第二章 ~松陽~(83P)
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「私たちは今まで流れ者だったけど、やっとこうして根を張れる場所が出来たんだよ。あっさり手放すんじゃなくて、もっと執着してみようとは思わなかったわけ?」
「ねぇ?」と今度は緒方を見て言う柚希に、緒方も頷いて答える。そして柚希から目で何かの合図を送られたのか、今度は緒方が語り始めた。
「こういう事は手紙じゃなくて、直接言いに来て欲しかったねぇ。それとも僕は君の中で、直接話すに値しない存在なのかい?」
「いえ、決してそんな事は。信頼できる方だからこそ、この子たちを預けようと思ったわけで……でもこちらの勝手はお詫びします。すみません」
頭を下げる松陽に向けられている視線は、未だ冷たい。だがそこには怒りや呆れだけではなく、別の感情もあるように見えた。
「この手紙を読んだ後、僕と柚希ちゃんが何をしたか、君たちは想像できるかい?」
「何をしたか……ですか? いえ、さっぱりです」
「そうか。じゃあ手短に説明しよう。講武館と役人に交渉してきた」
「交渉?」
「そうだよ。柚希ちゃんが講武館へ。僕は役人の所に行ってきたんだ」
全く予想をしていなかったの言葉に、目を丸くする松陽と銀時。その反応に留飲を下げたのか、ようやく緒方と柚希の表情も緩んだ。
「診療所の患者の中に、講武館の権力者がいたのよ。いわゆるラスボスってやつ? とにかく発言力のある人でね。最終的に講武館の邪魔さえしなければ手出しはしないって約束をしてくれたわ」
そう言った柚希が再び懐に手を入れ、取り出した物。それは講武館の館長直々の証文だった。しかし何故か館長の名前の横には朱色で『ヨネ』と書かれている。
「ちなみにこの朱文字がラスボスの署名です」
柚希がくすくすと笑いながら言うも、松陽と銀時には意味が分からない。ただこの人物が講武館の全てを掌握できる存在だという事だけは分かった。
「とりあえず講武館についてはこれで大丈夫だと思う。で、次は役人なんだけどね」
柚希の視線に促され、今度は緒方が話し始めた。
「講武館の館長に、もう松下村塾の件は解決したと書状を書かせて私が持って行ったんだが、既に主だった者が松下村塾へと向かってしまった後だったのでね。心配はしていたが、君たちが無傷なところを見ると、大した衝突もなかったのかな。まぁ今頃は全ての役人に通達が行ってるだろう」
「先生がね、本当に危険だと言うのなら、逆にこのまま寺子屋を続けさせて監視した方が良いんじゃないかって提案したのよ。何なら将軍様に了承を得ようかって。先生が御典医の松本先生と懇意な事は知られてるし、ダメ押しで自分が監視役になると言ってくれたらあっさりと話がまとまっちゃった」
「見た目と違って頼れるんですよね」と爽やかに言う柚希に、半分涙目になる緒方だったがその表情は優しい。まるで愛おしい者を見るかのような眼差しは、ずっと静かに話を聞いていた銀時の心をざわつかせた。
「ねぇ?」と今度は緒方を見て言う柚希に、緒方も頷いて答える。そして柚希から目で何かの合図を送られたのか、今度は緒方が語り始めた。
「こういう事は手紙じゃなくて、直接言いに来て欲しかったねぇ。それとも僕は君の中で、直接話すに値しない存在なのかい?」
「いえ、決してそんな事は。信頼できる方だからこそ、この子たちを預けようと思ったわけで……でもこちらの勝手はお詫びします。すみません」
頭を下げる松陽に向けられている視線は、未だ冷たい。だがそこには怒りや呆れだけではなく、別の感情もあるように見えた。
「この手紙を読んだ後、僕と柚希ちゃんが何をしたか、君たちは想像できるかい?」
「何をしたか……ですか? いえ、さっぱりです」
「そうか。じゃあ手短に説明しよう。講武館と役人に交渉してきた」
「交渉?」
「そうだよ。柚希ちゃんが講武館へ。僕は役人の所に行ってきたんだ」
全く予想をしていなかったの言葉に、目を丸くする松陽と銀時。その反応に留飲を下げたのか、ようやく緒方と柚希の表情も緩んだ。
「診療所の患者の中に、講武館の権力者がいたのよ。いわゆるラスボスってやつ? とにかく発言力のある人でね。最終的に講武館の邪魔さえしなければ手出しはしないって約束をしてくれたわ」
そう言った柚希が再び懐に手を入れ、取り出した物。それは講武館の館長直々の証文だった。しかし何故か館長の名前の横には朱色で『ヨネ』と書かれている。
「ちなみにこの朱文字がラスボスの署名です」
柚希がくすくすと笑いながら言うも、松陽と銀時には意味が分からない。ただこの人物が講武館の全てを掌握できる存在だという事だけは分かった。
「とりあえず講武館についてはこれで大丈夫だと思う。で、次は役人なんだけどね」
柚希の視線に促され、今度は緒方が話し始めた。
「講武館の館長に、もう松下村塾の件は解決したと書状を書かせて私が持って行ったんだが、既に主だった者が松下村塾へと向かってしまった後だったのでね。心配はしていたが、君たちが無傷なところを見ると、大した衝突もなかったのかな。まぁ今頃は全ての役人に通達が行ってるだろう」
「先生がね、本当に危険だと言うのなら、逆にこのまま寺子屋を続けさせて監視した方が良いんじゃないかって提案したのよ。何なら将軍様に了承を得ようかって。先生が御典医の松本先生と懇意な事は知られてるし、ダメ押しで自分が監視役になると言ってくれたらあっさりと話がまとまっちゃった」
「見た目と違って頼れるんですよね」と爽やかに言う柚希に、半分涙目になる緒方だったがその表情は優しい。まるで愛おしい者を見るかのような眼差しは、ずっと静かに話を聞いていた銀時の心をざわつかせた。