第二章 ~松陽~(83P)
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「……随分と尽力してくれてんな、おっさん。そこまでしてくれるなんて、何か下心でもあるんじゃねーのか?」
疑り深い目で緒方を見る銀時が言うと、一瞬目を見開く緒方。だがすぐにブフッと吹き出し、柚希の頭をわざとらしくポンポンと叩いて見せた。
「そうだねぇ。柚希ちゃんが診療所に来てくれてから患者は増えるし、診察は楽になったしで経営もうなぎのぼり。となれば、絶対手放したくない人材だな。彼女は僕にとってかけがえのない存在だし、下心は満載だよ」
ワハハと豪快に笑いながら当たり前のように答える緒方。馬鹿にされたように感じたのか、銀時のイライラが募るのを見て松陽は小さく嘆息した。
「この子をからかうのは止めて下さいよ、緒方先生。冗談は通じませんからね」
「いやぁ、あまりに素直な感情をぶつけてくれるから面白くてね」
「なんだとォ!?」
「ほら、銀時も落ち着きなさい。要するに緒方先生と柚希の尽力で、我々は今まで通りここで寺子屋を開いていて良いという事でしょうか」
「ああ、それなりに制約は出てくるだろうが、とりあえずは問題ないだろう」
更に銀時を煽るように柚希の頭をくしゃくしゃと撫でながら答えた緒方は、今にも噛みついてきそうな銀時の怒りを軽く受け流す。それと同時に真剣な眼差しを松陽に送った。
「松陽くんについては、役人たちも推して知るべしだな。だが出る杭は打たれるのが世の理でもある。今回の件で君の名を知った者も多いだろうし、あくまで納得したのではなく様子を伺っている状態だと言う事を忘れないでくれよ」
「分かっています。色々とお手数をおかけしました。このお礼は……」
「ああ、その点は柚希ちゃんをこき使えればそれで良いから」
「え? ちょっと待って下さいよ。何でそうなるんですか!?」
緒方にしては珍しく真剣な顔をしているからと静かに話を聞いていた柚希が、自らに振られた理不尽な台詞に叫び声をあげる。
しかも気付けばつい今しがたまで頭を撫でていた緒方の手が、いつの間にかガッシリと柚希の肩を掴んでいた。
「柚希ちゃんが診療所にいてくれないと、色々と困るんだよね。特にヨネさんが受診した時とか、ヨネさんが立ち寄った時とか、ヨネさんが……」
「いや先生! ヨネさん限定になってますから!」
「だって今回の件でヨネさんが口利きをしてくれたのは、僕の顔というよりは柚希ちゃんを気に入っての事だからね。講武館館長の御母堂を動かしたのは柚希ちゃんなんだから、責任持って担当してよ」
「ってなわけでこれからもバリバリ働いてもらうから、宜しく頼むね」と爽やかな笑顔で言う緒方に、柚希は頬を引きつらせる。
そんな二人のやり取りを不満げに見ていた銀時だったが、ふと緒方の笑みが松陽の笑みに似ているような気がして、二人の顔を見比べた。その時になってようやく気付いた緒方の胸の内。
――娘を思う父親って奴か。先生とおっさんが柚希を見る目、全く同じじゃねーか。
ほんの今し方まで抱いていた緒方への対抗意識が霧散する。それどころか、緒方の態度に微笑ましささえ感じてしまった自分に呆れてしまった。
疑り深い目で緒方を見る銀時が言うと、一瞬目を見開く緒方。だがすぐにブフッと吹き出し、柚希の頭をわざとらしくポンポンと叩いて見せた。
「そうだねぇ。柚希ちゃんが診療所に来てくれてから患者は増えるし、診察は楽になったしで経営もうなぎのぼり。となれば、絶対手放したくない人材だな。彼女は僕にとってかけがえのない存在だし、下心は満載だよ」
ワハハと豪快に笑いながら当たり前のように答える緒方。馬鹿にされたように感じたのか、銀時のイライラが募るのを見て松陽は小さく嘆息した。
「この子をからかうのは止めて下さいよ、緒方先生。冗談は通じませんからね」
「いやぁ、あまりに素直な感情をぶつけてくれるから面白くてね」
「なんだとォ!?」
「ほら、銀時も落ち着きなさい。要するに緒方先生と柚希の尽力で、我々は今まで通りここで寺子屋を開いていて良いという事でしょうか」
「ああ、それなりに制約は出てくるだろうが、とりあえずは問題ないだろう」
更に銀時を煽るように柚希の頭をくしゃくしゃと撫でながら答えた緒方は、今にも噛みついてきそうな銀時の怒りを軽く受け流す。それと同時に真剣な眼差しを松陽に送った。
「松陽くんについては、役人たちも推して知るべしだな。だが出る杭は打たれるのが世の理でもある。今回の件で君の名を知った者も多いだろうし、あくまで納得したのではなく様子を伺っている状態だと言う事を忘れないでくれよ」
「分かっています。色々とお手数をおかけしました。このお礼は……」
「ああ、その点は柚希ちゃんをこき使えればそれで良いから」
「え? ちょっと待って下さいよ。何でそうなるんですか!?」
緒方にしては珍しく真剣な顔をしているからと静かに話を聞いていた柚希が、自らに振られた理不尽な台詞に叫び声をあげる。
しかも気付けばつい今しがたまで頭を撫でていた緒方の手が、いつの間にかガッシリと柚希の肩を掴んでいた。
「柚希ちゃんが診療所にいてくれないと、色々と困るんだよね。特にヨネさんが受診した時とか、ヨネさんが立ち寄った時とか、ヨネさんが……」
「いや先生! ヨネさん限定になってますから!」
「だって今回の件でヨネさんが口利きをしてくれたのは、僕の顔というよりは柚希ちゃんを気に入っての事だからね。講武館館長の御母堂を動かしたのは柚希ちゃんなんだから、責任持って担当してよ」
「ってなわけでこれからもバリバリ働いてもらうから、宜しく頼むね」と爽やかな笑顔で言う緒方に、柚希は頬を引きつらせる。
そんな二人のやり取りを不満げに見ていた銀時だったが、ふと緒方の笑みが松陽の笑みに似ているような気がして、二人の顔を見比べた。その時になってようやく気付いた緒方の胸の内。
――娘を思う父親って奴か。先生とおっさんが柚希を見る目、全く同じじゃねーか。
ほんの今し方まで抱いていた緒方への対抗意識が霧散する。それどころか、緒方の態度に微笑ましささえ感じてしまった自分に呆れてしまった。