第二章 ~松陽~(83P)
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「……また私がいない所で、大切な人が消えちゃうんじゃないかと思うと、凄く怖かった。親父様もシロもいなくなったらどうしようって……不安で仕方なかった」
次から次へとあふれ出す涙を拭いもせず、柚希は続けた。
「親父様とシロがいないと、私は生きていけないんだよ。……私はもう……一人は嫌なの……っ!」
こぶしを握り締め、ボロボロと涙を流す柚希に手を差し伸べようとした松陽だったが、寸での所で固まってしまう。こうして柚希を泣かせているのは自分だから、抱きしめてやる資格など無いではないかとの思いが、松陽を躊躇させてしまっていたのだ。
そこに現れたのは、台所に行っていたはずの銀時。
何も言わずに柚希の横に立ち、手が白くなるほどに握り締められたこぶしを自分の手で包み込むと、もう片方の手に持っていたハンドタオルを柚希に渡しながら真っ直ぐ松陽を見つめた。
その視線に込められた意味を察した松陽の心に、浮かんだ思い。
――ああ、やはり時が許す限り私は この子たちと一緒にいたい。諦める事無く、自分の持ち得る全ての力を使ってでも側にいたい。
「私と一緒にいたら、また同じような事が起きるかもしれません。今回は柚希や緒方先生のお陰で事なきを得ましたが、いつもこんな風に上手くいくとは限らない。それこそ夜逃げ同然に逃げ出さなければならなくなったり、もっと強大な相手とぶつかる事だってあるでしょう。それでも……」
過去を鑑みれば、選ぶべきでは無い答え。それを分かっていながらもこの子達と共にいる事を望むのなら、自らが覚悟を決めれば良い。
いつか彼らを危険に晒してしまう日が来てしまったとしても、命がけで抗えば運命は切り拓ける。そう、自分がこの子たちを『護れば』良いのだ。
目の前で自分を見つめる二対の澄んだ眼差しが松陽に決意をさせ、言葉にさせた。
「私と一緒にいてくれますか?」
そう言って見つめ返せば、ホッとした表情を見せる二人。
「そんなの今更だってーの」
「私たちはいつまでも親父様から離れる気はないよ」
ゆるぎない答えが返され、松陽の胸に熱い物が込み上げる。
「……ありがとう」
思わず溢れそうになった涙を笑みに変え、二人の頭を優しく撫でた松陽は、最後に左手の小指を出して見せた。意味が分からず不思議そうに自分を見る二人に、松陽は言う。
「約束しましょう。私は君たちを護ります」
その言葉で指きりだと理解した柚希が同じく小指を出すと、訝しげに真似をする銀時。
その小さな二本の指に自らの指を絡めた松陽は、続けて言った。
「もし私が護りきれないときは、お互いを護ってくださいね」
「親父様ってば心配し過ぎ。シロも私も、自分を『守れる』程度には強いから大丈夫だよ」
「そうだぜ。俺たちの強さはアンタが一番知ってるだろ?」
「……そうでしたね」
力強い答えが、松陽の笑みを深くする。
紡いだ言葉の意味には少し違いがあるけれど、お互いを思う気持ちは同じだから。
「だからこそ、護らせて下さい。大切な君たちを」
そう言った松陽の顔には、これ以上ない幸せな笑みが浮かんでいた。
次から次へとあふれ出す涙を拭いもせず、柚希は続けた。
「親父様とシロがいないと、私は生きていけないんだよ。……私はもう……一人は嫌なの……っ!」
こぶしを握り締め、ボロボロと涙を流す柚希に手を差し伸べようとした松陽だったが、寸での所で固まってしまう。こうして柚希を泣かせているのは自分だから、抱きしめてやる資格など無いではないかとの思いが、松陽を躊躇させてしまっていたのだ。
そこに現れたのは、台所に行っていたはずの銀時。
何も言わずに柚希の横に立ち、手が白くなるほどに握り締められたこぶしを自分の手で包み込むと、もう片方の手に持っていたハンドタオルを柚希に渡しながら真っ直ぐ松陽を見つめた。
その視線に込められた意味を察した松陽の心に、浮かんだ思い。
――ああ、やはり時が許す限り私は この子たちと一緒にいたい。諦める事無く、自分の持ち得る全ての力を使ってでも側にいたい。
「私と一緒にいたら、また同じような事が起きるかもしれません。今回は柚希や緒方先生のお陰で事なきを得ましたが、いつもこんな風に上手くいくとは限らない。それこそ夜逃げ同然に逃げ出さなければならなくなったり、もっと強大な相手とぶつかる事だってあるでしょう。それでも……」
過去を鑑みれば、選ぶべきでは無い答え。それを分かっていながらもこの子達と共にいる事を望むのなら、自らが覚悟を決めれば良い。
いつか彼らを危険に晒してしまう日が来てしまったとしても、命がけで抗えば運命は切り拓ける。そう、自分がこの子たちを『護れば』良いのだ。
目の前で自分を見つめる二対の澄んだ眼差しが松陽に決意をさせ、言葉にさせた。
「私と一緒にいてくれますか?」
そう言って見つめ返せば、ホッとした表情を見せる二人。
「そんなの今更だってーの」
「私たちはいつまでも親父様から離れる気はないよ」
ゆるぎない答えが返され、松陽の胸に熱い物が込み上げる。
「……ありがとう」
思わず溢れそうになった涙を笑みに変え、二人の頭を優しく撫でた松陽は、最後に左手の小指を出して見せた。意味が分からず不思議そうに自分を見る二人に、松陽は言う。
「約束しましょう。私は君たちを護ります」
その言葉で指きりだと理解した柚希が同じく小指を出すと、訝しげに真似をする銀時。
その小さな二本の指に自らの指を絡めた松陽は、続けて言った。
「もし私が護りきれないときは、お互いを護ってくださいね」
「親父様ってば心配し過ぎ。シロも私も、自分を『守れる』程度には強いから大丈夫だよ」
「そうだぜ。俺たちの強さはアンタが一番知ってるだろ?」
「……そうでしたね」
力強い答えが、松陽の笑みを深くする。
紡いだ言葉の意味には少し違いがあるけれど、お互いを思う気持ちは同じだから。
「だからこそ、護らせて下さい。大切な君たちを」
そう言った松陽の顔には、これ以上ない幸せな笑みが浮かんでいた。