第二章 ~松陽~(83P)
名前変換はこちら
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「こんな場所で仲間同士いがみ合うより、先生を迎えに行く事に力を注ぐのが得策だろう」
「テメーはほんっとムカつくな」
「全くだ」
たった今まで敵対していたはずの高杉に銀時が賛同すると、桂の笑みが深まった。
「我々は吉田松陽の名の下に集った同志だ。先生の為なら、例え喧嘩をしながらだとしても同じ道を歩む事が出来るのではないか?」
桂の言葉を受けて、嫌そうに目を合わせた銀時と高杉。だが目的が同じだという事は間違いない。
二人同時にハァっと大きなため息を吐くと、銀時が高杉を見ながら顎で周りの子供たちを指す。その意味に気付いた高杉は小さく口の端を上げると、手に持っていた竹刀を高く掲げて叫んだ。
「松陽先生を取り戻しに行く。松下村塾門下生の底力、見せてやろうぜ!」
高杉の力強い声が、子供たちを奮起する。
「おー!」
銀時と桂も一緒になって竹刀を掲げると、大地が揺れる程に大きな雄たけびが上がった。――が。
「どこへ?」
そんな彼らの勢いに水を差したのは柚希。
冷静に投げかけられた言葉に、一瞬でその場が静かになった。
「勢いだけで動いても、何も出来やしないよ。相手が誰か、何処に行けば親父様がいるのかすら分かっていないこの状況で、どうやって取り戻そうってのよ」
いつもの明るい柚希からは想像もできない冷たい声が紡いだのは、紛れもなく正論だ。
何も言えなくなった子供たちに、柚希は続けた。
「親父様は別れ際、私と銀時に言ったの。自分が戻るまであなた達を護れって。それはつまり、親父様を追うなって事なんだと思う。もっと言ってしまえば私たちが親父様を追ったところで、今の実力程度では返り討ちにあうだけだわ」
「だとしても俺は行くぜ。待つのは性に合わねーし、何より俺は未だ松陽を倒せてねェ。こんな形で勝ち逃げなんてされてたまっかよ」
固まる子供たちの中、唯一反論してきたのは銀時。それに乗っかるように高杉も言う。
「先生をわけの分からない奴らに奪われたままだなんて、松下村塾の門下生として我慢できねェ。松陽先生は必ず取り戻す!」
「……そっか。じゃあ試させて」
「は?」
柚希の言葉に首を傾げた高杉の耳にヒュッと鋭く空気を切り裂く音が聞こえ、咄嗟にその場を飛び離れる。銀時も気付いたのか、同じく瞬時に避けたようだ。
「あっぶねェだろ! 柚希!」
その正体を分かっている銀時が怒鳴る。
何が起こったのか分からない子供たちが銀時の視線を辿ると、その先にいる柚希の手には扇子が握られていた。
「テメーはほんっとムカつくな」
「全くだ」
たった今まで敵対していたはずの高杉に銀時が賛同すると、桂の笑みが深まった。
「我々は吉田松陽の名の下に集った同志だ。先生の為なら、例え喧嘩をしながらだとしても同じ道を歩む事が出来るのではないか?」
桂の言葉を受けて、嫌そうに目を合わせた銀時と高杉。だが目的が同じだという事は間違いない。
二人同時にハァっと大きなため息を吐くと、銀時が高杉を見ながら顎で周りの子供たちを指す。その意味に気付いた高杉は小さく口の端を上げると、手に持っていた竹刀を高く掲げて叫んだ。
「松陽先生を取り戻しに行く。松下村塾門下生の底力、見せてやろうぜ!」
高杉の力強い声が、子供たちを奮起する。
「おー!」
銀時と桂も一緒になって竹刀を掲げると、大地が揺れる程に大きな雄たけびが上がった。――が。
「どこへ?」
そんな彼らの勢いに水を差したのは柚希。
冷静に投げかけられた言葉に、一瞬でその場が静かになった。
「勢いだけで動いても、何も出来やしないよ。相手が誰か、何処に行けば親父様がいるのかすら分かっていないこの状況で、どうやって取り戻そうってのよ」
いつもの明るい柚希からは想像もできない冷たい声が紡いだのは、紛れもなく正論だ。
何も言えなくなった子供たちに、柚希は続けた。
「親父様は別れ際、私と銀時に言ったの。自分が戻るまであなた達を護れって。それはつまり、親父様を追うなって事なんだと思う。もっと言ってしまえば私たちが親父様を追ったところで、今の実力程度では返り討ちにあうだけだわ」
「だとしても俺は行くぜ。待つのは性に合わねーし、何より俺は未だ松陽を倒せてねェ。こんな形で勝ち逃げなんてされてたまっかよ」
固まる子供たちの中、唯一反論してきたのは銀時。それに乗っかるように高杉も言う。
「先生をわけの分からない奴らに奪われたままだなんて、松下村塾の門下生として我慢できねェ。松陽先生は必ず取り戻す!」
「……そっか。じゃあ試させて」
「は?」
柚希の言葉に首を傾げた高杉の耳にヒュッと鋭く空気を切り裂く音が聞こえ、咄嗟にその場を飛び離れる。銀時も気付いたのか、同じく瞬時に避けたようだ。
「あっぶねェだろ! 柚希!」
その正体を分かっている銀時が怒鳴る。
何が起こったのか分からない子供たちが銀時の視線を辿ると、その先にいる柚希の手には扇子が握られていた。