第二章 ~松陽~(83P)
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ーーこの気配……。
ビリビリと刺すような空気を感じ、体が硬直する。それは、過去に一度だけ銀時と間違えた青年の気配だと瞬時に理解した柚希は勢い良く振り向いた。
案の定、銀時たちが向かったのとは正反対の方向に、忘れていたあの時の記憶を呼び覚ます後ろ姿が見える。
直感的に見つかってはいけない気がして、柚希は咄嗟に門の陰へと隠れた。
「あの人……何でこんな場所に?」
松下村塾があるのは街外れであり、何か用事でも無い限りこんな場所へと来るのは珍しい。しかもあの青年が纏っているのは殺気。それも試合などで感じる類の物ではなく、本当に人を殺しかねない殺意が込められているようだ。
「この間会った時とは別人みたい。何だかやばい感じだし、怪しい人がいるって親父様に伝えておいた方が良いよね……」
もう一度青年の姿を確かめておこうと、こっそり門から顔を覗かせる。ところが視線の先にはもう青年はいなかった。
「嘘っ、また消えた? あの人ってば瞬間移動でもできちゃうわけ?」
驚いて道に飛び出した柚希は目を凝らして道の先を見たが、やはり人影は無い。
「実は幽霊とかの類だったりして……元々ここは廃屋だったし、変なのを呼び寄せちゃ……」
それ以上の言葉は紡げなかった。
頭で考えるより早く体が反応した柚希は、瞬時に前転の要領で前に飛ぶ。着地点で止まる事をせず、少しでもこの場から離れようと走り出した柚希だったがその努力は虚しく、ほんの数メートル進んだところで腕を掴まれてしまった。
「痛……っ!」
「お前はあの時の……」
柚希の腕を後ろ手にねじり上げながら言ったのは、先ほど見失ったあの青年。いつの間に移動したのか、柚希の背後に迫っていたようだ。
「放してよ! 痛いってば!」
ジタバタする柚希に冷たい視線を向けた青年は少し何かを考えていたようだったが、フッと小さく溜息を吐くと、突き飛ばすように柚希の腕を離した。よろけて膝をついた柚希を上から見下ろしながら青年は言う。
「お前はここの門下生か?」
目の前の相手が女子供の類だからか、先ほどまで感じていた殺気は消えていたものの、逆にいつでもお前の命を奪えると言われているように感じられて、柚希は小さく身震いをした。
「……だったら何よ」
「今はどのくらいの数がいる?」
「数え切れないほどいるわよ。興味があるなら親父様……塾長に伝えておくけど」
「親父様……?」
『親父様』という言葉に青年の顔が一瞬動揺したのを、柚希は見逃さない。この怪しい青年が何者かを知る手掛かりになるかもしれないと踏んだ柚希は、カマをかけてみる事にした。
ビリビリと刺すような空気を感じ、体が硬直する。それは、過去に一度だけ銀時と間違えた青年の気配だと瞬時に理解した柚希は勢い良く振り向いた。
案の定、銀時たちが向かったのとは正反対の方向に、忘れていたあの時の記憶を呼び覚ます後ろ姿が見える。
直感的に見つかってはいけない気がして、柚希は咄嗟に門の陰へと隠れた。
「あの人……何でこんな場所に?」
松下村塾があるのは街外れであり、何か用事でも無い限りこんな場所へと来るのは珍しい。しかもあの青年が纏っているのは殺気。それも試合などで感じる類の物ではなく、本当に人を殺しかねない殺意が込められているようだ。
「この間会った時とは別人みたい。何だかやばい感じだし、怪しい人がいるって親父様に伝えておいた方が良いよね……」
もう一度青年の姿を確かめておこうと、こっそり門から顔を覗かせる。ところが視線の先にはもう青年はいなかった。
「嘘っ、また消えた? あの人ってば瞬間移動でもできちゃうわけ?」
驚いて道に飛び出した柚希は目を凝らして道の先を見たが、やはり人影は無い。
「実は幽霊とかの類だったりして……元々ここは廃屋だったし、変なのを呼び寄せちゃ……」
それ以上の言葉は紡げなかった。
頭で考えるより早く体が反応した柚希は、瞬時に前転の要領で前に飛ぶ。着地点で止まる事をせず、少しでもこの場から離れようと走り出した柚希だったがその努力は虚しく、ほんの数メートル進んだところで腕を掴まれてしまった。
「痛……っ!」
「お前はあの時の……」
柚希の腕を後ろ手にねじり上げながら言ったのは、先ほど見失ったあの青年。いつの間に移動したのか、柚希の背後に迫っていたようだ。
「放してよ! 痛いってば!」
ジタバタする柚希に冷たい視線を向けた青年は少し何かを考えていたようだったが、フッと小さく溜息を吐くと、突き飛ばすように柚希の腕を離した。よろけて膝をついた柚希を上から見下ろしながら青年は言う。
「お前はここの門下生か?」
目の前の相手が女子供の類だからか、先ほどまで感じていた殺気は消えていたものの、逆にいつでもお前の命を奪えると言われているように感じられて、柚希は小さく身震いをした。
「……だったら何よ」
「今はどのくらいの数がいる?」
「数え切れないほどいるわよ。興味があるなら親父様……塾長に伝えておくけど」
「親父様……?」
『親父様』という言葉に青年の顔が一瞬動揺したのを、柚希は見逃さない。この怪しい青年が何者かを知る手掛かりになるかもしれないと踏んだ柚希は、カマをかけてみる事にした。