、手で口を塞ぐ銀時。しかし柚希は諦めない。
「ケチ〜! もう一声いっとこうよ。ね?」
「やなこった」
「そこを何とか。お願いしまっす」
柚希が銀時の手を口から放そうと強引に引っ張った。その力は、柚希の指が銀時の手首へと食い込みそうな程に容赦が無い。
「それがお願いしてる態度かっつーの! 痛ェだろうがっ!」
「痛いのが嫌なら全部吐けば良い話でしょ。銀時が喋れば痛みは無くなる。私は情報を得られて喜ぶ。皆幸せになれるじゃない」
「何それどこのヤクザ? 脅しだよね? 間違いなく銀さん、脅迫されてるよねッ?」
素直に手を放さず悪態までついてくる銀時に、柚希の力が更に強まる。
「人聞きの悪いこと言わないでよ。話しやすくするために、手を取ろうとしてるだけでしょうが……っ!」
「イテテテテッ! 本気で手が取れるゥ! むしろ命が取られるゥッ!」
大げさに銀時が騒ぎ、なんとも滑稽な攻防戦を繰り広げていた二人だったが、意外に早くこの戦いは落ち着く事となった。
「朝から何イチャついてるアルか愚民ども! 人の睡眠を邪魔してんじゃねェよ!」
勢いよく開けられた襖の奥から投げられた枕が銀時の顔にヒットし、体ごと吹き飛ばされる。壁に激突して目を回す銀時を、半ば引き気味に見ている柚希はもちろん無傷だ。
「ったく、銀ちゃんはすぐ若い女に手を出すネ。柚希も気を付けるヨロシ」
「……は〜い……」
神楽の言葉だけ聞けば自分を助けてくれようとしたとも取れるが、実際は眠りの邪魔をされた事へのただの八つ当たりにしか過ぎない。銀時にとっては踏んだり蹴ったりの結末だ。
正に目の前で枕一つで大の男が吹っ飛ばされる光景を見てしまった柚希は、
ーーこの子を怒らせるのは絶対やめとこう……
と血の気が引くのを感じながら、肝に命じておくのだった。
「あーあ、無理矢理起こされて運動したら、お腹が減ったアル」
柚希が怯えている事に気付く事もなく、能天気に神楽が言う。
「そ、そういやそうね。ご飯はいつもどうしてるの?」
「朝は銀ちゃんと私で交代制ネ。今朝は私が作る番アル」
張り切って腕まくりをする神楽の姿に、柚希の表情が緩んだ。
ーーこういう姿は、普通の可愛らしい女の子なんだけどなぁ。
先ほどの力技を思い出して小さく身震いするも、すぐに思い直したように頭を振って立ち上がった柚希は、神楽に「じゃぁこれからは私も順番に加えてもらうとして、今日は普段どんな風にしてるのか見せてもらって良いかな?」と提案をした。
これまで基本的に柚希が口にするものは、何らかの形で配給されたものだった。あくまで生きるために必要なエネルギーを補給する為であり、味などはもちろん二の次だ。
よっぽどの事が無い限り作る機会も無く、最低限の知識はあれど、柚希が料理らしい料理をした記憶はほとんど無かった。
「勝手が分からないし、色々と教えてね、神楽ちゃん」
「もちろんアル。じゃぁ早速今朝は私のスペシャルメニューをごちそうするネ」
「それは楽しみ」
「ほっぺた落ちて大変なことになってしまうアルよ」と満面の笑みを見せる神楽が柚希の手を引き、台所へと向かう。その姿はまるで仲の良い姉妹のようで、気絶したフリをしながら様子を伺っていた銀時の口角を上げさせた。
「見守るってのも楽じゃねぇなぁ」
二人の姿が見えなくなると、ぶつけたところを撫でながらゆっくりと体を起こす。何かと葛藤しているのか寂し気な笑みを浮かべる銀時だったが、やがて布団を片付け始めると同時に台所から聞こえてきた楽しそうな笑い声が、ほんの少しだけ銀時の心を軽くしてくれるのだった。
「要するに過去の私も、銀時をモフモフのシロちゃんと呼んでいたわけね」
「……まぁ、な」
「って事は、私は人格形成に影響のない形で、ごっそりと記憶が抜けてるって事か。せめていつの時点でそうなったかが分かれば、手の打ちようがあるんだけどなぁ」
