第二章 ~松陽~(83P)
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松下村塾が焼失してから数日。
柚希と銀時は、緒方診療所に入院と言う形で部屋を間借りしていた。
火事を消しにやって来た大人たちは、初めこそ何があったかを尋ねて来たものの、二人の様子に何かを察したのか今の所深くは追及して来ない。
加えて緒方が「二人の面倒を見る」と言い切った事から、安心したのだろう。
松陽が居なくなった事についても、直接聞いてくる者はいなかった。
しかしそれは大人の世界だけの話。
柚希と銀時の傷が落ち着いた頃、松下村塾の門下生たちが診療所までやって来て柚希たちに詰め寄った。
その筆頭が高杉と桂だ。
「一体何があったんだ!」
銀時の胸倉を掴み、怒鳴るように言ったのは高杉。慌てて止めようとする桂も悲痛な顔をしている。
「先生はいなくなり、松下村塾は燃えてしまった。しかもお前たちは傷だらけで……皆心配しているんだ。俺たちにも分かるように説明してくれないか?」
諭すように言った桂は、銀時の後ろで目を伏せ、無言のまま佇んでいる柚希を見つめた。視線に気付いた柚希は、キュッと唇をかみしめたまま何も言おうとはしない。
「おい銀時! これはお前達だけの問題じゃねェ。松下村塾の門下生全員が関係してる事だ。順を追って話しやがれ! あの後……俺たちと別れた後、何が起きたんだ!?」
桂に羽交い絞めにされながらも、高杉は噛みつかんばかりの勢いで銀時に聞いた。
「俺たちにも……分からねェんだよ」
高杉の問いに答えた銀時の声に、いつもの勢いは無い。
「お前たちと別れて松下村塾に戻ったら、怪しい奴らが隠れてやがった。そいつらは先生……いや、松陽を連れて行くために張ってたらしい。どういう関係か、何者かなんて全く分かんねーけど、とりあえず俺たちなんて足元にも及ばないくらいに強かった」
こぶしを握り締めて肩を震わせる銀時は、心底悔しそうで。
松下村塾では敵なしと言っても良い程に強かっただけに、あっさりと打ちのめされた衝撃は大きかった。
「松陽が別れ際に言ったんだ。すぐに皆の所に戻るって。だったら最初からここにいれば良かったのに、抵抗する事無く連れ去られていったのは、弱い俺が側にいたからだ。全部俺のせいなんだよ。だから……俺が責任もって松陽を連れ戻す」
それは、あの松下村塾を覆う炎を見ながらずっと考えていた事。
何もできなかった自分の不甲斐なさと、悔しさが導き出した決意だった。
柚希と銀時は、緒方診療所に入院と言う形で部屋を間借りしていた。
火事を消しにやって来た大人たちは、初めこそ何があったかを尋ねて来たものの、二人の様子に何かを察したのか今の所深くは追及して来ない。
加えて緒方が「二人の面倒を見る」と言い切った事から、安心したのだろう。
松陽が居なくなった事についても、直接聞いてくる者はいなかった。
しかしそれは大人の世界だけの話。
柚希と銀時の傷が落ち着いた頃、松下村塾の門下生たちが診療所までやって来て柚希たちに詰め寄った。
その筆頭が高杉と桂だ。
「一体何があったんだ!」
銀時の胸倉を掴み、怒鳴るように言ったのは高杉。慌てて止めようとする桂も悲痛な顔をしている。
「先生はいなくなり、松下村塾は燃えてしまった。しかもお前たちは傷だらけで……皆心配しているんだ。俺たちにも分かるように説明してくれないか?」
諭すように言った桂は、銀時の後ろで目を伏せ、無言のまま佇んでいる柚希を見つめた。視線に気付いた柚希は、キュッと唇をかみしめたまま何も言おうとはしない。
「おい銀時! これはお前達だけの問題じゃねェ。松下村塾の門下生全員が関係してる事だ。順を追って話しやがれ! あの後……俺たちと別れた後、何が起きたんだ!?」
桂に羽交い絞めにされながらも、高杉は噛みつかんばかりの勢いで銀時に聞いた。
「俺たちにも……分からねェんだよ」
高杉の問いに答えた銀時の声に、いつもの勢いは無い。
「お前たちと別れて松下村塾に戻ったら、怪しい奴らが隠れてやがった。そいつらは先生……いや、松陽を連れて行くために張ってたらしい。どういう関係か、何者かなんて全く分かんねーけど、とりあえず俺たちなんて足元にも及ばないくらいに強かった」
こぶしを握り締めて肩を震わせる銀時は、心底悔しそうで。
松下村塾では敵なしと言っても良い程に強かっただけに、あっさりと打ちのめされた衝撃は大きかった。
「松陽が別れ際に言ったんだ。すぐに皆の所に戻るって。だったら最初からここにいれば良かったのに、抵抗する事無く連れ去られていったのは、弱い俺が側にいたからだ。全部俺のせいなんだよ。だから……俺が責任もって松陽を連れ戻す」
それは、あの松下村塾を覆う炎を見ながらずっと考えていた事。
何もできなかった自分の不甲斐なさと、悔しさが導き出した決意だった。