第二章 ~松陽~(83P)
名前変換はこちら
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あ……れ? シロじゃない……?」
銀時と確信しての行動だった為、さすがの柚希も混乱してしまう。
「ご、ごめんなさいっ! 知り合いが隠れてると思ってたから……!」
恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら必死に頭を下げる柚希に、青年は言った。
「気にする必要は無い」
銀時よりも少し高いくらいの背丈だろうか。柚希が見上げた先から青年が向けてくるのは、感情の無い冷たい眼差し。だが先ほどの声は不思議と柔らかく、怖さは感じられなかった。
「本当にごめんなさい。……でもやっぱり間違えてもおかしくないかもなぁ」
「何の話だ?」
謝っている割には反省をしていないような発言に、青年が眉を顰める。傍から見れば怒っているように見えるが、それでも柚希には全く恐怖感は生まれないようだ。
「何て言うか、雰囲気がシロ……あ、私の弟分なんですけど、彼に似てるんです。でもそれだけじゃなくて、何て言うか……う~ん……」
じっと青年を見つめながら首を傾げて考え込む柚希。返されるのは鋭い眼差しでありながらも、その奥に潜む別の感情は柚希に何かを感じさせたようだ。
「そう、懐かしい感じって言うのかなぁ。何でだろう。初めて会ったのに懐かしくて……少し寂しい気持ちもあって……」
普段診療所で様々な人間との交流に慣れているからだろうか。全く物怖じしない柚希は青年を見つめ続ける。そんな柚希に戸惑ったのか青年は意思を込めて柚希を睨みかけたが、すぐにフッと目を伏せると何も言わずに踵を返した。
「あの……っ」
怒らせてしまったかと慌てた柚希が青年の袖を掴む。
「私、失礼な事を言っちゃいました?」
心配そうに見上げる柚希に、もう青年の視線は向けられない。しっかりと掴んでいたはずの袖が柚希の手の中から消え、驚いて自らの手を見た柚希が再び顔を上げた時には、青年の姿はどこにも無かった。
驚いてキョロキョロと辺りを見回してみても、青年はまるで煙のように消えてしまっており気配すら残ってはいない。
「……あの人は一体……?」
つい今しがたまで見つめていたはずの『癖のある白髪』と、口にはしないが気にはなっていた『顔の傷』を持っていた青年を思い返す。
「今考えると、シロよりも親父様に近かったかもしれないなぁ。何がって言われたら分かんないけど……」
ポツリと呟いた柚希の言葉は、誰に届く事も無い。だがそこにとても重要な事柄が含まれていた事に柚希が気付くのは、未だもう少し先の事だった。
銀時と確信しての行動だった為、さすがの柚希も混乱してしまう。
「ご、ごめんなさいっ! 知り合いが隠れてると思ってたから……!」
恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら必死に頭を下げる柚希に、青年は言った。
「気にする必要は無い」
銀時よりも少し高いくらいの背丈だろうか。柚希が見上げた先から青年が向けてくるのは、感情の無い冷たい眼差し。だが先ほどの声は不思議と柔らかく、怖さは感じられなかった。
「本当にごめんなさい。……でもやっぱり間違えてもおかしくないかもなぁ」
「何の話だ?」
謝っている割には反省をしていないような発言に、青年が眉を顰める。傍から見れば怒っているように見えるが、それでも柚希には全く恐怖感は生まれないようだ。
「何て言うか、雰囲気がシロ……あ、私の弟分なんですけど、彼に似てるんです。でもそれだけじゃなくて、何て言うか……う~ん……」
じっと青年を見つめながら首を傾げて考え込む柚希。返されるのは鋭い眼差しでありながらも、その奥に潜む別の感情は柚希に何かを感じさせたようだ。
「そう、懐かしい感じって言うのかなぁ。何でだろう。初めて会ったのに懐かしくて……少し寂しい気持ちもあって……」
普段診療所で様々な人間との交流に慣れているからだろうか。全く物怖じしない柚希は青年を見つめ続ける。そんな柚希に戸惑ったのか青年は意思を込めて柚希を睨みかけたが、すぐにフッと目を伏せると何も言わずに踵を返した。
「あの……っ」
怒らせてしまったかと慌てた柚希が青年の袖を掴む。
「私、失礼な事を言っちゃいました?」
心配そうに見上げる柚希に、もう青年の視線は向けられない。しっかりと掴んでいたはずの袖が柚希の手の中から消え、驚いて自らの手を見た柚希が再び顔を上げた時には、青年の姿はどこにも無かった。
驚いてキョロキョロと辺りを見回してみても、青年はまるで煙のように消えてしまっており気配すら残ってはいない。
「……あの人は一体……?」
つい今しがたまで見つめていたはずの『癖のある白髪』と、口にはしないが気にはなっていた『顔の傷』を持っていた青年を思い返す。
「今考えると、シロよりも親父様に近かったかもしれないなぁ。何がって言われたら分かんないけど……」
ポツリと呟いた柚希の言葉は、誰に届く事も無い。だがそこにとても重要な事柄が含まれていた事に柚希が気付くのは、未だもう少し先の事だった。