「少なくとも、攘夷戦争の頃までは……っと、ヤベッ」
そこまで言って慌てる銀時に、柚希の目がキラリと光る。
「ほほ〜。攘夷戦争の頃ね。それでそれで?」
「その手には乗んねーよ。先ずは傷を治してからだっつったろ。銀さん未だ未だハートブレイクですから」
流石にこれ以上は口を滑らせまいと、手で口を塞ぐ銀時。しかし柚希は諦めない。
「ケチ〜! もう一声いっとこうよ。ね?」
「やなこった」
「そこを何とか。お願いしまっす」
柚希が銀時の手を口から放そうと強引に引っ張った。その力は、柚希の指が銀時の手首へと食い込みそうな程に容赦が無い。
「それがお願いしてる態度かっつーの! 痛ェだろうがっ!」
「痛いのが嫌なら全部吐けば良い話でしょ。銀時が喋れば痛みは無くなる。私は情報を得られて喜ぶ。皆幸せになれるじゃない」
「何それどこのヤクザ? 脅しだよね? 間違いなく銀さん、脅迫されてるよねッ?」
素直に手を放さず悪態までついてくる銀時に、柚希の力が更に強まる。
「人聞きの悪いこと言わないでよ。話しやすくするために、手を取ろうとしてるだけでしょうが……っ!」
「イテテテテッ! 本気で手が取れるゥ! むしろ命が取られるゥッ!」
大げさに銀時が騒ぎ、なんとも滑稽な攻防戦を繰り広げていた二人だったが、意外に早くこの戦いは落ち着く事となった。
「朝から何イチャついてるアルか愚民ども! 人の睡眠を邪魔してんじゃねェよ!」
勢いよく開けられた襖の奥から投げられた枕が銀時の顔にヒットし、体ごと吹き飛ばされる。壁に激突して目を回す銀時を、半ば引き気味に見ている柚希はもちろん無傷だ。
「ったく、銀ちゃんはすぐ若い女に手を出すネ。柚希も気を付けるヨロシ」
「……は〜い……」
神楽の言葉だけ聞けば自分を助けてくれようとしたとも取れるが、実際は眠りの邪魔をされた事へのただの八つ当たりにしか過ぎない。銀時にとっては踏んだり蹴ったりの結末だ。
正に目の前で枕一つで大の男が吹っ飛ばされる光景を見てしまった柚希は、
ーーこの子を怒らせるのは絶対やめとこう……
と血の気が引くのを感じながら、肝に命じておくのだった。
「あーあ、無理矢理起こされて運動したら、お腹が減ったアル」
柚希が怯えている事に気付く事もなく、能天気に神楽が言う。
「そ、そういやそうね。ご飯はいつもどうしてるの?」
「朝は銀ちゃんと私で交代制ネ。今朝は私が作る番アル」
張り切って腕まくりをする神楽の姿に、柚希の表情が緩んだ。
ーーこういう姿は、普通の可愛らしい女の子なんだけどなぁ。
先ほどの力技を思い出して小さく身震いするも、すぐに思い直したように頭を振って立ち上がった柚希は、神楽に「じゃぁこれからは私も順番に加えてもらうとして、今日は普段どんな風にしてるのか見せてもらって良いかな?」と提案をした。
これまで基本的に柚希が口にするものは、何らかの形で配給されたものだった。あくまで生きるために必要なエネルギーを補給する為であり、味などはもちろん二の次だ。
よっぽどの事が無い限り作る機会も無く、最低限の知識はあれど、柚希が料理らしい料理をした記憶はほとんど無かった。
「勝手が分からないし、色々と教えてね、神楽ちゃん」
「もちろんアル。じゃぁ早速今朝は私のスペシャルメニューをごちそうするネ」
「それは楽しみ」
「ほっぺた落ちて大変なことになってしまうアルよ」と満面の笑みを見せる神楽が柚希の手を引き、台所へと向かう。その姿はまるで仲の良い姉妹のようで、気絶したフリをしながら様子を伺っていた銀時の口角を上げさせた。
「見守るってのも楽じゃねぇなぁ」
二人の姿が見えなくなると、ぶつけたところを撫でながらゆっくりと体を起こす。何かと葛藤しているのか寂し気な笑みを浮かべる銀時だったが、やがて布団を片付け始めると同時に台所から聞こえてきた楽しそうな笑い声が、ほんの少しだけ銀時の心を軽くしてくれるのだった。