第二章 ~松陽~(83P)
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「ったく、さっきから高杉高杉って、煩ェんだよ! そんなに気になるならアイツんとこに行って話を聞けば良いだろ? どいつもこいつも何なんだよ。先生は全てを知ってるはずなのに何も教えてくれねーし、部外者のはずの高杉は訳知り顔してやがるし。お前も昨日はあんな風に泣いてたくせに今は……」
拳を握り締めながら苦しそうに語る銀時は、柚希を戸惑わせる。まさか自分の知らない所で銀時がこんなにも悩んでおり、しかも昨日泣いていた所を見られていたなんて思いもよらなかったから。
「大体俺を置いて行こうとしてんのは……柚希の方じゃねェか」
「え……?」
「いつだって周りを気遣って、先を読んで。高い草むらに迷い込んでも、真っ先に飛び込んで傷だらけになりながら、誰かの為に道を作って前に進んでんのはお前だろ。俺はその後ろを追いかけるばかりでよ」
自らの髪に指を通してくしゃりと握りしめながら、眉間にしわを寄せる銀時の姿は、いつもの彼からは想像もつかない物だ。柚希は相槌を打つ事も忘れ、ただ銀時を見つめていた。
「そもそも隣にすら並べてもいない俺が、どうやってお前を置いて行けるってんだ」
そう言った銀時は、ためらいがちに手を伸ばして柚希の手を掴む。それは以前、柚希が松陽に『守りたいから強くなりたい』と宣言した時と同じ温もりで。
当時を思い出した柚希がそっと握り返せば、お互い成長しているものの、今も柚希の手は銀時の手を包み込める事に気付いた。
「ふふっ……久しぶりに手を繋いだけど、未だ私の方がほんの少し大きいんだね」
何だか無性に嬉しくなり、柚希の頬が緩む。剣の腕はもう敵わないけれど、この手で銀時を包み込む事は出来るのだと思うと、心の靄が晴れていく気がした。
「ごめんね、シロ。心配かけちゃって」
銀時の手を強く握りながら、柚希が言う。
「シロがそんな風に思ってくれてるなんて、全然知らなかったよ。お互いがお互いを追いかけてたなんて、変な話だよねぇ」
苦笑いでため息を吐く柚希だったが、何かが吹っ切れたようにその表情は明るかった。
「私はシロに嫉妬してたんだよ。同じように修行してきたはずなのに、何で後から親父様に出会ったシロの方が強くなっちゃったんだろうって」
「お前だって十分強いじゃねーか。まともに食らったら俺でも寝込んじまうぜ」
「ううん、違うよ。そうじゃない」
首を横に振り、銀時の手を持ち上げる柚希。指を開かせ手の平を上に向けると、そこには無数のマメが出来ていた。
「手を握った時に分かったの。シロは私なんか比べ物にならないくらい、竹刀を振ってきてたんだね。これがその証拠だよ。私の手にはこんなにたくさんのマメは無いもん。天性の物もあるだろうけど、それ以上に私は努力で負けてたんだ」
銀時の手のマメをそっと撫で、微笑む柚希。思わず見惚れてしまった銀時の心臓は、ほんの少しだけリズムが速まっている。
「シロと私とでは、剣術に向き合う姿勢が違ったんだって事がよく分かったよ。でもお陰で私の選んだ道が間違ってない事にも気付けちゃった」
銀時の手を両手でしっかりと包み込んだ柚希は、まっすぐに銀時を見つめた。
拳を握り締めながら苦しそうに語る銀時は、柚希を戸惑わせる。まさか自分の知らない所で銀時がこんなにも悩んでおり、しかも昨日泣いていた所を見られていたなんて思いもよらなかったから。
「大体俺を置いて行こうとしてんのは……柚希の方じゃねェか」
「え……?」
「いつだって周りを気遣って、先を読んで。高い草むらに迷い込んでも、真っ先に飛び込んで傷だらけになりながら、誰かの為に道を作って前に進んでんのはお前だろ。俺はその後ろを追いかけるばかりでよ」
自らの髪に指を通してくしゃりと握りしめながら、眉間にしわを寄せる銀時の姿は、いつもの彼からは想像もつかない物だ。柚希は相槌を打つ事も忘れ、ただ銀時を見つめていた。
「そもそも隣にすら並べてもいない俺が、どうやってお前を置いて行けるってんだ」
そう言った銀時は、ためらいがちに手を伸ばして柚希の手を掴む。それは以前、柚希が松陽に『守りたいから強くなりたい』と宣言した時と同じ温もりで。
当時を思い出した柚希がそっと握り返せば、お互い成長しているものの、今も柚希の手は銀時の手を包み込める事に気付いた。
「ふふっ……久しぶりに手を繋いだけど、未だ私の方がほんの少し大きいんだね」
何だか無性に嬉しくなり、柚希の頬が緩む。剣の腕はもう敵わないけれど、この手で銀時を包み込む事は出来るのだと思うと、心の靄が晴れていく気がした。
「ごめんね、シロ。心配かけちゃって」
銀時の手を強く握りながら、柚希が言う。
「シロがそんな風に思ってくれてるなんて、全然知らなかったよ。お互いがお互いを追いかけてたなんて、変な話だよねぇ」
苦笑いでため息を吐く柚希だったが、何かが吹っ切れたようにその表情は明るかった。
「私はシロに嫉妬してたんだよ。同じように修行してきたはずなのに、何で後から親父様に出会ったシロの方が強くなっちゃったんだろうって」
「お前だって十分強いじゃねーか。まともに食らったら俺でも寝込んじまうぜ」
「ううん、違うよ。そうじゃない」
首を横に振り、銀時の手を持ち上げる柚希。指を開かせ手の平を上に向けると、そこには無数のマメが出来ていた。
「手を握った時に分かったの。シロは私なんか比べ物にならないくらい、竹刀を振ってきてたんだね。これがその証拠だよ。私の手にはこんなにたくさんのマメは無いもん。天性の物もあるだろうけど、それ以上に私は努力で負けてたんだ」
銀時の手のマメをそっと撫で、微笑む柚希。思わず見惚れてしまった銀時の心臓は、ほんの少しだけリズムが速まっている。
「シロと私とでは、剣術に向き合う姿勢が違ったんだって事がよく分かったよ。でもお陰で私の選んだ道が間違ってない事にも気付けちゃった」
銀時の手を両手でしっかりと包み込んだ柚希は、まっすぐに銀時を見つめた。