第一章 ~再会~(49P)
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「でもあんたは知ってるんでしょ? 絶対全部喋ってもらうからね!」
「何なら足の付け根のほくろの数まで、ぜーんぶ教えてやろうか?」
「んなっ!? そんなモン何で知ってんのよっ!」
暗く影を落としていた柚希の顔が、恥ずかしさで瞬時に赤くなる。
さっきからこの男には翻弄されてばかりだ。話をすればする程、どこまで自分を知っているのかが不安になる。過去に関わりがあるのは良いとしても、その関わり方が尋常ではなさそうだ。ならば尚更、全てを明かしてもらわなければならない。
「まぁそんな事は置いといて、一先ず今夜は休もうぜ。さすがに疲れも溜まってんだろ。銀さんもお前を病院に連れて行って、ここまで連れ帰るのは結構大変だったのよね~」
「……その事については感謝してるけど、そのまま病院に置いといてくれれば良かったんじゃないの?」
「ばぁか、一人で置いとけるかよ」
緩慢な動きで、頭まで布団をかぶりながら銀時は言う。
「未だお前を追ってる輩がいるんだろ? 病院じゃ周りを巻き込みかねねぇし、お前もそれを望んじゃいねぇはずだ」
「――あんたって、実は良い奴?」
意外な答えに柚希が目を丸くすると、返ってきたのは
「シロ」
という脈絡のない言葉。
「へ? いきなり何よ」
「シロって呼んでみろよ」
「なんで? あんたの名前は銀時じゃないの?」
「そうだけど、そうじゃねぇよ。……ちっ、やっぱだめか。だったらせめて『銀時』と呼んでくれ。俺は『あんた』って名前じゃねぇからよ」
「よく分からないけど、とりあえず了解したわ。銀時、ね」
「お休み」と聞こえた銀時の声は少し拗ねている印象を受けたが、柚希にはその理由が分からない。だが、未だこれから話す時間はたくさんあるのだから良いかと軽く流した柚希は、「お休み」と返すと布団に潜り込み目を瞑った。
タイミングを合わせて銀時がリモコンのスイッチを押せば、部屋の灯りが落ちる。
時を待たずして部屋の中には、二つの小さな寝息が聞こえてきたのだった。
深夜二時頃。
カサリと布団のこすれる音がする。それは銀時が寝返りを打った音だった。うっすらと目を開けた視線の先には、熟睡している柚希がいる。
柚希が間違いなく眠っているかとしばらく様子を伺っていた銀時だったが、呼吸のリズムが崩れないのを確認してゆっくりと体を起こした。
音を立てないよう細心の注意を払いながら布団を抜け出し、柚希の顔を覗き込む。窓から差し込む月明りでぼんやりと浮かび上がる柚希の姿に、銀時は複雑な表情を見せていた。
「もう諦めてたからな……町でお前を見かけた時は、心臓が止まりそうだったぜ。だが再会できたからにはもう一度、と期待してたのによォ」
そっと手を差し伸べて柚希の頬に触れようとするも、何かに気付いたように直前で止まってしまう。
「……くそっ!」
ギリリと歯を食いしばって、吐き出すように言ったその言葉に秘められた思いは何なのか。
こぶしを握り締め、自分の口に押し当てた銀時はしばし柚希を見つめていたが、やがて小さなため息を残して再び自分の布団に潜り込んだのだった。
「何なら足の付け根のほくろの数まで、ぜーんぶ教えてやろうか?」
「んなっ!? そんなモン何で知ってんのよっ!」
暗く影を落としていた柚希の顔が、恥ずかしさで瞬時に赤くなる。
さっきからこの男には翻弄されてばかりだ。話をすればする程、どこまで自分を知っているのかが不安になる。過去に関わりがあるのは良いとしても、その関わり方が尋常ではなさそうだ。ならば尚更、全てを明かしてもらわなければならない。
「まぁそんな事は置いといて、一先ず今夜は休もうぜ。さすがに疲れも溜まってんだろ。銀さんもお前を病院に連れて行って、ここまで連れ帰るのは結構大変だったのよね~」
「……その事については感謝してるけど、そのまま病院に置いといてくれれば良かったんじゃないの?」
「ばぁか、一人で置いとけるかよ」
緩慢な動きで、頭まで布団をかぶりながら銀時は言う。
「未だお前を追ってる輩がいるんだろ? 病院じゃ周りを巻き込みかねねぇし、お前もそれを望んじゃいねぇはずだ」
「――あんたって、実は良い奴?」
意外な答えに柚希が目を丸くすると、返ってきたのは
「シロ」
という脈絡のない言葉。
「へ? いきなり何よ」
「シロって呼んでみろよ」
「なんで? あんたの名前は銀時じゃないの?」
「そうだけど、そうじゃねぇよ。……ちっ、やっぱだめか。だったらせめて『銀時』と呼んでくれ。俺は『あんた』って名前じゃねぇからよ」
「よく分からないけど、とりあえず了解したわ。銀時、ね」
「お休み」と聞こえた銀時の声は少し拗ねている印象を受けたが、柚希にはその理由が分からない。だが、未だこれから話す時間はたくさんあるのだから良いかと軽く流した柚希は、「お休み」と返すと布団に潜り込み目を瞑った。
タイミングを合わせて銀時がリモコンのスイッチを押せば、部屋の灯りが落ちる。
時を待たずして部屋の中には、二つの小さな寝息が聞こえてきたのだった。
深夜二時頃。
カサリと布団のこすれる音がする。それは銀時が寝返りを打った音だった。うっすらと目を開けた視線の先には、熟睡している柚希がいる。
柚希が間違いなく眠っているかとしばらく様子を伺っていた銀時だったが、呼吸のリズムが崩れないのを確認してゆっくりと体を起こした。
音を立てないよう細心の注意を払いながら布団を抜け出し、柚希の顔を覗き込む。窓から差し込む月明りでぼんやりと浮かび上がる柚希の姿に、銀時は複雑な表情を見せていた。
「もう諦めてたからな……町でお前を見かけた時は、心臓が止まりそうだったぜ。だが再会できたからにはもう一度、と期待してたのによォ」
そっと手を差し伸べて柚希の頬に触れようとするも、何かに気付いたように直前で止まってしまう。
「……くそっ!」
ギリリと歯を食いしばって、吐き出すように言ったその言葉に秘められた思いは何なのか。
こぶしを握り締め、自分の口に押し当てた銀時はしばし柚希を見つめていたが、やがて小さなため息を残して再び自分の布団に潜り込んだのだった。