第二章 ~松陽~(83P)
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「じゃああんたは親父様の何を知ってるっていうのよ!」
銀時と並んで松陽を守るように立った柚希は、朧を怒鳴りつける。そして現状を理解できていない銀時に、簡単な説明をしてやった。
「シロ、あいつらは親父様をどこかに連れて行こうとしてる。目的は知らないけど、親父様が抵抗できないように私を人質にしようとまでした卑怯な奴らなの」
「すげー危ない奴らじゃねェか。借金の取り立てか何かか?」
「銀時……私はこれでも借金はした事ありませんからね。そもそも私ってそんなに困ってそうに見えますかぁ?」
「少なくとも、高級プリンが特別な日にしか買えない程度には困ってるだろ」
「いやそれ基準がおかしいから! もう、シロも親父様も真剣にやってよね!」
こんな状況でもいつもの調子を忘れない子供たちがおかしくて、松陽の顔に笑みが浮かぶ。心から愛おしいと思う気持ちが伝わってくるその表情に、朧が奥歯を強く噛み締めていた事を柚希たちは気付いていなかった。
「茶番は終いだ、吉田松陽。我々と共に来てもらおう」
朧が言うと同時に、複数の男たちが柚希たちを取り囲む。
「分かってますよ。何度も言っているじゃないですか、私は逃げも隠れもしませんから」
「ダメだよ親父様! 行っちゃいけない!」
朧の元へと歩み寄ろうとする松陽を引き留めたのは柚希。絶対に松陽は渡さないと朧を睨みつけながら、手に持っていたままの扇子を構えた。
「ねぇシロ、親父様と一緒に逃げてくれる? 私はここで足止めをしてみるから」
「はァ!? 何言ってんだお前。んな事できるわけねーだろ」
「だってこのままじゃ親父様が連れて行かれちゃう!」
「だったら俺が足止めするから、お前が先生と逃げろ。少なくとも俺は怪我してねェ分、お前より有利だ」
「でも……」
「良いから逃げろ!」
「あ、シロッ!」
柚希が引き留めるより早く、銀時は駆け出していた。
一番近くにいた男に体当たりをして弾き飛ばすと、持ち主の手から離れた錫杖を掴む。初めて扱うにも関わらず、器用に敵を捉えながら振り回せば、まず一人が地に伏した。
「早く行け!」
銀時の叫びに、松陽の腕を掴んだ柚希が駆け出そうとする。しかし肝心の松陽が動こうとはしないため、柚希は焦った。
「親父様! シロが時間を稼いでいる間に!」
「私は行けません。いくら銀時でも彼らには……」
「その通りだ」
松陽の言葉に被せられた朧の声。
それと同時に、吹き飛ばされた銀時が壁に激突する鈍い音が聞こえた。
家の壁が崩れ落ちるほどの衝撃が銀時を襲い、息が止まる。たまらず咳き込んだ所へ容赦のない攻撃を加えたのは、朧だった。
銀時と並んで松陽を守るように立った柚希は、朧を怒鳴りつける。そして現状を理解できていない銀時に、簡単な説明をしてやった。
「シロ、あいつらは親父様をどこかに連れて行こうとしてる。目的は知らないけど、親父様が抵抗できないように私を人質にしようとまでした卑怯な奴らなの」
「すげー危ない奴らじゃねェか。借金の取り立てか何かか?」
「銀時……私はこれでも借金はした事ありませんからね。そもそも私ってそんなに困ってそうに見えますかぁ?」
「少なくとも、高級プリンが特別な日にしか買えない程度には困ってるだろ」
「いやそれ基準がおかしいから! もう、シロも親父様も真剣にやってよね!」
こんな状況でもいつもの調子を忘れない子供たちがおかしくて、松陽の顔に笑みが浮かぶ。心から愛おしいと思う気持ちが伝わってくるその表情に、朧が奥歯を強く噛み締めていた事を柚希たちは気付いていなかった。
「茶番は終いだ、吉田松陽。我々と共に来てもらおう」
朧が言うと同時に、複数の男たちが柚希たちを取り囲む。
「分かってますよ。何度も言っているじゃないですか、私は逃げも隠れもしませんから」
「ダメだよ親父様! 行っちゃいけない!」
朧の元へと歩み寄ろうとする松陽を引き留めたのは柚希。絶対に松陽は渡さないと朧を睨みつけながら、手に持っていたままの扇子を構えた。
「ねぇシロ、親父様と一緒に逃げてくれる? 私はここで足止めをしてみるから」
「はァ!? 何言ってんだお前。んな事できるわけねーだろ」
「だってこのままじゃ親父様が連れて行かれちゃう!」
「だったら俺が足止めするから、お前が先生と逃げろ。少なくとも俺は怪我してねェ分、お前より有利だ」
「でも……」
「良いから逃げろ!」
「あ、シロッ!」
柚希が引き留めるより早く、銀時は駆け出していた。
一番近くにいた男に体当たりをして弾き飛ばすと、持ち主の手から離れた錫杖を掴む。初めて扱うにも関わらず、器用に敵を捉えながら振り回せば、まず一人が地に伏した。
「早く行け!」
銀時の叫びに、松陽の腕を掴んだ柚希が駆け出そうとする。しかし肝心の松陽が動こうとはしないため、柚希は焦った。
「親父様! シロが時間を稼いでいる間に!」
「私は行けません。いくら銀時でも彼らには……」
「その通りだ」
松陽の言葉に被せられた朧の声。
それと同時に、吹き飛ばされた銀時が壁に激突する鈍い音が聞こえた。
家の壁が崩れ落ちるほどの衝撃が銀時を襲い、息が止まる。たまらず咳き込んだ所へ容赦のない攻撃を加えたのは、朧だった。