第二章 ~松陽~(83P)
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松下村塾襲撃未遂事件から数日。
「お疲れさん。今日もよく頑張ってくれたね」
その日の診察を終え、片付けをしていた柚希に声をかけてきたのは緒方。見れば手に封筒を持ち、柚希に差し出していた。
「これは?」
「嫌だなぁ、忘れてたのかい? 今日は君の初めての給料日だよ」
「……っ! マジですか!?」
「おうよ、マジだぜ!」
笑いながら言う緒方が封筒を受け取るよう促すと、目を輝かせなから手を伸ばす。封筒を胸に当てた柚希は、暫くその感動に浸っていた。
「よっぽど嬉しかったんだねぇ。ちなみに給料の使い道は決めてるのかい?」
「使い道ですか? 普通に生活費に回しますよ。うちは毎月火の車なので」
先程までの輝きが一瞬で消え、ため息をつく柚希の顔に浮かぶのは生活疲れ。子供らしさとは程遠いその表情には、緒方も苦笑いをするしかない。
「そうかい。でもまぁ最初の給料くらいは、何か自分の記念になるような物を買ってみても良いと思うけどね。モチベーションも上がるしさ」
「それもそっか。でもなぁ……」
うーんと真剣に考え込む柚希の姿を目の当たりにした緒方は、家族思いな一面を微笑ましく思うと同時に「不憫だ……」と小さく呟かずにはいられなかった。
「ただいまぁ!」
仕事の片付けも終わり、松下村塾へと戻った柚希は、真っ先に松陽の部屋へと駆け込んだ。
「親父様見て見て! 初めてのお給料をもらったの!」
余程急いで走って来たのか、頬を上気させて封筒を差し出した柚希に松陽が笑う。
「お帰りなさい、柚希。一ヶ月よく頑張りましたね。そのお金は君がお仕事を頑張った証ですよ」
一旦は受け取った松陽だったが、その中身を見る事なく封筒を返す。不思議そうに自分を見る柚希に、松陽は言った。
「先程も言いましたが、これは君の頑張りが評価された物です。しかも初めてのお給料は特別なんですから、自分の好きな事に使うべきだと思いますよ」
「私達の生活を第一に考えてくれる気持ちだけで十分です」と笑顔を見せた松陽は、「あ、でも良ければ銀時に一つだけお菓子を買ってあげて下さいね」と付け加える。その言葉に少し迷いは残しながらも、柚希は頷き答えた。
翌日。
仕事が休みと言う事で、柚希は銀時と一緒に街に出ていた。目的は勿論、柚希の買い物だ。
「何で俺まで?」と不満げな銀時をお菓子で釣り、二人が辿り着いたのは一軒の万屋。いわゆる何でも屋だった。
「一体何を買いに来たんだ?」
銀時が怠そうに聞くも、嬉しそうな顔を見せるだけで何も答えず。店の前で待っているよう指示だけ残した柚希は、銀時を残して一人店の奥へと入ってしまった。
「お疲れさん。今日もよく頑張ってくれたね」
その日の診察を終え、片付けをしていた柚希に声をかけてきたのは緒方。見れば手に封筒を持ち、柚希に差し出していた。
「これは?」
「嫌だなぁ、忘れてたのかい? 今日は君の初めての給料日だよ」
「……っ! マジですか!?」
「おうよ、マジだぜ!」
笑いながら言う緒方が封筒を受け取るよう促すと、目を輝かせなから手を伸ばす。封筒を胸に当てた柚希は、暫くその感動に浸っていた。
「よっぽど嬉しかったんだねぇ。ちなみに給料の使い道は決めてるのかい?」
「使い道ですか? 普通に生活費に回しますよ。うちは毎月火の車なので」
先程までの輝きが一瞬で消え、ため息をつく柚希の顔に浮かぶのは生活疲れ。子供らしさとは程遠いその表情には、緒方も苦笑いをするしかない。
「そうかい。でもまぁ最初の給料くらいは、何か自分の記念になるような物を買ってみても良いと思うけどね。モチベーションも上がるしさ」
「それもそっか。でもなぁ……」
うーんと真剣に考え込む柚希の姿を目の当たりにした緒方は、家族思いな一面を微笑ましく思うと同時に「不憫だ……」と小さく呟かずにはいられなかった。
「ただいまぁ!」
仕事の片付けも終わり、松下村塾へと戻った柚希は、真っ先に松陽の部屋へと駆け込んだ。
「親父様見て見て! 初めてのお給料をもらったの!」
余程急いで走って来たのか、頬を上気させて封筒を差し出した柚希に松陽が笑う。
「お帰りなさい、柚希。一ヶ月よく頑張りましたね。そのお金は君がお仕事を頑張った証ですよ」
一旦は受け取った松陽だったが、その中身を見る事なく封筒を返す。不思議そうに自分を見る柚希に、松陽は言った。
「先程も言いましたが、これは君の頑張りが評価された物です。しかも初めてのお給料は特別なんですから、自分の好きな事に使うべきだと思いますよ」
「私達の生活を第一に考えてくれる気持ちだけで十分です」と笑顔を見せた松陽は、「あ、でも良ければ銀時に一つだけお菓子を買ってあげて下さいね」と付け加える。その言葉に少し迷いは残しながらも、柚希は頷き答えた。
翌日。
仕事が休みと言う事で、柚希は銀時と一緒に街に出ていた。目的は勿論、柚希の買い物だ。
「何で俺まで?」と不満げな銀時をお菓子で釣り、二人が辿り着いたのは一軒の万屋。いわゆる何でも屋だった。
「一体何を買いに来たんだ?」
銀時が怠そうに聞くも、嬉しそうな顔を見せるだけで何も答えず。店の前で待っているよう指示だけ残した柚希は、銀時を残して一人店の奥へと入ってしまった。