第二章 ~松陽~(83P)
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「そうですか……それは困りましたねぇ」
めったに見られない松陽の真剣な表情に、銀時も不安そうだ。
しかしゆっくりと悩んでいる時間は無い。桂の話が正しければ、日没までには対策を講じておかねばならないのだから。
「どうする? 松陽先生」
自分には良い案も無ければ選択権も無い。それならば、と銀時は全てを松陽に委ねた。
「俺は先生の言う通りに動くぜ」
「そうですね……」
松陽をまっすぐに見つめる銀時は、ともすればこちらから相手に乗り込んで行きそうな猛々しさを秘めている。だがそれは、松陽の望む形では無かった。何故なら松陽は、銀時を初めとする子供たちを、争い事の矢面に立たせる気など毛頭無いのだから。
「ではまずは、今日の午後の授業を全て終わらせて子供たちを帰しましょう。ちなみに柚希はどうしていますか?」
「さっきは道場にいたぜ。緒方のおっさんから連絡が来るのを待ってるっつってたから、そろそろ診療所に戻るんじゃねェ?」
「桂くんから聞いた話は、伝えたのですか?」
「いや、俺は何も言ってねェ」
「でしたら彼女には何も伝えず、診療所に戻ってもらいましょう。子供たちを帰すのはその後で」
「分かった」
柚希に心配をかけたくないという松陽の気持ちを汲んだ銀時は、力強く頷いた。もちろん銀時自身も、柚希を危険な事に巻き込みたくは無い。二人の思いは合致していた。
話がまとまり、頷いた銀時は急いで道場へと戻る。
中を覗くと銀時の予想よりも早く、柚希は戻り支度を始めていた。
「話は終わった? 丁度今診療所から遣いの人が来てくれたから、私は戻るね」
「ああ。しっかり働いて来いよ」
「何よ偉そうに。あ、今日は休診時間が長かった分、夜の診療時間を少し延長するみたいだから帰る時間が遅くなるかも。後で親父様にも伝えておいてくれる?」
「はいよ」
余程急いで戻るようにと言われたのか、話もそこそこに慌ただしく出て行く柚希。
それを敢えて門まで見送り、完全に姿が見えなくなった事を確認した銀時は、大きく息を吐いた。
「次はあいつらだな」
自分も柚希同様、時間には追われている。
柚希を見送る際、小さく芽生えた寂しさを胸に抱いたまま銀時は、松下村塾内にいる子供たちに帰宅を促して回ったのだった。
めったに見られない松陽の真剣な表情に、銀時も不安そうだ。
しかしゆっくりと悩んでいる時間は無い。桂の話が正しければ、日没までには対策を講じておかねばならないのだから。
「どうする? 松陽先生」
自分には良い案も無ければ選択権も無い。それならば、と銀時は全てを松陽に委ねた。
「俺は先生の言う通りに動くぜ」
「そうですね……」
松陽をまっすぐに見つめる銀時は、ともすればこちらから相手に乗り込んで行きそうな猛々しさを秘めている。だがそれは、松陽の望む形では無かった。何故なら松陽は、銀時を初めとする子供たちを、争い事の矢面に立たせる気など毛頭無いのだから。
「ではまずは、今日の午後の授業を全て終わらせて子供たちを帰しましょう。ちなみに柚希はどうしていますか?」
「さっきは道場にいたぜ。緒方のおっさんから連絡が来るのを待ってるっつってたから、そろそろ診療所に戻るんじゃねェ?」
「桂くんから聞いた話は、伝えたのですか?」
「いや、俺は何も言ってねェ」
「でしたら彼女には何も伝えず、診療所に戻ってもらいましょう。子供たちを帰すのはその後で」
「分かった」
柚希に心配をかけたくないという松陽の気持ちを汲んだ銀時は、力強く頷いた。もちろん銀時自身も、柚希を危険な事に巻き込みたくは無い。二人の思いは合致していた。
話がまとまり、頷いた銀時は急いで道場へと戻る。
中を覗くと銀時の予想よりも早く、柚希は戻り支度を始めていた。
「話は終わった? 丁度今診療所から遣いの人が来てくれたから、私は戻るね」
「ああ。しっかり働いて来いよ」
「何よ偉そうに。あ、今日は休診時間が長かった分、夜の診療時間を少し延長するみたいだから帰る時間が遅くなるかも。後で親父様にも伝えておいてくれる?」
「はいよ」
余程急いで戻るようにと言われたのか、話もそこそこに慌ただしく出て行く柚希。
それを敢えて門まで見送り、完全に姿が見えなくなった事を確認した銀時は、大きく息を吐いた。
「次はあいつらだな」
自分も柚希同様、時間には追われている。
柚希を見送る際、小さく芽生えた寂しさを胸に抱いたまま銀時は、松下村塾内にいる子供たちに帰宅を促して回ったのだった。