第二章 ~松陽~(83P)
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「姫……か」
先程話に出た柚希の呼び名を思い出す。きっと診療所では、お姫様のように可愛がられているのだろう。元々人当たりが良いのだから尚更だ。
「先生やおっさん、患者たちにも慕われて。『姫』の名は伊達じゃねェってか」
ようやく心に余裕の出来た銀時が、小さく口の端を上げながら言う。すると誤解が解けた事を理解した緒方は「そうだよ、柚希ちゃんは皆から愛されてるんだ」と言いながら銀時の肩になれなれしく腕を回してきた。
「まぁ、誰かさんの想いには負けるけどね」
耳元で囁くように言われ、ハッとして横を見ると、それは楽しそうにニヤニヤと笑っている緒方の顔がある。
「俺は別に……ッ!」
「あれぇ? 僕は銀時くんの事だなんて一言も言ってないけどねぇ」
「くっ……!」
顔を真っ赤にした銀時が言葉を失えば、笑いが止まらなくなる緒方。腹立たしいのに何も言えない銀時は、プルプルと拳を握りしめる事しかできない。
「ねぇ親父様。何か緒方先生が凄く気持ち悪い顔をして笑ってるけどどうしたんだろう。シロはプルプルしてるし」
「さて、どうしたんでしょうねぇ。とりあえず今日は色々と緒方先生の本性を見られた一日でしたよ」
――ついでに普段は聡い柚希が、自分の色恋にはとことん疎いという事も分かりました。
銀時たちの会話が聞こえない柚希が呆れたように言うのを聞きながら、松陽は少しだけ銀時に同情するのだった。
「まあそう言うわけで、これからも今まで通りやっていけば良いだろう。今夜はもう遅いし、明日も朝一から予約が入ってるから僕は帰るよ」
銀時をからかってスッキリしたのか、清々しい表情で緒方は松下村塾を後にする。
からかわれっぱなしだった銀時はというと、ぐったりした様子で一人台所へと向かって行った。今頃は間違いなくいちご牛乳を飲みすすっている事だろう。
その場に残されていた松陽と柚希は、しばしの間お互いの顔を見つめていた。やがて根負けした松陽が小さく頭を下げる。
「色々と苦労をかけましたね。すみませんでした」
「本当だよ。私たちを心配してのあの手紙ってのは分かってるけど、それでも私達が家族だと認めてくれてるんなら、きちんと話をして欲しかった」
そう言ってまっすぐに松陽を見る柚希の目が潤み始め、やがてその頬に一筋の涙が伝うと、松陽の胸は激しく痛んだ。
先程話に出た柚希の呼び名を思い出す。きっと診療所では、お姫様のように可愛がられているのだろう。元々人当たりが良いのだから尚更だ。
「先生やおっさん、患者たちにも慕われて。『姫』の名は伊達じゃねェってか」
ようやく心に余裕の出来た銀時が、小さく口の端を上げながら言う。すると誤解が解けた事を理解した緒方は「そうだよ、柚希ちゃんは皆から愛されてるんだ」と言いながら銀時の肩になれなれしく腕を回してきた。
「まぁ、誰かさんの想いには負けるけどね」
耳元で囁くように言われ、ハッとして横を見ると、それは楽しそうにニヤニヤと笑っている緒方の顔がある。
「俺は別に……ッ!」
「あれぇ? 僕は銀時くんの事だなんて一言も言ってないけどねぇ」
「くっ……!」
顔を真っ赤にした銀時が言葉を失えば、笑いが止まらなくなる緒方。腹立たしいのに何も言えない銀時は、プルプルと拳を握りしめる事しかできない。
「ねぇ親父様。何か緒方先生が凄く気持ち悪い顔をして笑ってるけどどうしたんだろう。シロはプルプルしてるし」
「さて、どうしたんでしょうねぇ。とりあえず今日は色々と緒方先生の本性を見られた一日でしたよ」
――ついでに普段は聡い柚希が、自分の色恋にはとことん疎いという事も分かりました。
銀時たちの会話が聞こえない柚希が呆れたように言うのを聞きながら、松陽は少しだけ銀時に同情するのだった。
「まあそう言うわけで、これからも今まで通りやっていけば良いだろう。今夜はもう遅いし、明日も朝一から予約が入ってるから僕は帰るよ」
銀時をからかってスッキリしたのか、清々しい表情で緒方は松下村塾を後にする。
からかわれっぱなしだった銀時はというと、ぐったりした様子で一人台所へと向かって行った。今頃は間違いなくいちご牛乳を飲みすすっている事だろう。
その場に残されていた松陽と柚希は、しばしの間お互いの顔を見つめていた。やがて根負けした松陽が小さく頭を下げる。
「色々と苦労をかけましたね。すみませんでした」
「本当だよ。私たちを心配してのあの手紙ってのは分かってるけど、それでも私達が家族だと認めてくれてるんなら、きちんと話をして欲しかった」
そう言ってまっすぐに松陽を見る柚希の目が潤み始め、やがてその頬に一筋の涙が伝うと、松陽の胸は激しく痛んだ。