第二章 ~松陽~(83P)
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カメラを買ってからというもの、柚希は暇さえあればシャッターを切っていた。
最初は銀時や松陽、松下村塾周辺の植物などとりあえず目に映る身近な物を撮っていたが、次第に慣れてくると撮りたいテーマが見えてくる。
数日経った頃には、松下村塾の記録を作りたいと考えるようになり、建物や授業風景、その時々の教え子たちの集合写真などを撮り始めた。
初めの頃は緊張していた教え子たちも、回を重ねれば撮られ慣れていく。自然な表情で写る彼らはとても生き生きとしており、ますます良い写真が撮れるようになっていった。
そんな毎日を過ごし、いくつかの季節を経たある日の事。
完全に行きつけとなった万屋へと今日も足を運んでいた柚希に、店主が声をかけてきた。
「いらっしゃい柚希ちゃん、今日もフィルムかい?」
「うん、いけないとは思いながらも、ついつい使っちゃうんだよね。おばちゃんが安くしてくれるから助かっちゃう」
カメラを買って以降、仲良くなった女店主は、柚希を娘のように可愛がっている。どんな時でも愛想よく、気遣いの出来る柚希はこの万屋に限らず、商店街で関わりを持った店の者たちにも愛される存在だった。
「そんじゃ、いつも通りの奴と……」
店主は棚から未開封のフィルムの入った箱を取り出し、柚希の前に置く。いつもはそのまま清算するのだが、今回は何故かもう一つ箱の上に置かれた物があった。
「これも、ね」
「……何これ?」
柚希が不思議そうに手を伸ばす。それは一本の扇子だった。
「私、こんなのお願いしてたっけ?」
「いや、これはおまけだよ。うちは万屋だろ? だから時々商品を売り込みに来る人間もいるんだけど、今回ちょっと変わった人が来てねぇ。カラクリおもちゃを置いて欲しいと言われてるのさ」
「って事は、これがそうなの?」
「ああ、そうなんだよ。とりあえず一通り使ってみて欲しいと見本をもらっていて、その中の一つってわけさ。これの何がどうなっているのかは知らないけど、あんたも遊んでみてくれないかい? 物自体はあげるから、何日か遊んでみて感想を教えてくれると助かるよ」
「へぇ……面白そうだし、遠慮なくもらってくね。ありがとうおばちゃん」
そう言って柚希は笑顔で扇子を受け取り、店を後にする。そのまま寄り道をせずまっすぐに松下村塾へと戻ると、早速扇子を手にしてみた。
まずは普通に開閉をしたり扇いでみるが、特に変わったところは無い。
「カラクリって言うからには、何か仕掛けがあるんだろうけど……」
見た目も一般的な扇子だが、普通の物よりは少々重い代物だ。
「手元より先端の方に重みがあるから、何か入ってるのかもなぁ。扇ぐ時に振りやすいようおもりが入ってるとか? でもそれって凄く無駄な気がする」
改めて開いた扇子で軽く扇ぐも、特に変化は無く。それならすこし強い風でも起こしてみようと、何の気なしに正面を大きく扇いだ時だった。
最初は銀時や松陽、松下村塾周辺の植物などとりあえず目に映る身近な物を撮っていたが、次第に慣れてくると撮りたいテーマが見えてくる。
数日経った頃には、松下村塾の記録を作りたいと考えるようになり、建物や授業風景、その時々の教え子たちの集合写真などを撮り始めた。
初めの頃は緊張していた教え子たちも、回を重ねれば撮られ慣れていく。自然な表情で写る彼らはとても生き生きとしており、ますます良い写真が撮れるようになっていった。
そんな毎日を過ごし、いくつかの季節を経たある日の事。
完全に行きつけとなった万屋へと今日も足を運んでいた柚希に、店主が声をかけてきた。
「いらっしゃい柚希ちゃん、今日もフィルムかい?」
「うん、いけないとは思いながらも、ついつい使っちゃうんだよね。おばちゃんが安くしてくれるから助かっちゃう」
カメラを買って以降、仲良くなった女店主は、柚希を娘のように可愛がっている。どんな時でも愛想よく、気遣いの出来る柚希はこの万屋に限らず、商店街で関わりを持った店の者たちにも愛される存在だった。
「そんじゃ、いつも通りの奴と……」
店主は棚から未開封のフィルムの入った箱を取り出し、柚希の前に置く。いつもはそのまま清算するのだが、今回は何故かもう一つ箱の上に置かれた物があった。
「これも、ね」
「……何これ?」
柚希が不思議そうに手を伸ばす。それは一本の扇子だった。
「私、こんなのお願いしてたっけ?」
「いや、これはおまけだよ。うちは万屋だろ? だから時々商品を売り込みに来る人間もいるんだけど、今回ちょっと変わった人が来てねぇ。カラクリおもちゃを置いて欲しいと言われてるのさ」
「って事は、これがそうなの?」
「ああ、そうなんだよ。とりあえず一通り使ってみて欲しいと見本をもらっていて、その中の一つってわけさ。これの何がどうなっているのかは知らないけど、あんたも遊んでみてくれないかい? 物自体はあげるから、何日か遊んでみて感想を教えてくれると助かるよ」
「へぇ……面白そうだし、遠慮なくもらってくね。ありがとうおばちゃん」
そう言って柚希は笑顔で扇子を受け取り、店を後にする。そのまま寄り道をせずまっすぐに松下村塾へと戻ると、早速扇子を手にしてみた。
まずは普通に開閉をしたり扇いでみるが、特に変わったところは無い。
「カラクリって言うからには、何か仕掛けがあるんだろうけど……」
見た目も一般的な扇子だが、普通の物よりは少々重い代物だ。
「手元より先端の方に重みがあるから、何か入ってるのかもなぁ。扇ぐ時に振りやすいようおもりが入ってるとか? でもそれって凄く無駄な気がする」
改めて開いた扇子で軽く扇ぐも、特に変化は無く。それならすこし強い風でも起こしてみようと、何の気なしに正面を大きく扇いだ時だった。