第二章 ~松陽~(83P)
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「せめてシロの縄をほどければ良いんだけど、外したら取り返しがつかない。かと言って親父様の所まで行くのは不可能。だったら今出来る事は――」
必死に隠していたが、先ほどからずっと震えていた体に叱咤するため、肩の傷口を自ら押す。
「~~っ!」
強い痛みに叫びそうになるのを必死に堪えた柚希は、ゆっくりと扇子を振り上げた。
「あんたなんかに親父様は渡さない……っ!」
勢いよく振り下ろされた扇子から飛び出した玉は、一直線に朧の眉間を目指して飛んでいく。その単調な動きに呆れたようなため息を吐いた朧だったが、次の瞬間大きく上へと飛んだ。しかし初めから動きを読んでいた柚希はすぐに玉の軌道を変えて的確に朧を狙う。
まるで玉そのものに意思があるように自在に操る柚希は、松陽と銀時を驚かせた。
だが所詮はおもちゃであり、しかも壊れかけている。
「お遊びはここまでだ」
そう言った朧は自分から腕に糸を絡めると、勢いよく引き寄せた。
「あっ!」
手を放せば良かったのに、取られまいと扇子を強く握ってしまった事で朧の腕に捕らわれてしまったが、後の祭りだ。
「柚希!」
銀時が叫んでも、逃げる術はもう完全に失われていた。
朧の合図で松陽と銀時、柚希は松下村塾の門の外へと連れ出される。と同時に後ろから流れて来たのは、何かが焦げる臭いとパチパチと物が燃える音。それが全て松下村塾からの物だと気付くのに、時間はいらなかった。
「そんな……」
門の前で呆然と佇む柚希と銀時。
先ほど姿を消した男たちが仕掛けたのだろうか。あちこちから小さな爆発音や、油の臭いが流れてくる中、瞬く間に建物は炎に包まれた。
「許さねェ……」
銀時が憤怒の表情で言う。
「あいつだけはぜってェ許さねェ!」
後ろ手に縛られたまま体当たりをするように朧へと走り向かう銀時。あわよくば捕まっている柚希に絡められた腕が外れればとも思ったが、それを朧が甘んじて受け止めるはずも無く。側にいた男たちが錫杖で遮り、銀時の膝を付かせた。
「シロ!」
銀時を助けようと、首に巻かれた朧の腕を掴む。びくともしない太い腕は、どれほど過酷な鍛錬を行ってきたかが分かるほどに鍛えられていた。
暴れる柚希を押さえつけるため、朧が腕に力を入れる。首を締めあげられ呼吸が出来ない中でも柚希は必死に叫んだ。
必死に隠していたが、先ほどからずっと震えていた体に叱咤するため、肩の傷口を自ら押す。
「~~っ!」
強い痛みに叫びそうになるのを必死に堪えた柚希は、ゆっくりと扇子を振り上げた。
「あんたなんかに親父様は渡さない……っ!」
勢いよく振り下ろされた扇子から飛び出した玉は、一直線に朧の眉間を目指して飛んでいく。その単調な動きに呆れたようなため息を吐いた朧だったが、次の瞬間大きく上へと飛んだ。しかし初めから動きを読んでいた柚希はすぐに玉の軌道を変えて的確に朧を狙う。
まるで玉そのものに意思があるように自在に操る柚希は、松陽と銀時を驚かせた。
だが所詮はおもちゃであり、しかも壊れかけている。
「お遊びはここまでだ」
そう言った朧は自分から腕に糸を絡めると、勢いよく引き寄せた。
「あっ!」
手を放せば良かったのに、取られまいと扇子を強く握ってしまった事で朧の腕に捕らわれてしまったが、後の祭りだ。
「柚希!」
銀時が叫んでも、逃げる術はもう完全に失われていた。
朧の合図で松陽と銀時、柚希は松下村塾の門の外へと連れ出される。と同時に後ろから流れて来たのは、何かが焦げる臭いとパチパチと物が燃える音。それが全て松下村塾からの物だと気付くのに、時間はいらなかった。
「そんな……」
門の前で呆然と佇む柚希と銀時。
先ほど姿を消した男たちが仕掛けたのだろうか。あちこちから小さな爆発音や、油の臭いが流れてくる中、瞬く間に建物は炎に包まれた。
「許さねェ……」
銀時が憤怒の表情で言う。
「あいつだけはぜってェ許さねェ!」
後ろ手に縛られたまま体当たりをするように朧へと走り向かう銀時。あわよくば捕まっている柚希に絡められた腕が外れればとも思ったが、それを朧が甘んじて受け止めるはずも無く。側にいた男たちが錫杖で遮り、銀時の膝を付かせた。
「シロ!」
銀時を助けようと、首に巻かれた朧の腕を掴む。びくともしない太い腕は、どれほど過酷な鍛錬を行ってきたかが分かるほどに鍛えられていた。
暴れる柚希を押さえつけるため、朧が腕に力を入れる。首を締めあげられ呼吸が出来ない中でも柚希は必死に叫んだ。