第二章 ~松陽~(83P)
名前変換はこちら
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「夜になるまでに、ここを捨てて逃げるんだ」
来訪者に会うため門までやってきた銀時は、待ち受けていた桂によって開口一番伝えられた言葉に、ポカンと口を開けた。
桂が言うには、この一帯を仕切る武家の者たちが所属する『講武館』の者が、松下村塾を潰そうと手を回したらしい。今晩にも役人がやって来るから、それまでに逃げた方が良いとわざわざ忠告をしに来たのだそうだ。
「そりゃご苦労なこって」
例のごとく気怠い表情で話を聞き流していた銀時だったが、その胸中には様々な思いが渦を巻いている。だがもちろん、そんな事はおくびにも出さない。
「まァ忠告はありがたく聞いとくわ」
大したことでは無さそうに言う銀時に、桂は言った。
「奴らは話の通じる相手では無い。例え松陽先生でも説得することは出来ないだろう。事を荒立てる前に何としてでも逃げてくれ」
「わ~かったよ、心配すんなって。お前こそこれ以上俺たちに関わんなよな」
さっさと帰れとばかりに手を振った銀時は、「おい、もっと真剣に……!」と叫ぶ桂を無視して門の中へと入ってしまう。だが桂の死角を通って門の手前まで戻ると、心配そうに何度も振り返りながら帰っていく桂を陰からこっそりと見送っていた。
「つけられてはいねェようだから、アイツは大丈夫か」
安心したように小さく笑った銀時は、柚希を待たせたままにしていた事を思い出して道場に戻る。そこには昼食を終えて再び稽古を開始している子供たちの姿があり、柚希も一緒に竹刀を振っていた。
「お帰り銀時。お客さんは?」
竹刀を振りながら聞かれ、銀時は答える。
「もう帰った」
「そっか。誰だったの?」
「例のおにぎりヤロー。しばらくここに来られねェから、僕の事忘れないで! だってよ」
「そうなんだ? 残念。早く会ってみたかったんだけどなぁ」
「別にまたいつでも会えるだろ。……とりあえず先生にこの事を伝えて来るわ」
「ん、了解」
何事も無かったかのように話をまとめて道場から出た銀時は、その足で松陽の元へと向かった。
手習い中の松陽と部屋の外から目を合わせただけで、何か重要な話があるのだろうと理解した松陽はさりげなく子供たちに自習を促すと、銀時を伴い自室に向かう。
部屋の障子を閉め、座る間もなく銀時が先ほど桂から聞いた話を伝えれば、さすがの松陽も顔を曇らせた。
来訪者に会うため門までやってきた銀時は、待ち受けていた桂によって開口一番伝えられた言葉に、ポカンと口を開けた。
桂が言うには、この一帯を仕切る武家の者たちが所属する『講武館』の者が、松下村塾を潰そうと手を回したらしい。今晩にも役人がやって来るから、それまでに逃げた方が良いとわざわざ忠告をしに来たのだそうだ。
「そりゃご苦労なこって」
例のごとく気怠い表情で話を聞き流していた銀時だったが、その胸中には様々な思いが渦を巻いている。だがもちろん、そんな事はおくびにも出さない。
「まァ忠告はありがたく聞いとくわ」
大したことでは無さそうに言う銀時に、桂は言った。
「奴らは話の通じる相手では無い。例え松陽先生でも説得することは出来ないだろう。事を荒立てる前に何としてでも逃げてくれ」
「わ~かったよ、心配すんなって。お前こそこれ以上俺たちに関わんなよな」
さっさと帰れとばかりに手を振った銀時は、「おい、もっと真剣に……!」と叫ぶ桂を無視して門の中へと入ってしまう。だが桂の死角を通って門の手前まで戻ると、心配そうに何度も振り返りながら帰っていく桂を陰からこっそりと見送っていた。
「つけられてはいねェようだから、アイツは大丈夫か」
安心したように小さく笑った銀時は、柚希を待たせたままにしていた事を思い出して道場に戻る。そこには昼食を終えて再び稽古を開始している子供たちの姿があり、柚希も一緒に竹刀を振っていた。
「お帰り銀時。お客さんは?」
竹刀を振りながら聞かれ、銀時は答える。
「もう帰った」
「そっか。誰だったの?」
「例のおにぎりヤロー。しばらくここに来られねェから、僕の事忘れないで! だってよ」
「そうなんだ? 残念。早く会ってみたかったんだけどなぁ」
「別にまたいつでも会えるだろ。……とりあえず先生にこの事を伝えて来るわ」
「ん、了解」
何事も無かったかのように話をまとめて道場から出た銀時は、その足で松陽の元へと向かった。
手習い中の松陽と部屋の外から目を合わせただけで、何か重要な話があるのだろうと理解した松陽はさりげなく子供たちに自習を促すと、銀時を伴い自室に向かう。
部屋の障子を閉め、座る間もなく銀時が先ほど桂から聞いた話を伝えれば、さすがの松陽も顔を曇らせた。