第二章 ~松陽~(83P)
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「ちっ……親父様には通用しなかったか」
「甘いですね。驚かそうという気持ちが先走って、気配が漏れてましたよ」
呆れながらも笑顔で答える松陽に「面白くないの」と口を尖らせた柚希は、電気のスイッチを入れる。光に照らされたいつもと変わらぬ空間は、銀時と松陽の心にホッとする安らぎを与えてくれた。
「やっぱりここ最近仕事続きだったから、色々となまってるのね。でもまぁ親父様は特別かな。シロががっつり驚いてくれたし、良しとしますか」
口元に手を当て、ニシシと笑いながら自分を見る柚希に、銀時が憤慨する。
「てめェ! 何もしなくてもおっそろしい顔をしてんだから、これ以上バケモンに近付いてんじゃねェよ!」
「誰が化け物よ! これでも診療所じゃ『姫』って呼ばれてるんだからね」
「姫だァ!? よっぽど目の悪い奴限定の呼び名じゃねェのか?」
「言わせておけば……ねぇ緒方先生! 本当の事ですよね?」
最後のセリフは、奥の部屋に向かって言われた言葉。つられて銀時と松陽が目を向けると、暗い中からひょっこりと緒方が姿を現した。
「彼女が言ってるのは本当だよ。ある日患者さんに『君の助手はお姫様みたいに可愛い上に有能だ』と絶賛されてね。それ以降自慢してたら他の患者さんにも浸透していったんだ」
得意げに言う緒方が柚希に向けて親指を立てて見せると、柚希も笑顔で親指を立てる。どうやら二人は良いコンビとして上手くやっているようだ。
「緒方先生……何でまたあんな暗い部屋にいらしたのですか」
「柚希ちゃんが君たちを驚かそうというのでね。僕も君の驚く顔を見てみたかったんだけど、さすがに気付いてたようで残念だ」
わっはっはと笑いながら松陽の肩をバンバン叩く緒方。力加減は思ったより強く、松陽は苦笑いをしながら「痛いですよ~」と言ったが、その言葉を聞いた緒方の顔は不意に厳しい物になった。
「……わざと痛くしてるんだよ」
「はい?」
一瞬で辺りを包む空気が冷たくなったのを感じ、松陽はもちろん銀時の表情までも固まってしまう。そんな中、柚希はというと緒方と同じく冷たい顔をしていた。
「ほんと勝手だよね。親父様も、シロも」
そう言って柚希が懐から出したのは、松陽が書いた緒方への手紙。丁寧に広げて二人の目の前に突き出すと、柚希は怒りに体を震わせながら松陽を見た。
「松下村塾を無くして、親父様がいなくなればそれで全てが丸く収まると本気で思ったの? 私とシロが緒方先生の所に行けば、幸せに生きられるって断言できるの?」
そして今度は銀時を見る。
「私を蚊帳の外に置いて、自分だけで何とかできると思ったの?」
松陽と銀時を交互に睨みつけ、わざと大きな動作で手紙を破って見せた柚希は呆れたように言った。
「甘いですね。驚かそうという気持ちが先走って、気配が漏れてましたよ」
呆れながらも笑顔で答える松陽に「面白くないの」と口を尖らせた柚希は、電気のスイッチを入れる。光に照らされたいつもと変わらぬ空間は、銀時と松陽の心にホッとする安らぎを与えてくれた。
「やっぱりここ最近仕事続きだったから、色々となまってるのね。でもまぁ親父様は特別かな。シロががっつり驚いてくれたし、良しとしますか」
口元に手を当て、ニシシと笑いながら自分を見る柚希に、銀時が憤慨する。
「てめェ! 何もしなくてもおっそろしい顔をしてんだから、これ以上バケモンに近付いてんじゃねェよ!」
「誰が化け物よ! これでも診療所じゃ『姫』って呼ばれてるんだからね」
「姫だァ!? よっぽど目の悪い奴限定の呼び名じゃねェのか?」
「言わせておけば……ねぇ緒方先生! 本当の事ですよね?」
最後のセリフは、奥の部屋に向かって言われた言葉。つられて銀時と松陽が目を向けると、暗い中からひょっこりと緒方が姿を現した。
「彼女が言ってるのは本当だよ。ある日患者さんに『君の助手はお姫様みたいに可愛い上に有能だ』と絶賛されてね。それ以降自慢してたら他の患者さんにも浸透していったんだ」
得意げに言う緒方が柚希に向けて親指を立てて見せると、柚希も笑顔で親指を立てる。どうやら二人は良いコンビとして上手くやっているようだ。
「緒方先生……何でまたあんな暗い部屋にいらしたのですか」
「柚希ちゃんが君たちを驚かそうというのでね。僕も君の驚く顔を見てみたかったんだけど、さすがに気付いてたようで残念だ」
わっはっはと笑いながら松陽の肩をバンバン叩く緒方。力加減は思ったより強く、松陽は苦笑いをしながら「痛いですよ~」と言ったが、その言葉を聞いた緒方の顔は不意に厳しい物になった。
「……わざと痛くしてるんだよ」
「はい?」
一瞬で辺りを包む空気が冷たくなったのを感じ、松陽はもちろん銀時の表情までも固まってしまう。そんな中、柚希はというと緒方と同じく冷たい顔をしていた。
「ほんと勝手だよね。親父様も、シロも」
そう言って柚希が懐から出したのは、松陽が書いた緒方への手紙。丁寧に広げて二人の目の前に突き出すと、柚希は怒りに体を震わせながら松陽を見た。
「松下村塾を無くして、親父様がいなくなればそれで全てが丸く収まると本気で思ったの? 私とシロが緒方先生の所に行けば、幸せに生きられるって断言できるの?」
そして今度は銀時を見る。
「私を蚊帳の外に置いて、自分だけで何とかできると思ったの?」
松陽と銀時を交互に睨みつけ、わざと大きな動作で手紙を破って見せた柚希は呆れたように言った。